このページの要点
- 割引を先に渡し、協力は後に来る。協力の中身と期限を書面に残さないと、相手の気が変わったときに何も残らない。
- 教材の公表禁止の条項と、SNSでの紹介の依頼は、同じ契約書の中で逆向きになりやすい。許す範囲を条項の中で示す。
- 協力が得られないときの差額は、実際の割引額を上限にし、事情のある場合を対象外にして、猶予の手順を置く。
- 投稿を依頼するなら、広告であることを示す表示を相手の義務に書く。責任を問われるのは依頼した事業者の側(景品表示法5条3号)。
結論:モニター価格は「割引」ではなく「協力との交換」。交換の中身まで書く
講座やセッションの立ち上げ期に、通常より低い価格で受講してもらい、その代わりにアンケートへの回答、感想の提供、SNSでの紹介、体験談の掲載などに協力してもらう。モニター制度は、実績がまだない時期に使いやすい方法です。ところが、この約束を申込みページの一文やメッセージのやり取りだけで済ませている例が少なくありません。割引は受講の開始と同時に実行され、協力は講座が終わってから先に来ます。先に渡したものに対して、後で受け取るはずのものが書面に残っていなければ、相手の気が変わった時点で、手元には安くした事実だけが残ります。
モニターを募集する事業者の規約や契約書には、共通して見られる問題があります。モニターの書き方は事業者ごとに違いますが、つまずく場所はほぼ同じです。①協力の義務の程度と中身が決まっていない、②教材を守る条項とSNS紹介の依頼が食い違う、③協力が得られないときの扱いがない、あるいは重すぎる、④体験談や写真の掲載の範囲・期間・撤回が決まっていない、⑤モニター価格の表示が価格の表示ルールに触れる、⑥投稿を依頼しているのに広告であることが分からない。このページは、この六つを順に整理します。
モニターには大きく二つの型があります。募集の目的がどちらなのかで、書くべき中身が変わります。
モニターの二つの型
募集の目的
改善協力型正式な販売の前に、内容を試して改善点を集める
宣伝協力型実績や声を集め、販売ページや広告に使う
受講者に求めること
改善協力型アンケート、感想、改善の提案、利用状況の共有
宣伝協力型上に加えて、SNSでの紹介、体験談の掲載、写真や氏名の使用、インタビュー
情報が外に出るか
改善協力型原則として主催者の内部で使う
宣伝協力型公開される。受講者本人が特定されうる
特に決めておくこと
改善協力型内容が改善のために変わりうること、フィードバックの使い道
宣伝協力型掲載の範囲・期間・撤回、投稿の表示、教材の公表禁止との関係
価格の表示
改善協力型モニター期の価格を単一の価格として示すのが基本
宣伝協力型通常価格との併記は二重価格表示にならないかを先に確認する
実際には二つが混ざる募集が多くあります。混ざっているときは、どの協力がどちらの型に属するのかを条文の中で分けておきます。
どちらの型でも共通するのは、モニター価格の交換相手である協力の中身を、契約書面か同意書に書くことです。以下、書き方の例とあわせて説明します。受講契約書全体の組み立ては必要な書類の組合せ、一般条項は規約の条項Q&Aで扱っています。
協力の義務は「努める」か「する」か、何を、いつまでにするかを決める
モニター条項の出来を左右するのは、受講者の協力が義務なのか、努力目標なのかの書き分けです。よくある書き方は二つに分けられます。一つは、モニターが「善意をもって協力するよう努める」とだけ書かれ、実際に何をするのかが示されていないもの。もう一つは、感想やSNSへの掲載の同意だけが書かれ、実際には広告や販売ページで使う写真、動画、音声、アンケート内容、チャット内容、画面の記録などの利用が想定されているものです。前者では、主催者が得たいものが何も確保されません。後者では、どの媒体で使うのか、加工や編集をしてよいのか、利用期間に制限を設けるのか、掲載をやめたいという希望があったときにどうするのかが空いたままで、肖像やプライバシーの問題を招きます。
これは、協力の内容を種類ごとに分け、種類ごとに義務の強さを変える形に整えます。内部の改善に使うアンケートや感想は、期限を示して「回答する」義務にします。公開を伴う協力は、募集の段階で受講者が内容を理解して選べるようにし、氏名・顔写真・動画・音声・SNSのアカウント・具体的な相談内容を出す場合は、そのつど個別に同意を取る形にします。
条文例モニター協力の条(書き方の一例)
- 受講者は、本講座がモニター価格による特別条件で提供されるものであることを理解し、次の各号の協力を行う。(1)講座の終了後14日以内に、主催者が示す質問票に回答すること。(2)主催者が指定した方法により、受講した感想を提供すること。(3)主催者が求めたときは、15分以内のオンラインの聞き取りに応じること(1回に限る。)。
- 前項の協力は、モニター価格で受講できる条件の一部である。ただし、受講者の人格権その他法令により保護される権利を制限するものではない。
- 主催者は、受講者から提供された感想その他の情報を、個人が識別されないよう加工したうえで、講座の改善、新しい講座の企画、教材の開発及び主催者が運営する販売ページ、SNSその他の媒体への掲載に利用できる。
- 受講者の氏名、顔写真、動画、音声、SNSのアカウント、具体的な相談内容その他受講者を識別できる情報を掲載する場合には、主催者は、掲載する媒体、内容、期間を示して、事前に受講者本人の個別の同意を得る。同意しないことによって、受講者に不利益を与えない。
- 病気、家族の事情その他やむを得ない事情により受講者が第1項の協力をできないときは、受講者はその旨を主催者に連絡する。主催者は、協力の方法又は期限の変更について、受講者と協議する。
第3項の「加工したうえで」と第4項の「個別の同意」を分けているのは、匿名化した感想の利用と、本人が分かる形での掲載とでは、受講者にとっての意味が違うためです。第5項は、協力できなかった事情を主催者が把握する入口として置きます。
ヒヤリングの問いと理由 協力の中身を決める
受講者に求める協力は、アンケートだけですか。SNSでの紹介や体験談の掲載、インタビューまで含みますか。
公開を伴う協力は、受講者にとっての負担が大きく、本人が特定される可能性もあります。募集の時点で含めるかどうかを決めておきます。
協力の期限はいつですか。講座の終了後の何日以内ですか。
期限がないと、協力がされなかったかどうかを判断する時点が決まらず、後の差額精算の話もできません。
協力を求める回数や分量に上限を置きますか。
「求めに応じて随時」とすると、際限のない協力を約束させる条項になり、受講者の側から重すぎると主張されます。
協力した内容を、主催者はどこまで自由に使えるようにしたいですか。
内部の改善に使うのか、広告にも使うのかで、条文も、個人情報の利用目的の書き方も変わります。
教材の公表禁止と、SNSでの紹介の依頼が食い違わないようにする
講座の契約書には、教材や講義の内容を守る条項が入ることが多くなります。録画・録音・撮影・スクリーンショット・複製・SNSへの掲載の禁止です。モニターに「SNSで講座の様子を紹介してください」と頼むと、同じ契約書の中で、公表を禁じる条項と公表を頼む条項が逆向きに並びます。受講者が投稿したとき、それは禁止行為なのか、協力なのかが書面から読み取れません。
この食い違いは、モニター用の条項を後から足したときに起きやすい不具合です。たとえば、基本の禁止条項が全受講者を対象に広く書かれたまま、モニターの項に「SNSでの紹介に協力する」と追加されている書類があります。禁止する範囲と、モニターにだけ許す範囲は、最初から一緒に設計しておく必要があります。
書き方の例(一般的な例) 教材の公表禁止とSNS紹介の依頼を整合させた例
禁止条項の範囲
禁止と許可が同じ書面の中で、どちらが優先するのかを読み取れる形にします。
掲載できない内容
公開してよいものの線を、受講者の側から見て分かるように引きます。
画面の共有
全面禁止を維持しつつ、投稿に必要な最小限の例外だけを設けます。
教材の保護そのものの設計(権利の帰属、利用の禁止、受講生が同じ講座を始めるのを止められるか)は、教材・ノウハウの保護で説明しています。受講生の感想を宣伝に使うときの一般的な注意も、そのページに書きました。モニターの契約では、そこで書いた原則の例外を、どの範囲で、誰に、いつまで許すのかを決めることが課題になります。
協力が得られないとき、通常価格に戻せるか
モニター契約でもっとも決めている例が少ないのが、協力を約束どおりに受けられなかったときの扱いです。投稿をしない、聞き取りを断る、途中で連絡が取れなくなる。そのとき「割引の前提が崩れたので、通常価格との差額を支払ってほしい」と言えるのかどうか。契約に書いていなければ、請求の根拠がありません。逆に、書き方を誤ると、条項そのものが効かないだけでなく、契約全体への信頼を損ないます。
相手が消費者の場合、差額の請求を定める条項は、法律による制限を受けます。解除に伴う違約金や損害賠償額の予定は、事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分が無効になります(消費者契約法9条1項1号)。この規定は「解除に伴う」場合に限られます。解除を伴わず、協力義務に違反したことを理由に金銭の負担を課す条項は、民法の賠償額の予定(民法420条)の枠組みと、公序良俗(民法90条)、消費者契約法10条の検討になります。いずれの場合も、実際の割引額を大きく超える金額を課す条項は避けるべきです。違約金の算定に「割引額に加えて得られたはずの利益」を含める定め方は、金額が抽象的で不確定なため、争いになったときに有効と認められにくくなります。割引額相当額の返還請求か、定額の違約金にとどめるのが無難です。
協力が得られないときの扱い方
仕組み
差額精算型先にモニター価格で受講してもらい、協力が得られないときに通常価格との差額を精算する
返金型先に通常価格で受け取り、協力が完了した後に、割引相当額を返金する
主催者の負担
差額精算型差額を請求する手間と、支払われないリスク
返金型返金の手間。協力が確認できるまで、受講者が高い価格を預ける形になる
受講者から見た印象
差額精算型「安くなったのに、後から請求される」と受け止められやすい
返金型「協力すれば安くなる」と受け止められやすく、条項の抵抗感が小さい
表示との関係
差額精算型モニター価格を実際の価格として表示でき、契約書面の対価欄もその額を書く
返金型表示する価格は通常価格になる。返金の条件と時期を、申込みの画面にも示す
どちらを選んでも、協力の中身と期限、対象外の事情を書く必要は同じです。運用に合わせて型を選び、条文を組みます。
差額精算型を採るときは、次の順序で条文を組みます。第一に、協力ができない事情があるとき(病気や家族の事情)は、差額の対象にしないこと。第二に、いきなり請求せず、通知して一定の猶予期間を置き、別の協力に代えることを提案する手順を書くこと。第三に、差額の上限を、実際に受けた割引の額とすること。協力の一部だけが得られなかったときは、按分する考え方もあります。第四に、差額を請求する場合は、請求の根拠となる計算を示せるようにしておくこと。消費者契約法は、事業者が解除に伴う違約金を請求するとき、消費者から説明を求められた場合に、その算定の根拠の概要を説明するよう努めなければならないとしています(同法9条2項)。
もう一つ、条文の外で気をつけたいのは、協力が得られなかったことを理由に、講座の提供そのものを止めない設計にしておくことです。受講料は支払われており、講座の提供は主催者の義務です。協力が得られないときの結果は、差額の精算にとどめ、講座の提供や返金とは切り離します。返金・中途解約の一般的な設計は、返金規定・中途解約の精算のページに書きました。
体験談・写真・氏名の掲載:範囲・期間・撤回、感想から本人が特定される場合
モニターの声を集客に使うときに決めておくことは三つです。どこにどこまで載せるか。いつまで載せ続けるか。あとから消せるか。この三つが空いたまま掲載すると、退会した受講者から掲載の取り下げを求められて困る、あるいは許可の範囲があいまいなまま使い続けて「そこまでは許可していない」と言われる、のどちらかになります。
掲載の同意書に入れる項目
- 掲載する媒体(販売ページ、SNS、広告、印刷物など)を、媒体ごとに示している
- 掲載する内容(感想の文章、氏名、イニシャル、顔写真、動画、音声、SNSのアカウント)を、項目ごとに選べる
- 顔を出したくない場合の扱い(加工又は匿名化)と、その場合でも利用できる範囲が書かれている
- 掲載する期間が決まっている(講座の期間中だけか、終了後も続けるか)
- 受講者が掲載の中止を申し出る方法と、主催者が対応する期間が書かれている
- すでに配布した印刷物など、回収や修正が著しく困難な媒体は、中止の対象外とする旨が書かれている
- 同意しないことで、受講や価格に不利益が生じないことが書かれている
モニター条項には、受講者が「顔出し不可」を選んだときは、個人が特定されないよう加工又は匿名化して利用すること、合理的な理由があるときは掲載済みの内容について中止を申し出られること、ただし配布済みの印刷物など回収や修正が著しく困難な媒体は例外とすることを置く方法があります。規約では、匿名化した感想やアンケートの利用と、氏名・顔写真・動画・音声・SNSのアカウント・具体的な相談内容など本人が識別できる情報の掲載を分け、後者は個別の同意を取る形にする方法があります。
見落としやすいのが、氏名を伏せたつもりでも、感想の内容から本人が特定されうる場合です。子どもの年齢、家族の構成、職業、住んでいる地域、悩みの具体的な経緯。こうした事情が文章に入っていると、氏名を出さなくても、知人には誰の感想か分かります。家庭や健康、お金のことが中心になる講座では、感想を掲載する前に、主催者が本人に掲載の最終案を見せて確認を取る手順を契約に書いておくと安全です。
感想の文章や写真には、書いた人や撮影した人の著作権があります。主催者がこれを広告に使うには、利用の許諾が必要で、許諾を受けた者は、その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内でしか著作物を利用できません(著作権法63条1項・2項)。また、著作者には、作品に名前を表示するかしないかを決める権利があります(同法19条1項)。匿名での掲載を望む受講者の感想に実名を付けたり、文章を主催者の都合で書き換えたりすることは、同法20条1項の同一性保持権の問題にもなりえます。掲載するときは、文章の修正(誤字の訂正まで)を主催者が行ってよいのか、行う前に本人に確認するのかを書いておきます。
最後に、個人情報の利用目的との整合です。受講の申込みで受け取る個人情報の利用目的が、連絡とサービスの提供だけになっていると、体験談の掲載は、取得したときの利用目的の範囲を超えるおそれがあります。個人情報取扱事業者は、利用目的をできる限り特定し(個人情報保護法17条1項)、本人の同意なく、その達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱ってはなりません(同法18条1項)。書面で個人情報を取得する場合は、あらかじめ利用目的を明示する必要があります(同法21条2項)。体験談を宣伝に使う予定があるなら、プライバシーポリシーの利用目的に「広告・宣伝(体験談の掲載を含む。掲載にあたっては別途同意を得る)」を加えておきます。録画や個人情報の扱い全般は録画・コミュニティ・個人情報で説明しました。
モニター価格の表示:二重価格、「今だけ」、決済サービスに出す価格とのずれ
モニター募集では、価格の見せ方も問題になります。価格の表示で問題になりやすいのは、次の三つです。
一つめは、モニター価格と通常価格を並べて表示することです。「通常価格はこちら、モニター価格はこちら」と二つの金額を並べ、割引率を強調する表示がその典型です。消費者庁は、過去の販売価格を比較の対象にするときは、最近相当期間にわたって販売されていた価格であれば不当表示のおそれはないが、それ以外の価格を使うときは、いつ、どの程度の期間販売されていた価格かを正確に表示しなければ不当表示のおそれがあるとしています。将来の販売価格を比較の対象にするときも、その価格で実際に販売する確実な予定など、表示に十分な根拠がなければ、不当表示のおそれがあるとされています。立ち上げ期で、通常価格での販売実績がなければ、比較の対象になる価格そのものが存在しません。実際のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示は、景品表示法5条2号が禁じています。モニター期の価格は単一の価格として表示し、説明を「一部の方に限定した特別価格」ではなく「立ち上げ期間中、全員に同じ価格」とする形を基本にします。
二つめは、「今だけモニター価格」「今後は値上げ予定」という案内です。値上げの時期と金額が実際に決まっていないのに「今だけ」と言えば、実際より有利であると誤認させる表示になりえます。値上げを案内するなら、実際にその時期に改定し、次の価格と切替えの時期をあわせて示します。改定前に申し込んだ人には、申込み時点の案内価格を適用すると契約書に書いておきます。値上がりの予定が実際にないのに「今決めないと値上がりして損です」と告げることは、電話勧誘販売に当たる勧誘であれば、不実告知にもなりえます(特定商取引法21条1項)。事実に基づかない急かし方は避けます。価格の表示全般は特商法表記と最終確認画面のページに詳しく書きました。
三つめは、決済サービスの審査用に登録する価格と、実際に請求する価格のずれです。モニター価格での審査を受け付けないサービスがあると、審査には通常価格を登録し、実際の請求はモニター価格にしたくなります。しかし、電話勧誘販売に当たる講座では、契約書面に役務の対価を記載する必要があり(特定商取引法19条1項・18条1項2号)、勧誘に際して対価について不実のことを告げてはなりません(同法21条1項2号)。実際に請求しない金額を契約書面の対価欄に書けば、書面の記載が事実と異なります。審査のために本来価格を表示する必要があるという事情は、これらの規律を外す理由にはなりません。実際の運用(モニター期間と改定の予定)を決済サービスに示したうえで、確認を取ることが先です。
書き方の例(一般的な例) モニター価格の書き方の整え方の例
契約書の対価
契約書だけを読んで何をいくらで契約したかが分かる形にします。
価格の併記
実績のない価格を「通常価格」として示す表示を避けます。
改定後の扱い
改定前に申し込んだ人への説明を、契約書で明らかにします。
宣伝協力の投稿を求めるなら、ステルスマーケティング規制を前提にする
割引や特典を示して「SNSで紹介してください」と依頼した投稿は、事業者の表示、つまり広告です。消費者庁は、令和5年10月1日から、ステルスマーケティングが景品表示法違反となると案内しています。規制の対象は商品・サービスを供給する事業者で、広告であることを一般消費者が判別することが困難な表示が対象です。企業がインフルエンサーなど第三者に依頼・指示した広告も含まれ、一方で、依頼を受けた第三者は規制の対象にならず、依頼した事業者の側が対象となる、とされています。法律上は、景品表示法5条3号が、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定する表示を禁じており、その指定の一つとして、事業者の表示であることを判別することが困難な表示が定められています。
つまり、モニターが良かれと思って自然な感想として書いた投稿が、「割引と引き換えに依頼された投稿」だと分からないまま公開されると、責任を問われるのは投稿したモニターではなく、依頼した主催者です。契約の中では、広告であることが分かる表示を付けることを、モニターの義務として書いておきます。
条文例宣伝協力の投稿に関する条(書き方の一例)
- 受講者が、本契約に基づく協力として、SNSその他の媒体に本講座に関する投稿を行うときは、投稿の冒頭又は一見して分かる位置に「PR」「広告」など、主催者から依頼を受けた投稿であることが分かる表示を付ける。
- 受講者は、前項の投稿において、事実に反する内容、成果を保証し又は断定する内容、他の受講者その他第三者を特定できる内容、教材の内容を掲載してはならない。
- 主催者は、受講者が投稿する前に、投稿の内容を確認し、前2項に反するときは、修正を求めることができる。受講者は、投稿の削除又は修正を求められたときは、速やかに応じる。
- 主催者は、前項の確認のため、投稿の例文及び表示の付け方の例を受講者に交付する。
「常識でやってくれるはず」では守れないため、表示の付け方の例を渡すこと、投稿前の確認の手順を持つことまで書きます。
投稿の内容が事実でなければならないことも、同じくらい大切です。実際より著しく優良であると示す表示は、景品表示法5条1号が禁じています。モニターの感想が「これを受ければ必ず稼げる」「誰でも成果が出る」といった断定を含み、それが依頼された広告として公開されれば、広告主が責任を問われます。コーチング型の講座ではコーチング型講座の開業で説明した、成果を断定しない書き方と、モニターの投稿の内容とをそろえておく必要があります。
起きがちなこと
よくあるご質問
モニターに感想を書いてもらう約束は、口頭やLINEのやり取りだけで足りますか。
足りません。モニター価格は協力との交換なので、何をいつまでにするのかを書面か同意書に残します。割引を先に実行し、協力を後回しにする構造のため、口頭だけだと協力が得られなかったときに主張できる根拠がなくなります。協力の種類ごとに義務の強さを分け、公開を伴う協力は募集の段階で内容を示します。
モニター価格と通常価格を並べて書いてもよいですか。
通常価格での販売実績がなければ、比較の対象になる価格がなく、実際のものより著しく有利であると誤認させる表示になるおそれがあります(景品表示法5条2号)。モニター期の価格は単一の価格として表示するのが基本です。将来の改定を案内するなら、時期と金額を決め、実際にその価格で販売する確実な予定がある場合に限ります。
モニターが約束の投稿をしてくれないとき、通常価格との差額を請求できますか。
契約に定めがなければ根拠がありません。定めるときは、協力の中身と期限を特定し、やむを得ない事情があるときは対象外とし、いきなり請求せず猶予や代替の協力を提案する手順を置き、差額の上限を実際の割引額とします。解除に伴う違約金は消費者契約法9条1項1号の平均的な損害の額を超える部分が無効になり、解除を伴わない場合も同法10条や民法90条の検討が必要です。
モニターの体験談に、本名や顔写真を出してもらうには何が必要ですか。
氏名・顔写真・動画・音声・SNSのアカウント・具体的な相談内容など、本人が識別できる情報は、掲載する媒体、内容、期間を示して、そのつど個別の同意を取ります。同意しないことで不利益を与えないこと、掲載の中止を申し出る方法も書きます。プライバシーポリシーの利用目的に、広告・宣伝を加えておくことも必要です(個人情報保護法17条・18条・21条)。
モニターに投稿してもらうとき、「PR」の表示は必要ですか。
必要と考えて契約に書いておくのが安全です。割引などを示して依頼した投稿は事業者の広告に当たり、広告であることが判別できない表示は、令和5年10月1日から景品表示法違反となります。依頼を受けた投稿者ではなく、依頼した事業者が規制の対象です。表示を付ける義務、表示の例、投稿前の確認の手順を契約に書きます。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。裁判例は、判決日と要旨とともに紹介しています。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 個人情報保護委員会 / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)