健康・ダイエット・美容系オンライン講座の受講規約

体調、効果、物販との関係、教材の四つを、条文より先に実態に合わせて決めます。

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規約には「効果を保証しない」と書いてあるのに、募集ページでは「必ず痩せる」と言っている。規約の免責は、入口の言葉に負けます。

このページの要点

  • 体調の確認は入口と途中に分け、中断した期間の延長・解約・精算まで決める。病歴を尋ねるなら要配慮個人情報の同意が要る(個人情報保護法2条3項・20条2項)。
  • 効果の表示は景品表示法5条1号・7条2項、消費者契約法4条、健康増進法65条の問題になる。規約の免責では打ち消せない。
  • 講座と食品・サプリの販売を切り離したつもりでも、実態で見られる。紹介報酬があれば連鎖販売取引(特商法33条1項)の検討が要る。
  • 材料キットは食品表示と返品の特約、起業支援コースは教材の許諾の範囲を、コースごとに決める。

結論:体調・効果・販売の座組・教材の四つを、条文より先に実態に合わせて決める

食事、運動、睡眠、体質のケア、美容のように、受講者の体や気持ちに近いところを扱うオンライン講座では、「体調を崩した」「効果が出なかった」「思っていた内容と違う」という申出が、ほかの分野の講座より起きやすくなります。受講料を先に受け取り、サービスは数か月かけて提供するため、その間に受講者の生活も体の状態も変わるからです。規約の条文を整える前に、次の四つを決めておくと、条文の書き方はほぼ決まります。

  1. 体調の申告と中止:どの時点で何を確認し、体調が悪くなったときに誰が何をするか。
  2. 効果の表示:募集ページ、SNS、説明会で何を言い、規約の免責とどう一致させるか。
  3. 販売の座組:講座と、食品・サプリメント・器具などの販売が、誰の事業としてどうつながっているか。
  4. 教材と材料:材料キットを送る講座では表示と返品をどうするか。講師としての起業を支援するコースでは、教材をどこまで受講者の事業に使わせるか。

このページでは、健康・ダイエット・美容系の講座に固有の規約の論点を、条文に基づく一般的な整理として説明します。

医療や心理療法との線引きの一般論と資格者が講師のときの注意はコーチング・個別セッション型講座の開業で、返金の設計は返金規定・中途解約の精算で、通信販売の表示は教材販売・オンライン講座の特商法表記で扱っています。ここでは、健康・ダイエット・美容の分野に固有の論点に絞ります。

体調の申告・中止・受診:講座の「入口」と「途中」に分けて書く

体調に関する条項は、申込みの時点で確認することと、受講の途中で体調が悪くなったときの手順の二つに分けると、条の役割が明確になります。入口の条には、受講を始める前に確かめておくべき人を挙げます。入口の確認事項には、典型的な形があります。講座の内容は医療行為を目的とするものではなく、減量や体質改善の効果を保証するものではないこと、食生活や生活習慣の変更が体に与える影響には年齢・性別・体質による個人差があること、持病や妊娠で医師の治療・指導を受けている人、食物アレルギーがある人、医薬品やサプリメントを服用している人は、実践する前に医師に相談すること、の三層です。

途中の手順では、「異常や体調不良を感じたら速やかに実施を中断し、医師に相談する」という定めが一般的です。ここで差が出るのは、中断した後の扱いです。中断を受講者の義務として書くだけでは、中断した期間の受講料、提供期間、返金がどうなるのかが分からず、受講者は「続けるしかない」と受け取ります。中断・延期した期間は提供期間を延長するのか、受講者が望めば解約でき、実施済みの部分の対価だけを差し引いて返すのか、といった精算の手順までを定めておくと、体調を理由にした申出を契約違反ではなく、手順の問題として処理できます。回数や期間の数え方の考え方は、コーチング型の講座でも同じです(コーチング・個別セッション型講座の開業)。

条文例体調の確認と中断の条(条文例)

  1. 受講者は、次のいずれかに該当する場合、本講座の内容を実践する前に、医師に相談し、その指示に従うものとする。①持病がある場合、②妊娠中または授乳中の場合、③通院・服薬をしている場合、④食物アレルギーがある場合またはその可能性がある場合。
  2. 受講者は、本講座の内容を実践している間に、体調の異変を感じたときは、直ちに実践を中断し、必要に応じて医師の診察を受けるものとする。
  3. 前項により受講者が実践を中断した場合、当社は、受講者の申出により、提供期間の延長または解約のいずれかを受講者が選べるようにする。解約した場合の受講料は、提供済みの部分の対価を差し引いて精算する。
  4. 当社は、診断、治療、処方、服薬の開始・中止・変更についての助言を行わない。

第3項は、中断を契約違反として扱わず、延長か解約かを受講者が選べる形にしてあります。精算の式は、講座の構成に合わせて返金の条に定めます。

申告を求めるときは、個人情報の取得のルールにも気をつけます。病歴は、個人情報保護法で「要配慮個人情報」とされ(同法2条3項)、本人の同意を得ないで取得してはならないものの一つです(同法20条2項)。申込フォームで既往歴や通院の有無を必須項目にするのであれば、フォームの冒頭に同意の文言を置き、同意しない人にはどう対応するかを決めておく必要があります。規約に「必要があるときは医師の診断書の提出を求めることがある」と書く例もありますが、診断書は病名や病歴そのものを含むため、取得の目的と範囲を絞らなければ、同じ問題が生じます。どのような情報をどの場面で尋ねるかは、コミュニティ・録画・個人情報で説明した要配慮個人情報の扱いと同じ考え方で整理します。

看護職などの資格を持つ人が講師を務める場合は、受講者の期待が資格に引きずられやすくなります。医師法17条は「医師でなければ、医業をなしてはならない」と定め、保健師助産師看護師法31条は、看護師でない者が同法5条に規定する業(療養上の世話または診療の補助)をしてはならないとし、同法37条は、主治の医師の指示があった場合を除き、診療機械の使用や医薬品の授与・指示といった行為をしてはならないとしています。資格のある講師であっても、講座の中での助言は診療や診療の補助として行うものではない、という位置づけを、規約・販売ページ・特商法表記・申込書の複数の場所で、同じ内容で書きます。また、看護師でない者が看護師またはこれに紛らわしい名称を使うことは禁じられています(同法42条の3第3項)。肩書の表示は、資格を持つ本人の範囲にとどめます。個別の行為が医行為に当たるかどうかを、規約の側で断定する必要はありません。講座では診断・治療・処方・服薬の指示を行わない、と行わないことを列挙しておけば足ります。

効果の表示:「痩せる」「改善する」と規約の免責が食い違うとき

健康・ダイエット系の講座で最も多い食い違いは、規約の外にあります。規約には「効果を保証するものではない」と書いてあるのに、申込前の募集ページや説明会では「必ず痩せます」「これで不調がなくなります」と言っている。この場合、規約の免責は宣伝の言葉に負けます。そのうえ、言い過ぎた宣伝は、表示の規制そのものに触れます。

景品表示法5条1号は、商品または役務の品質その他の内容について、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示を禁止しています。講座の効果の表示も、役務の品質・内容の表示です。さらに、同法7条2項は、内閣総理大臣が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができると定め、事業者が資料を提出しないときは、その表示は5条1号に該当するものとみなされます。「2か月で数キロ減」といった期間と数字を入れた表示は、実績の裏付けが手元にあるかどうかが問われます。課徴金の制度もあり、5条1号・2号に当たる表示をした事業者には、対象期間の売上額の3%の課徴金納付命令が出ることがあります(同法8条1項。額が150万円未満のときなどは命じられません)。

消費者契約法の側からも、同じ場面が見られます。勧誘の際に重要事項について事実と異なることを告げれば、受講者は契約を取り消すことができます(同法4条1項1号)。将来における変動が不確実な事項について断定的判断を提供することも、取消しの原因になります(同項2号)。体型への願望につけ込む勧誘には、特別の規定もあります。社会生活上の経験が乏しいことから、容姿や体型に関する願望の実現に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、正当な理由がないのに、契約の目的となるものが願望の実現に必要だと告げた場合は、取り消すことができます(同法4条3項5号ロ)。加齢や心身の故障で判断力が著しく低下している人の健康への不安をあおる勧誘にも、同じ構造の規定があります(同項7号)。どの規定に当たるかは勧誘の実態で決まりますが、規約の免責の一文では、勧誘の場面の言葉を打ち消すことはできません。

食品やサプリメントを勧める講座では、さらに別の法律が加わります。健康増進法65条1項は、食品として販売に供する物について広告その他の表示をするときに、健康の保持増進の効果などについて著しく事実に相違する表示や著しく人を誤認させる表示をすることを禁じています。薬機法は、医薬品を「疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物」などと定義しており(同法2条1項2号)、承認を受けていない医薬品の効能・効果の広告を禁止しています(同法68条)。食品や化粧品について、病気の治療や予防を思わせる効能をうたうと、食品としての表示の問題にとどまらず、医薬品の広告規制の問題として見られるおそれがあります。化粧品などの効能・効果について虚偽または誇大な広告をすることも、薬機法66条1項で禁じられています。

表現の揺れと、問題になりやすい理由
よくある言い方問題になりやすい理由整理の方向
「必ず痩せる」「誰でも成功する」結果の断定。効果の優良誤認(景品表示法5条1号)の問題になりやすく、断定的判断の提供(消費者契約法4条1項2号)としても検討される運営している実績の範囲を示し、個人差があり成果は保証しないことを、規約と同じ程度の見やすさで示す
「○○が治る」「不調がなくなる」疾病の治療・改善を思わせる効能。医師法や薬機法の問題に発展しやすい疾病名や症状名を使わず、講座が提供する内容(食事の見直し、生活習慣を整える方法)を説明する
「飲むだけで」「食べるだけで」食品の健康保持増進効果の誇大表示(健康増進法65条1項)として見られやすい食品の働きの説明を、根拠の示せる範囲に絞る
「満足度100%」「全員が成功」裏付けとなる調査や母数が示せないと、優良誤認の表示になり得る調査の方法・時期・母数を記録し、示せない数字は使わない
ビフォーアフターの写真・体験談効果の証明のように見せると、効果の保証と受け取られる個人の感想であること、期間・条件、一般的な結果ではないことを添える

表の「整理の方向」は、表示を直すときの考え方です。個別の表示が法令に違反するかどうかの判断は、表示の全体と実績の裏付けで決まります。

規約の免責の側では、「受講中の負傷や心身の変調について、受講者は一切の請求をしない」というような定めがよく見られます。消費者契約法8条1項は、事業者の債務不履行や不法行為による損害賠償責任の全部を免除する条項を無効とし、故意または重過失による場合の責任の一部を免除する条項も無効としています。体の状態に関わる講座では、この規定が特に重要です。免責は、「当社の責めに帰すべき事由がある場合を除き、責任を負わない」と範囲を絞って全部免除を避け、賠償の上限を設けるなら、上限を定める一文そのものの中に「当社、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き」と書き込み、軽い過失の場合に限ることを明らかにします(同条3項)。別の条や別の項で留保するだけでは足りません。一般条項の書き方は受講規約・受講契約書の条項Q&Aで説明しています。

起業を支援するコースで、「成果が出なかったときは一部を返金する」という趣旨の条項を置く例もあります。たとえば、受講者が講座を誠実に実践したにもかかわらず、一定の成果に届かなかったと事業者が判断する場合に、事業者の裁量で一部を返金することがある、という書き方があります。返金するかどうか、額、時期、方法のすべてを事業者が決める形では、受講者から見れば保証と受け取れるのに、受け取れる金額が分からない条項になります。保証として打ち出すなら、条件(誠実な実践の中身、提出する資料)、返金の額の計算方法、申出の期限と手順を書き、宣伝の言葉と一致させます。任意の返金保証の書き方は、返金規定・中途解約の精算の「事業者の方針と、任意の返金保証」で説明しています。

講座と食品・サプリの販売を別の事業者に分ける座組

食品やサプリメントを売りたい、あるいは知人の商品を紹介したい。ただ、商品を売ると効果や健康被害の責任が自分に及ぶことは避けたい。そこで、「商品を売る」のではなく「その商品を使ったダイエットプログラムの作り方を教える講座」を売る形にして、商品の購入は受講者が自分の判断で別に行う、とする座組が見られます。規約にも、効果は保証しない、商品の購入は受講者の判断であり事業者が強制するものではない、推奨した商品の品質や効能の責任は事業者が負わない、と書き添えます。責任の重い物の販売を切り離し、教える部分だけを引き受けようとする発想は理解できます。しかし、この切り離しは、外から見ると崩れやすい構造です。

一般に、取引がどのような性質のものかは、規約の文言ではなく実態で見られます。見られる角度は、おおむね四つあります。第一に、誰が実質的に売っているか。講座の中で特定の商品を勧め、買う場所まで案内し、その商品を前提にプログラムが組まれているなら、勧誘と販売はひとつながりに見えます。第二に、効果や健康被害の責任は、講座と商品にきれいに分かれないこと。受講者の側からは、「教わったとおりに、勧められた物を使ったら体調を崩した」という一続きの体験です。第三に、宣伝の言葉の主体。「これで痩せる」と打ち出して人を集めたのが自分なら、その表現の責任は自分にあります。第四に、お金の流れ。商品が売れることで自分や紹介した人に利益が入る仕組みなら、「商品とは無関係の教育者」とは言いにくくなります。

講座と商品の関係の見え方

切り離しが崩れやすい座組実態に合わせて組み直した座組

商品の案内

切り離しが崩れやすい座組講座の中で特定の商品を勧め、購入先まで案内し、その商品が前提のプログラム

実態に合わせて組み直した座組商品を選ぶ基準(成分、表示の見方、合わない人)を教え、特定の商品名や購入先の案内は別の場で、関係を明示して行う

広告の責任

切り離しが崩れやすい座組集客の広告で効果を打ち出す一方、規約では「商品は別会社のもの」とする

実態に合わせて組み直した座組広告の表示は自分の責任であることを前提に、表示を実績の範囲に絞る

報酬

切り離しが崩れやすい座組商品の売上に連動する紹介料などを受け取るが、受講者には知らせない

実態に合わせて組み直した座組紹介料などを受け取る場合は、受け取ること自体を受講者に明示する

問合せ・健康被害

切り離しが崩れやすい座組商品の不具合は販売会社へ、講座の不満は自分へ、と受講者に振り分ける

実態に合わせて組み直した座組受講者からの問合せの窓口を一本にし、販売元へつなぐ手順を決めておく

表の右側は、座組の組み直しの方向を示したものです。商品の販売に関する法令上の義務は、実際の販売の主体と取引の内容によって決まります。

紹介報酬を組み込むときは、特定商取引法の別の規制が顔を出します。連鎖販売取引は、物品の再販売・受託販売・販売のあっせんをする者や、同種の役務の提供をする者などを、特定利益(その取引に参加する他の者が提供する取引料など)を収受し得ることをもって誘引し、特定負担(商品の購入、役務の対価の支払、取引料の提供)を伴う取引をさせるものをいいます(同法33条1項)。受講者が他の人に講座や商品を紹介して報酬を得る仕組みが、この定義に当たるかどうかは、報酬の出どころと、受講者に生じる負担の中身で決まります。また、講座で教えた内容を利用する業務に従事すれば収入が得られると誘って、受講料などの負担をさせる形は、業務提供誘引販売取引(同法51条)の検討が必要です。紹介制度や「稼げる」講座の判断の順序はオンライン講座の始め方と取引類型の判定で説明しています。座組の判断は、契約書の文面を直すだけではできません。商品、お金、人がどう動いているかを見て、はじめて判断できます。

ヒヤリングの問いと理由 講座と物販の座組を確かめる問い

  1. 講座の中で、特定の商品を勧めたり、購入先を案内したりしますか。

    勧誘と販売がひとつながりに見えるかどうかを判断する出発点になります。

  2. その商品の販売元と、ご自身・講座の運営者との関係は何ですか(資本、役員、紹介料、仕入れ)。

    お金の流れが、立場を語るからです。

  3. 募集ページやSNSで、効果や商品名を出して集客していますか。

    宣伝の言葉の主体が誰かを確かめるためです。

  4. 受講者が体調を崩したときの問合せは、誰が受け、販売元とどうつなぎますか。

    責任の振り分けを、受講者の側から見て一本にするためです。

  5. 受講者が他の人に講座や商品を紹介すると、何か報酬や特典がありますか。

    連鎖販売取引や業務提供誘引販売取引の検討が要るかを確かめるためです。

材料キットや食品を送る講座:表示・アレルギー・返品

料理、菓子づくり、食養生の講座では、材料や食品を郵送で届けるコースがあります。この場合、講座の役務の提供に加えて、食品という商品の引渡しが加わります。講座の受講料にキット代が含まれていても、別に代金を受け取っていても、規約と表示には、役務だけの講座にはない項目が必要です。

まず、食品の表示です。食品表示法4条1項は、内閣総理大臣が、販売の用に供する食品に関する表示の基準を内閣府令で定めるとし、その事項として、名称、アレルゲン(食物アレルギーの原因となる物質)、保存の方法、消費期限、原材料、添加物などを挙げています。同法5条は、食品関連事業者等が、食品表示基準に従った表示がされていない食品を販売してはならないと定めています。講座の教材として渡す材料が、この「販売の用に供する食品」に当たるか、どの表示が必要になるかは、食品の種類と渡し方で変わります。規約の側では、少なくとも、キットの内容(原材料とアレルゲン)を申込みの前に受講者に示し、アレルギーがある人は申込み前に確認すること、体質に合わない場合は使用を中止すること、保存方法と期限を守ることを定めます。体質に合わせた食材の選び方を教える講座では、「この食材で体調が整う」といった効能の表示に踏み込まないことも、前節の表示の規制と同じ問題です。

次に、通信販売としての表示です。通信販売で商品を販売する場合、広告には、申込みの撤回または解除に関する事項を表示しなければなりません(特定商取引法11条5号)。広告に返品の特約を表示していなければ、購入者は、商品の引渡しを受けた日から8日を経過するまで、申込みの撤回または契約の解除ができ、返送の費用は購入者の負担です(同法15条の3第1項・2項)。電子的な申込みでは、広告への表示に加えて、主務省令で定める方法でも表示している場合に特約が有効となります(同条1項ただし書)。食品は衛生上の理由で返品を受けられないのが通常ですが、その扱いが表示されていなければ、法律上の原則が適用されます。キットが受講契約の一部なのか、別に売る商品なのか、申込画面と規約の表示を合わせて整理します。

配送にまつわる定めも必要です。遅延、破損、不在による受取不能、住所の誤入力のときに、再送するか、その費用を誰が負担するか、期限切れまでの保管をどうするか、といった事柄は、講座の規約には書かれていないことが多く、問合せが集中する部分です。食品の事故(異物混入、体調不良)が起きたときの連絡窓口も、規約と申込画面の両方で示します。

講師としての起業を支援するコース:教材・テンプレートの事業利用許諾

ダイエットや美容の講座には、知識を学ぶコースに加えて、学んだ内容を使って講師として開業するコース、自分の商品やサービスを販売するコースを併設するものがあります。このとき最も争いになりやすいのは、教材やテンプレートを受講者が自分の事業にどこまで使えるかです。教材の権利と禁止行為の一般論は教材・ノウハウの保護で説明しているので、ここでは、コースごとに許諾の範囲を分ける設計に絞ります。

材料キットを送る講座の規約では、趣味として学ぶコースと、販売を目的とするコースを分ける方法があります。趣味コースで提供する教材やレシピを、販売、公開講座、SNSでの発信、業務で利用することは禁止し、販売コースを受講して事業者が指定する条件を満たした受講者に限り、事業者が明示的に許諾した場合の商用利用を認める、という二段構成です。商用利用が可能な範囲や表示義務は、別のガイドラインか契約で定める形が考えられます。コースの名前と許諾の範囲を対応させておくと、「趣味コースで学んだものを売ってよいか」という争いを避けられます。

書き方の例(一般的な例) 起業支援を組み合わせたプログラムの受講契約書(よくある書き方→整えた書き方・一般的な例)

教材の利用

出発点教材・動画・資料は、自己の学習・参考の目的でのみ利用できる。第三者への再提供・販売・共有・配布・SNS掲載は禁止。コースによる区別はない
整えた書き方起業を目的とする二つのコースの受講者に限り、事業者が別に指定して許可した教材・テンプレート・資料を、受講者自身の事業活動で使用・編集・共有できる。範囲・条件・禁止事項は、事業者が文書またはプログラム内で明示する

起業コースの受講料は、教材を事業に使えることへの対価でもあります。許諾の対象を「指定した教材」に絞り、範囲の明示の方法を定めることで、全面禁止と全面許諾の中間が書けます。

価格の表示

出発点各コースの金額を契約書に固定して書く
整えた書き方金額は申込時に選択したコースに応じて記入し、「○年○月○日まではモニター価格として適用され、以後、事業者の判断で正規料金へ改定されることがある」と注記する

モニター価格と正規料金の関係は、適用期限の日付を特定して示します。期限と正規料金の額が示されなければ、受講者はいつから何円になるのかを知ることができません(モニターの契約は講座・セッションのモニター募集契約で扱っています)。

支払遅延

出発点支払遅延が一定の日数を超えた場合、サービスの一時停止または解除、高い年率の遅延損害金
整えた書き方上記に加えて、遅延損害金は遅延日数に応じた日割計算とし、請求するかどうかは事業者の裁量とする

消費者との契約では、遅延損害金を年14.6%を超えて定めた部分は無効です(消費者契約法9条1項2号)。割合と計算方法を日割りで示すのは、請求額を受講者が計算できるようにするためです。

許諾の範囲を決めるときの要点は、次のとおりです。

起業支援コースで教材を許諾するときの確認事項

  • 許諾の対象を、教材の名前や資料の種類で特定している(「一切の教材」ではない)。
  • 利用できる範囲を、受講者自身の事業と、その顧客に対する提供に限っている。教材そのものを第三者に売る、貸す、再許諾することは認めていない。
  • 「認定」「公認」「提携」など、事業者との関係を誤解させる表示の使い方を定めている。
  • 受講者が自分の顧客に向けて行う食事や生活の指導が、診断・治療・処方に及ばないようにするための注意を、教材と一緒に伝えている。
  • 受講者が自分の商品を販売するときの表示(効果の表示、食品の表示、特商法の表記)は、受講者自身の責任であることを明記している。
  • 契約の終了後や、受講者が規約に違反したときに、許諾がどうなるかを定めている。

起業を支援するコースでは、「講座で学べば収入が得られる」という訴求が表に出やすくなります。この訴求が受講料などの負担と結びつく場合の検討は、前節の業務提供誘引販売取引の問題として、取引類型の判定で確かめます。講師を育てる講座の講師契約や認定の制度は講師・運営スタッフとの業務委託契約書と教材・ノウハウの保護で整理しています。

規約の骨格:条の並びと、そろえるべき三か所

健康・ダイエット・美容系の講座の規約は、ここまでの論点を次の並びで条に置くと、矛盾が出にくくなります。

条の並びと、各条の役割
条書くことほかの条・表示との関係
目的・サービス内容講座が提供するもの(知識、指導、教材、キット)と、提供しないもの(診断、治療、処方)販売ページ、特商法表記、申込書の説明と同じ表現にそろえる
確認事項・体調医療行為ではないこと、個人差、実践前に医師に相談する人、中断の手順返金の条の「体調による中断」と接続する
受講資格・申込み年齢、成立の時点、未成年者の同意、申込時に申告を求める事項要配慮個人情報の取得の同意(プライバシーポリシー)
料金・支払い消費税を含む総額の表示、モニター価格の期限、分割の扱い、遅延損害金申込画面と契約書面の金額を一致させる
中途解約・返金場合分けして、一か所に集約する。ほかの条に別の返金ルールを置かない体調による中断、事業者都合の終了、クーリング・オフの有無
効果の非保証・推奨商品成果を保証しないこと、推奨した商品の購入は受講者の判断であること募集ページ・SNSの表現と矛盾しないこと
免責・賠償の上限全部免除にしない範囲、軽過失に限る賠償の上限、間接損害の扱い消費者契約法8条に合わせた範囲の限定
教材・知的財産利用の禁止、録画・録音の禁止、起業コースの許諾コースごとの許諾範囲

このうち、返金は一か所に集約します。雛形をつぎはぎした規約には、解約できない旨、途中解約で一部を返金する旨、自己都合のキャンセルは一切返金しない旨の三つが同居しているものがあります。読み手からはどれが本当なのか分からず、矛盾は一般に、受講者に有利な方向で解釈されます。返金の場面を場合分けして一つの条に書き、「本条以外に返金に関する定めは置かない」と結べば、ほかの条にうっかり別のルールが残っても、返金はこの条に一本化できます。受講の開始前の撤回、受講者の都合による中途解約、事業者の都合による中止、体調による中断を、別々の行にします。

返金の定めの外側にも、そろえるべき場所が三つあります。一つ目は、募集ページとSNSの効果の表現。二つ目は、申込画面で示す金額・支払時期・提供期間・解約条件(特定商取引法12条の6)。三つ目は、プライバシーポリシーにある健康情報の取得目的と、フォームの同意文言です。ダイエット講座では、受講期間の終了後に始まる月額課金のコミュニティやサロンを案内する設計も多く見られます。この月額課金は、講座の内容の説明の中に混ぜず、金額・開始時期・解約方法を別の項目に切り出して、申込時に別に同意を取ります(サロンの規約はオンラインサロン・有料会員制コミュニティの会員規約で説明しています)。

ヒヤリングの問いと理由 健康・ダイエット系の講座で、規約の作成前に確かめる問い

  1. 講座の中で、食事、運動、サプリメント、器具のうち、何を勧めますか。特定の商品名を出しますか。

    推奨商品の条と、販売の座組の点検に直結します。

  2. 募集ページやSNSで、効果や体験談をどのように載せていますか。数字を出していますか。

    規約の免責と表示の一致を確かめ、裏付けの資料を残すためです。

  3. 申込時に、持病・妊娠・通院・アレルギー・服薬を尋ねますか。尋ねる場合はどのフォームですか。

    要配慮個人情報の取得の同意文言を置く場所を決めるためです。

  4. 講師は医療・看護・栄養などの資格を持っていますか。講座の中で、その資格を前面に出しますか。

    資格の範囲で行わないことと、肩書の表示を、複数の場所に書き分けるためです。

  5. 材料キットや食品を郵送しますか。代金は受講料に含めますか。

    食品の表示、返品の特約、配送のトラブルの定めが必要かを判断するためです。

  6. 講師としての起業や販売を支援するコースはありますか。教材をどこまで使わせたいですか。

    コースごとの許諾の範囲を決めるためです。

  7. モニター価格や先行価格はありますか。正規料金に戻す時期は決まっていますか。

    価格の表示を、期限つきで示すためです。

起きがちなこと

よくあるご質問

規約に「効果を保証しない」と書いてあれば、募集ページで「必ず痩せる」と書いても問題ありませんか。

問題になります。景品表示法5条1号は、役務の品質・内容を実際より著しく優良であると示す表示を禁止しており、同法7条2項により、裏付けとなる合理的な根拠の資料を示せなければ、その表示は優良誤認とみなされます。また、勧誘の際に事実と異なることを告げたり、断定的判断の提供に当たる説明をしたりすれば、受講者は契約を取り消すことができます(消費者契約法4条1項1号・2号)。規約の免責は、入口の言葉を打ち消せません。

持病や通院中の人は、受講を断るべきですか。

断るか受け入れるかは、講座の内容で決めます。断る場合は、受講資格の条に基準を書きます。受け入れる場合は、実践の前に医師に相談すること、体調に異変を感じたときは中断すること、中断した期間の延長・解約・精算の手順を定めます。既往歴や通院の有無をフォームで尋ねるなら、病歴は要配慮個人情報なので、取得前に本人の同意を得る文言が必要です(個人情報保護法2条3項・20条2項)。

講座と食品・サプリの販売を別の会社に分ければ、責任も分かれますか。

規約や会社を分けても、責任が分かれるとは限りません。取引の性質は、実際の流れで見られます。講座の中で特定の商品を勧め、購入先まで案内し、その商品を前提にプログラムを組み、売上が自分や紹介した人の利益になるなら、勧誘と販売はひとつながりに見えます。紹介報酬の仕組みがあれば、連鎖販売取引(特定商取引法33条1項)などの検討も必要になります。

材料キットを送る講座では、特定商取引法の返品の特約を表示する必要がありますか。

キットが商品の販売に当たる場合、通信販売の広告には申込みの撤回または解除に関する事項を表示しなければなりません(特定商取引法11条5号)。返品の特約を表示していなければ、商品を受け取った日から8日を経過するまで、購入者は返品できます(同法15条の3第1項)。食品は返品を受けられないことが多いので、その旨を広告と申込画面に表示します。食品の表示(アレルゲンなど)は、食品表示法の基準で別に定められています。

起業を支援するコースの受講者に、教材をそのまま使って自分の講座を開くことを許諾してよいですか。

許諾することはできますが、対象と範囲を絞って書きます。許諾する教材を特定し、利用できるのは受講者自身の事業と、その顧客に対する提供に限り、教材を第三者に売ることや再許諾は認めない、といった設計にします。「認定」などの表示の使い方、受講者が自分の顧客に向けて行う指導の表示の責任、契約が終わったときの扱いも決めておきます。

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本ページは一般的な情報提供です。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。裁判例は、判決日と要旨とともに紹介しています。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 個人情報保護委員会 / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)

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