このページの要点
- 18歳未満の申込みは、保護者の同意がなければ取り消せる(民法5条)。「同意があったものとみなす」と書いても取消権は消えず、同意の日時・方法・文書の版の記録が備えになる。
- 成年年齢は18歳(民法4条)。18歳・19歳と大学生は本人が契約者で、保護者は支払者。保護者に責任を負わせるなら、契約者にするか、書面で保証してもらう(民法446条2項)。
- 受験・補習のオンライン講座は、期間2か月超・5万円超なら特定継続的役務提供(学習塾・家庭教師)に当たり得る。クーリング・オフと中途解約の上限額を契約書に入れる。
- 講師との個別連絡、録画、保護者に伝える情報の範囲を決める。成年の受講生の成績を保護者に伝えるには、本人の同意が要る(個人情報保護法27条1項)。
結論:契約者・同意の記録・年齢の境目の三つを、条文より先に決める
18歳未満の人がオンライン講座を受けるとき、保護者(親権者など、未成年の子に代わって契約を結ぶ権限を持つ「法定代理人」)の同意がないまま結ばれた契約は、取り消すことができます(民法5条1項・2項)。取り消された契約は、初めから無効であったものとみなされます(同法121条)。規約に「同意があったものとみなす」と書いても、この取消しの権利は消えません。一方、成年年齢は18歳です(同法4条)。18歳・19歳の人は、保護者の同意なしに自分で契約でき、未成年者であることを理由とする取消しはできません。
見落としやすいのは、「学生」と「未成年者」が同じではないことです。大学生や専門学校生の多くはすでに成年で、高校3年生も誕生日が来れば18歳になります。受講料を保護者が払うことが多いため、「受講生が未成年者又は学生である場合は、保護者を契約当事者とする」と一括りに書く規約が目立ちますが、成年の学生の保護者に義務を負わせる根拠は、その一文だけでは足りません。
規約と申込みの流れは、次の三つを決めると組み立てが定まります。
- 契約者:申込書の名義、支払、解約や返金の申出を誰から受けるか。講座を受ける人と同じとは限りません。
- 同意の記録:18歳未満の申込みで、保護者の同意があったことを、あとから示せる形で残す方法。
- 年齢の境目:申込み時に18歳未満だった人が、契約の途中で18歳になったときに、契約者や連絡先をどう切り替えるか。
このページは、オンライン講座・オンラインスクールの受講契約に絞って説明します。契約がいつ成立するかはオンライン講座の契約はいつ成立するか、必要な書類の全体像はオンライン講座に必要な書類一式、返金と中途解約の精算は返金規定と中途解約の精算で説明しています。ここでは、受講者が未成年・学生であるときに増える論点に絞ります。
年齢の層で何が変わるか、契約者を誰にするか
受講者の年齢は契約をした日で見て、三つの層に分けます。申込み時に17歳だった人が受講の途中で18歳になっても、申込みの時点の扱いは変わりません。
| 層 | 取消しの可否 | 契約者になる人 | 保護者の位置づけ・勧誘上の注意 |
|---|---|---|---|
| 18歳未満 | 保護者の同意がなければ取り消せる(民法5条2項)。取り消せるのは、本人、法定代理人、同意をすることができる者(同法120条1項)。 | 保護者が契約者になるか、保護者の同意を得た本人。 | 保護者は契約者か、同意をする人。勧誘や説明は、本人と保護者の双方に向けて行う。 |
| 18歳・19歳 | 未成年者であることを理由とする取消しはできない(同法4条)。消費者契約法の取消しは使える。 | 本人。 | 保護者は支払者にとどまる。義務を負わせるなら別の合意が要る。経験の乏しさに乗じた勧誘は、消費者契約法4条3項5号・6号の問題になる。 |
| 20歳以上の学生 | 18歳・19歳と同じ。 | 本人。 | 同じ。保護者へ本人の情報を伝えるには、原則として本人の同意が要る。 |
契約者を誰にするか:三つの型
契約者の決め方は三つの型に分かれます。受講者の年齢と、お金を出す人が誰かで選びます。
| 型 | 内容 | 向く場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 保護者契約型 | 保護者が契約者で、受講生は講座を受ける人。支払、解約、返金の申出は保護者から受ける。 | 小学生・中学生・高校生など、18歳未満が受講生の標準形。 | 契約者ではない受講生にも、授業のルールが伝わる形にする。受講生は連絡の相手として扱う。 |
| 同意書型 | 本人が契約者で、保護者が同意書に署名する。 | 高校生が自分で選んで申し込む場合。本人に直接連絡し、意思も確かめやすい。 | 同意があっても、保護者が支払義務を負うわけではない。保護者に払ってもらうなら、支払者としての位置づけを別に書く。 |
| 支払者併記型 | 本人が契約者で、保護者は費用を負担する支払者として併記する。 | 18歳以上の高校生、大学生、専門学校生。 | 債務の弁済は第三者もできる(民法474条1項)。返金先と、保護者へ伝える情報の範囲を、契約書に書く。 |
保護者に「連帯して責任を負う」と書けば足りる、と考える規約は少なくありません。しかし、保護者が契約書に署名も同意もしていなければ、規約に書かれただけでは、保護者が受講生の債務を保証したことにはなりません。保証契約は書面でしなければ効力を生じず(民法446条2項)、電磁的記録でされたものは書面とみなされます(同条3項)。支払の責任を保護者に負ってもらうのであれば、保護者を契約者にするのが最も明確です。保証にするなら、保証する範囲(受講料の支払だけか、損害賠償も含むか)を、保護者が署名する欄の近くに書きます。
父母の双方が親権者である場合、親権は共同して行うのが原則で、監護と教育に関する日常の行為は一方が単独でできます(民法824条の2第1項・2項)。少額の月謝の講座は日常の行為として一方の親が申し込めると考えられますが、高額で期間の長い講座は、父母の意見が分かれると争いになり得ます。申込書に続柄と親権者かどうかを書く欄を置き、解約や変更の申出を父母のどちらから受けるかを、最初に決めておきます。
条文例契約者・受講生・保護者の条(保護者契約型・条文例)
- 本契約の契約者は、申込書に契約者として記載された保護者(以下「契約者」という。)とし、本講座を受講する者は、申込書に受講生として記載された者(以下「受講生」という。)とする。契約者は、受講料の支払義務を負う。
- 契約者は、申込みの時点で、自らが受講生の親権者その他の法定代理人であることを表明する。
- 本契約に関する申込み、変更、解約、返金の申出は、契約者から受ける。当社は、受講生からその申出があったときは、契約者に確認する。
- 受講料の返金は、契約者が支払に用いた方法と名義に対して行う。
- 当社は、本講座の運営に関する連絡を、契約者と受講生の双方に行うことがある。料金、契約期間、規約の変更その他契約の内容に関わる通知は、契約者に対して行う。
- 受講生が18歳に達したときは、契約者と受講生の双方の申出により、契約者を受講生本人に変更することができる。
第3項は、民法上の取消しの権利を制限するものではありません。
保護者の同意を、オンラインでどう取り、どう記録するか
対面の申込みでは、保護者が目の前で署名します。オンラインの申込みでは、画面のボタンを押した人が本人なのか保護者なのかが分かりません。「保護者の同意を得ています」のチェック欄だけでは、同意があったことを後から示すのが難しく、保護者が「知らなかった」と言ったときに、事業者が証明できない状態になります。確認の方法は、受講料の額と期間、講座の内容に応じて、強さを選びます。
| 段階 | 方法 | 向く場面 | 弱点 |
|---|---|---|---|
| 弱い | 生年月日の入力と、保護者の同意を得た旨のチェック。 | 少額の単発講座、無料体験。 | 誰が入力したかが分からない。虚偽の入力を防げない。 |
| 中 | 申込み後に、保護者のメールアドレスへ確認メールを送り、保護者が承認の操作をする。 | 月額制の講座、数万円の講座。 | メールアドレスが保護者のものかは確認できない。承認の日時と画面の記録を残す必要がある。 |
| 強い | 保護者の署名または電子署名のある同意書と、保護者名義の決済を組み合わせる。 | 期間が長い講座、高額の講座。 | 手間がかかり、離脱が増える。 |
規約に「未成年者が登録した場合、親権者等の同意があったものとみなす」と書く例も見られます。しかし、同意があったかどうかは事実の問題で、事業者が規約の中で決められることではありません。年齢を偽って申し込んだ未成年者について、民法21条は、行為能力者であることを信じさせるために「詐術」を用いたときは、行為を取り消せないとしています。ただし、詐術に当たるかは、どう偽ったか、事業者がどんな確認をしたかなど、個別の事情で判断されます。生年月日の欄に偽りの日付を入れさせただけで取消権が消える、とは考えない方が安全です。
同意は、個々の契約に対するものです。最初の講座に保護者が同意しても、受講生が後から自分で申し込んだ上位コースや追加の講座に、その同意が及ぶかどうかは、はっきりしません。更新や追加の申込みでは、保護者へ内容と金額を示して確認します。同意の記録には、次の項目を残します。
同意の記録に残す項目
- 受講生の氏名と生年月日、保護者の氏名・続柄・連絡先
- 同意の日時と方法、対象となった文書の版
- 同意の範囲(講座名、期間、総額、自動更新の有無)と、決済の名義
条文例18歳未満の受講生の申込みの条(条文例)
- 受講生が18歳に満たない場合、本契約は、契約者となる保護者が、当社所定の方法により、本規約と申込み内容に同意した時に成立する。
- 当社は、前項の同意の日時、方法、対象となった文書の版を記録し、契約が終了した後も一定の期間保存する。
- 当社は、保護者の同意がなかったことが判明したときは、契約者となるべき保護者に連絡して意思を確認し、改めて同意を得られた場合に限り、契約を継続する。同意を得られなかったときは、当社は契約を解約し、受領した受講料を返還する。
第3項は、同意が確認できないときの手順を定めたものです。
取り消されたとき、成年になったときに何が起きるか
保護者の同意のない申込みが取り消されると、契約は初めから無効になり(民法121条)、事業者は受け取った受講料を返す必要があります。受講生がすでに受けた講義は、返すことができません。この場合の受講生の返還義務は、行為の時に制限行為能力者(未成年者などのこと)であった者について、「現に利益を受けている限度」に限られます(同法121条の2第3項)。受講した講義の対価を、通常の代金として請求できる、とは限らないということです。「受講を開始した後は返金しない」という定めは、契約が有効なことを前提にしているため、取消しには及びません。
取消しと、契約上の解約の違い
根拠
取消し(民法5条2項)保護者の同意がなかったこと。
契約上の解約・中途解約契約書の解約の条項、法律の定める解除(クーリング・オフ、中途解約)。
申し出られる人
取消し(民法5条2項)本人、法定代理人、同意をすることができる者(民法120条1項)。
契約上の解約・中途解約契約書で契約者とされた人。
受講済みの部分
取消し(民法5条2項)契約は初めから無効。受講生の返還は、現に利益を受けている限度。
契約上の解約・中途解約精算の定めに従い、提供済みの部分の対価を差し引ける。
返金の範囲
取消し(民法5条2項)受領した受講料を返す方向。
契約上の解約・中途解約精算の定めによる(法令の上限の範囲内)。
期間
取消し(民法5条2項)追認をすることができる時から5年、行為の時から20年(同法126条)。
契約上の解約・中途解約契約書に定めた手続と期限。
「追認」とは、取り消せる契約を有効と確定させることです。
実務で見られる誤りは三つあります。一つ目は、同意のない申込みを「無効」と書くことです。同意のない契約は取り消すことができる、というのが民法の整理で、自動的に無効になるわけではありません。二つ目は、「成年に達するまでに取消しの意思表示がなければ、契約は有効とみなす」という定めです。取消権の期間は成年に達した時点で終わるのではなく、追認をすることができる時から5年です(民法126条)。三つ目は、「成年に達した後に利用を続けた場合は、契約を追認したものとみなす」という定めです。取り消せる契約について、追認は、取消しの原因となっていた状況が消えて、かつ取消権を有することを知った後にしなければ効力を生じません(同法124条1項)。一方、追認をすることができる時以後に債務の一部を履行したことなどは、異議をとどめなければ、追認したものとみなされることがあります(同法125条)。法律が決めている追認の要件を規約の一文で先に決めておくことは、消費者契約法10条の観点から疑問があります。
契約の途中で18歳になる受講生には、運用で対応します。18歳になった時点で、契約者が保護者のままでよいか、受講生本人に切り替えるか、案内を送ります。月額課金が続く講座では、18歳後の支払が追認とみなされる場面にもつながるため、本人の意思を確かめる機会をつくります。取消しの申出があったときの手順(受付、同意の記録の確認、返金、アクセスの停止)も決めておきます。返金の精算の設計はオンライン講座の返金規定と中途解約の精算で説明しています。
受験・補習の講座は、特定継続的役務提供に当たり得る
児童・生徒・学生向けのオンライン講座で、最も見落とされやすいのが、特定商取引法の「特定継続的役務提供」です。これは、長期にわたって継続的に提供され、高額になりやすい一定の役務について、契約書面の交付、クーリング・オフ(期間内の無条件の解除)、中途解約を定めたものです。対象は法令で7つの役務に限られ、その中に「学習塾」と「家庭教師」が入っています。学校の入学試験に備えるための学力の教授、または学校教育の補習のための学力の教授で、契約期間が2か月を超え、金額が5万円を超えるものが対象です。官公庁の公表資料には、幼稚園・小学校の入学試験の対策は含まれないこと、浪人生だけを対象とするコースは対象外で、高校生と浪人生の両方を対象とするコースは対象になることが説明されています。
オンラインで行っても、この定めの対象から外れるわけではありません。受験対策や学校の補習を内容とする1対1のオンライン授業や、動画と添削を組み合わせた受験講座は、期間と金額の要件を満たせば当たり得ます。受験や補習と関係のない習い事や趣味、プログラミングなどは、この二つの項には当たりません。語学の講座とパソコン教室の判定はオンライン講座の開設と取引類型で説明しています。当たらない場合でも、消費者契約法などの規律は別に及びます。
当たるときの中途解約には、事業者が請求できる損害賠償の額に上限があります。官公庁の公表資料によると、役務の提供を始める前に解除する場合の上限は、学習塾が1万1000円、家庭教師が2万円です。提供を始めた後に解除する場合は、すでに提供した役務の対価に、学習塾は「2万円又は1か月分の授業料に相当する額のいずれか低い額」、家庭教師は「5万円又は1か月分の授業料に相当する額のいずれか低い額」を加えた額が上限です。上限を超えて受け取っている分は返さなければなりません。
| 項目 | 学習塾の項の場合 | 家庭教師の項の場合 |
|---|---|---|
| 前提 | 6か月コース、受講料の総額は30万円(月5万円相当)。2か月分の役務を提供した時点で解約。 | 同じ。 |
| 提供済みの役務の対価 | 10万円(5万円×2か月)。 | 10万円。 |
| 加算できる額 | 2万円と5万円(1か月分)のいずれか低い額=2万円。 | 5万円と5万円(1か月分)のいずれか低い額=5万円。 |
| 請求できる上限 | 12万円。 | 15万円。 |
| 返さなければならない額 | 受領した30万円から12万円を引いた18万円以上。 | 受領した30万円から15万円を引いた15万円以上。 |
入会金や教材費などの扱いは、契約の組み立てで変わります。ここでは受講料だけの例で示しました。
オンラインの1対1授業を受講生の自宅で受ける形が、学習塾と家庭教師のどちらの項に当たるかは、事業者が役務の提供のために用意した場所かどうかなど、個別に判断する部分が残ります。判断がつかないときは、上限額が低い方の項に合わせて精算の定めを作っておくと、どちらの項に当たっても上限を超えません。クーリング・オフは、法定の契約書面を受け取った日から8日間です。書面の交付が遅れたり、記載が不十分だったりすると、この期間が進まないことがあります(契約書面とクーリング・オフの赤枠で、書面の考え方を説明しています)。
「成績が上がらなかったら返金する」という保証をつける受験講座もあります。課題の全提出、期間内の申請、手数料の控除などの条件が多すぎると、保証を見て申し込んだ保護者に誤認を生じさせるおそれがあります。保証は事業者の任意の約束で、法律上の中途解約や取消しとは別です。法律上の返金の権利を、保証の条件で狭めない書き方にします。
条文例学習塾の項に当たる講座の、中途解約の条(要旨・条文例)
- 契約者は、契約期間中、将来に向かって本契約を解除することができる。この解除は、書面又は電磁的記録により、当社に通知して行う。
- 当社が役務の提供を始める前に解除があったときは、当社が請求できる額は1万1000円を上限とする。
- 当社が役務の提供を始めた後に解除があったときは、当社が請求できる額は、提供済みの役務の対価に、2万円又は1か月分の授業料に相当する額のいずれか低い額を加えた額を上限とする。
- 当社は、前二項の上限を超えて受領した金額を、遅滞なく契約者に返還する。
家庭教師の項に当たる講座の場合は、上限額が異なります。判定は契約の実態に合わせて行います。
勧誘・表示・授業運営・個人情報:未成年が相手のときに増える運営ルール
勧誘と表示:18歳・19歳には、取消しの代わりに勧誘の規律が働く
成年年齢が18歳になったことで、18歳・19歳は、未成年者としての取消しができなくなりました。その分、事業者の勧誘のしかたを問う規定の重要性が増しています。消費者契約法4条3項5号は、社会生活上の経験が乏しい消費者が、進学、就職、結婚、生計などの重要な事項に関する願望の実現に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、合理的な根拠がないのに、契約の目的が願望の実現に必要だと告げた場合に、契約を取り消せるとしています。同条3項6号は、勧誘する人に恋愛感情を抱いている消費者に乗じて、契約しなければ関係が破綻すると告げる場合を取消しの対象にしています。この取消権は、追認できる時から1年、契約から5年で消滅します(同法7条1項)。
受験講座や進路の講座では、「この講座を受けなければ志望校に受からない」「今やらなければ就職できない」といった説明が出やすいものです。体験授業や個別相談でこうした言い方をしないこと、成績の伸びや合格者の数を、集計の方法とともに示せるようにしておくことが、入口の備えになります。成績向上や合格の実績の表示は、景品表示法の優良誤認(同法5条1号)にも関わります。無料のウェブ会議で講座を案内する形は、電話勧誘販売の問題も生じさせます(Zoom個別相談・無料セミナーと電話勧誘販売で説明しています)。
授業の運営:講師との連絡、録画、自宅という場所
未成年の受講生を相手にするオンライン授業では、講師と受講生の関係を、事業者の側で管理できる範囲に置くことが大切です。規約の禁止事項に、講師やスタッフとのSNSやメッセージアプリでの個別のやり取り、事業者を通さない授業や金銭のやり取りの持ちかけを入れる例が見られます。この禁止は、引き抜き防止だけでなく、受講生の安全の面でも意味があります。連絡手段は事業者が管理するものに限り、保護者が確認できる窓口を残します。緊急時には保護者の連絡先に電話することも、あらかじめ書いておきます。
授業の録画は、目的と保存期間、閲覧できる人を決めます。受講生の顔と声は個人情報です。受講生の側の録画やスクリーンショットは、教材の著作権と、講師や他の受講生の肖像を守るために禁止するのが通常です。自宅から受ける授業では、画面に家族や部屋の様子が映ります。背景の設定や、保護者が同席できるかを、案内に書いておきます。
責任の制限にも注意が必要です。「家庭内の環境に起因する事故には一切責任を負わない」といった免責は、軽い過失の場合まで責任をなくす内容であれば、消費者契約法8条1項により無効です。責任に上限を設けるなら、「当社、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き」と、上限を定める文の中に書きます(同条3項)。
個人情報:年齢で同意をとる相手が変わる
個人情報保護委員会のQ&Aは、何歳以下の子どもから個人情報の取得などの同意を得るときに法定代理人等の同意が必要かについて、一般的には12歳から15歳までの年齢以下の子どもについて、法定代理人等から同意を得る必要があると考えられる、と説明しています。情報の内容や事業の性質によって個別に判断する前提です。子ども本人に直接入力させるフォームでは、保護者向けの説明と同意の欄を別に設けます。契約書で個人情報を取得するときは、あらかじめ利用目的を明示する義務があります(個人情報保護法21条2項)。
保護者に伝える情報の範囲は、受講生の年齢で考え方が変わります。18歳未満の受講生について、保護者は法定代理人として情報を受け取れます。18歳以上の受講生は、情報の本人が成年です。保護者が支払者であっても、成績や出席の状況を保護者に伝えることは、本人以外の第三者への個人データの提供に当たり、原則として本人の同意が要ります(同法27条1項)。契約書に、保護者に伝える情報の範囲(出席と進捗は伝える、授業中の発言の内容や相談の内容は伝えない、など)を書き、本人の同意を取っておきます。開示の請求(同法33条)や利用停止の請求(同法35条)も、18歳以上は本人が行います。
合格体験記や授業の様子を宣伝に使うときは、媒体ごとに、本人と、18歳未満の場合は保護者の同意を取ります。「申出がなければ同意したものとみなす」は、同意の確認になりません。録画やコミュニティの扱いは講座のコミュニティ・グルコン録画・個人情報、販売ページの表示は教材販売・オンライン講座の特商法表記で説明しています。
よくある失敗と直し方、ヒヤリングで確認すること
よくある失敗と直し方
書き方の例(一般的な例) 未成年・学生向けオンライン講座の規約
同意の扱い
同意の有無は事実の問題で、みなす旨を書いても取消権は消えない(民法5条2項)。同意の記録が、あとで示せる唯一の備えになる。
保護者の連帯責任
契約当事者でも保証人でもない人に、規約の一文で義務は負わせられない。保証は書面が要る(民法446条2項)。
無効と取消し
同意のない契約は、自動的に無効になるのではなく、取り消すことができる(民法5条2項)。
成年になったとき
取消権の期間は、成年に達した時に終わらない(民法126条)。追認の要件は法律で決まっている(同法124条・125条)。
学生の一括り
学生は未成年者とは限らない。成年の学生に対して、保護者に義務を負わせる根拠は別に要る。
中途解約の上限
上限の定め方は、役務ごとに異なる。他の役務の上限を当てはめると、法令の上限を超えた特約になりかねない。
ヒヤリングで確認すること
ヒヤリングの問いと理由 未成年・学生向けオンライン講座
受講生は何歳から何歳までですか。年齢の下限は決めていますか。
契約者の型と、個人情報の同意の取り方が、年齢で変わるためです。下限を設ける場合は、規約に書きます。
受講料を払うのは誰ですか。クレジットカードや口座の名義は誰になりますか。
返金先の名義と、保護者を契約者にするか支払者として併記するかを決めるためです。
契約の途中で18歳になる受講生はいますか。高校3年生や受験生が中心ですか。
18歳に達した時点での契約者の切り替えと、確認の通知を用意するためです。
授業の内容は、受験対策や学校の補習ですか。期間と総額はいくらですか。
特定継続的役務提供(学習塾・家庭教師)に当たるかを判定するためです。
講師は何人で、授業は1対1ですか。講師との連絡手段は何ですか。
講師と受講生の個別の連絡の禁止や、保護者が確認できる窓口を決めるためです。
授業を録画しますか。誰が、いつまで見られますか。
録画の目的、保存期間、共有の範囲を、契約書と個人情報の方針に書くためです。
保護者に、出席、成績、授業の様子のうち、何を伝えたいですか。
18歳以上の受講生について、本人の同意を取る範囲を決めるためです。
体験授業や無料相談で、どんな言い方で講座を勧めますか。合格実績や返金保証を打ち出しますか。
不安をあおる勧誘にならないよう、また表示の根拠を示せる範囲に絞るためです。
父母が別居や離婚をしている受講生はいますか。窓口は父母のどちらにしますか。
親権の共同行使があるため、窓口を最初に決めるためです。
起きがちなこと
よくあるご質問
18歳の高校生が、自分のクレジットカードで申し込んだ場合、保護者の同意は必要ですか。
契約としては必要ありません。成年年齢は18歳で(民法4条)、同意を要するのは未成年者の法律行為です(同法5条1項)。18歳・19歳には、未成年者であることを理由とする取消しもありません。ただし、カードの発行や利用の条件は、カード会社が別に定めます。支払に使うカードが保護者の名義の場合は、保護者の意思が契約に表れているかが問題になり得るため、保護者のメールの承認を入れるなどの工夫が有効です。
保護者が同意して申し込んだあとで、気が変わった場合も、取り消せますか。
保護者が同意している場合、同意がないことを理由とする取消し(民法5条2項)はできません。契約の解約、法定のクーリング・オフ、特定継続的役務提供に当たる場合の中途解約など、契約書や法律が定める手続を使います。受験・補習の講座で、期間が2か月を超え金額が5万円を超えるものは、特定継続的役務提供(学習塾・家庭教師)に当たり得るため、クーリング・オフの案内と中途解約の上限額を契約書に書きます。
大学生の受講契約書に、保護者の署名欄は必要ですか。
契約者が成年の本人であれば、署名欄は義務ではありません。保護者に支払の責任を負ってもらいたいのであれば、保護者の署名は、保証をするという意思を確認するためのものとして置きます。保証契約は書面でしなければ効力を生じないため(民法446条2項)、保証する範囲を明記します。保護者が費用を払うだけであれば、支払者として併記し、返金先と情報の共有の範囲を書く形が考えられます。
年齢を偽って登録した未成年者の契約は、取り消せないのですか。
民法21条は、制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるために詐術を用いたときは、その行為を取り消せないとしています。ただし、詐術に当たるかどうかは、偽り方や事業者の確認の方法など、個別の事情で判断されます。生年月日を入力させただけで、取消権が必ず消えるとは考えない方が安全です。保護者の確認メールの承認や、保護者名義の決済を組み合わせて、年齢の確認を重ねます。
成年の受講生の成績を、費用を払う保護者に伝えてもよいですか。
本人の同意が要ります。成年の受講生の成績や出席の情報は、本人の個人データで、保護者に伝えることは第三者への提供に当たり、原則として本人の同意が必要です(個人情報保護法27条1項)。契約書や申込みの画面で、保護者に伝える範囲を具体的に示し、本人の同意を取っておきます。18歳未満の受講生については、保護者が法定代理人として情報を受け取れます。
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本ページは一般的な情報提供です。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。裁判例は、判決日と要旨とともに紹介しています。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 個人情報保護委員会 / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)