このページの要点
- カードと振込で価格を分けるなら、値引きの形にして、書類と決済サービスの設定をそろえる。決済サービスの規約も確認する。
- 振込手数料は支払う側、返金の振込手数料は返金の原因で分ける。決済手数料の上乗せは、加盟店規約で制限されていることが多い。
- 外部の決済サービスだけで申込みが完結する流れでも、申込み直前に規約を契約の内容とする旨を表示すれば、規約は契約の内容になる。
- 返金は、決済方法ごとに手段、期限、決済の停止の手順を決める。解約後の決済と二重決済は、全額返金と書いておく。
結論:決済方法は、価格・申込み・返金・規約が連動する設計項目
講座の代金をカードで受けるのか、銀行振込で受けるのか、外部の決済サービスのリンクで受けるのか。決めるのは売る側の都合ですが、その選択は、販売ページの価格表示、申込みの流れ、規約への同意の取り方、返金の方法、そして決済サービスとの契約に連鎖して影響します。一つの条文を書き換えれば済む話ではなく、決済方法を変えるたびに、書類の複数の箇所を同時に直す必要が生じます。
講座の規約・契約書・特定商取引法に基づく表記では、支払いに関する問題は、次の六つに集まります。①カード払いと振込で価格を分けたい、②決済手数料を受講者に上乗せしたい、③決済代行会社の審査に合わせて役務を切り分けたら書類と合わなくなった、④外部の決済サービスだけで申込みが完結する流れで、規約への同意と契約の成立をどう整えるか、⑤支払いが期限までにされなかったとき、あるいは契約の終了後に課金が続いたとき、⑥決済方法ごとに返金の手順が違う。このページはこの六つを、順に説明します。
なお、分割払いを自社で受ける場合の割賦販売法の論点は分割払いと割賦販売法、申込みと決済の順番による成立時点の食い違いは成立時点と書面の渡し方、決済サービスの審査用のサイトに載せる価格の問題は特商法表記と最終確認画面で扱っています。ここでは、それらと重ならない範囲に絞ります。
最初に、決済方法を変えたときに連動して直すべき箇所を、一覧にします。
| 決めること | 書く場所 | 確かめる相手や根拠 |
|---|---|---|
| 支払方法の種類と、方法ごとの価格 | 販売ページ、特商法に基づく表記、最終確認画面、受講契約書の対価の条 | 特定商取引法11条1号・2号、12条の6 |
| 手数料の負担者(振込、決済) | 表記の「商品代金以外の必要料金」、契約書の支払の条、返金の条 | 特定商取引法施行規則23条4号、民法485条 |
| 決済サービスの利用条件 | 加盟店の契約、審査に提出した資料 | 利用する決済サービスの規約(法令とは別の取り決め) |
| 申込みから決済までの順番と成立の時点 | 規約の成立の条、確認メッセージ、申込みフォーム | 民法522条、548条の2 |
| 支払期限と、期限を過ぎたときの扱い | 支払の条、解除の条 | 民法541条、消費者契約法9条1項2号 |
| 返金の手段、期限、手数料 | 返金・中途解約の条、運用の手順書 | 消費者契約法9条1項1号、10条 |
カード払いと振込で価格を分ける:値引きの形にして、表示と加盟店規約を確かめる
カードは回収の手間やカード会社への手数料がかかるので、振込の方を安くしたい。講座の価格設計では、こうした案がよく見られます。まず確かめるのは、その差が「カードに上乗せした金額」なのか、「振込に対する値引き」なのか、という建て付けです。
カード会社や決済サービスと結ぶ加盟店の契約には、一般に、カード払いの客にだけ追加の料金を求めることや、現金払いと異なる価格を設定することを制限する定めが置かれていることが多くあります。これは法律ではなく、事業者が決済サービスと結ぶ契約の問題です。ですから、法律上の可否とは別に、利用する決済サービスの規約で認められているかを、確認しておきます。違反すると、決済サービスの利用そのものを止められるおそれがあります。規約の内容はサービスごとに違い、改定もされますので、実際に利用する決済サービスの現行の規約や、窓口への問い合わせで確かめることが前提です。
カード払いと振込で価格に差がある場合、この差がカードに対する上乗せ(いわゆるサーチャージ)と受け止められると加盟店規約に抵触しうるので、「振込割引」としての建て付けと表現を整理します。また、支払方法によって販売価格を分けること自体が決済事業者の加盟店規約上問題ないかを確認し、結果によっては契約書の対価の条を調整します。
支払方法で価格に差を付ける二つの形
表示する価格
値引き型講座の価格は一つ(カードで払う場合もこの価格)。銀行振込を選ぶ人にだけ「振込の場合は値引き」と明記する
上乗せ型振込の価格を基準にし、カード払いの人にだけ手数料などを加算する
受講者から見える形
値引き型定価から振込で安くなる、という形に見える
上乗せ型カードを選ぶと余計に払う、という形に見える
加盟店規約との関係
値引き型カード払いの客に追加料金を課す形ではないので、抵触しにくい(それでも規約の確認は必要)
上乗せ型カード払いの客にだけ追加料金を求める形になり、制限に当たりやすい
書類での書き方
値引き型契約書・表記・確認画面すべてで、「値引き」であることが分かる書き方にそろえる
上乗せ型どの書類でも、追加の金額の名目と額を表示する必要がある。決済サービスの規約で認められるかを先に確認する
もう一つの選択肢は、支払方法を問わず価格を同額にして、差を付けない設計です。迷う場合は、これが書類を最も単純にそろえられます。
値引き型を選ぶときに、書類で徹底するのは「表示の一致」です。販売ページ、特商法に基づく表記、申込み直前の確認画面、受講契約書、決済サービスに登録した金額が、同じ内容でなければなりません。通信販売では、役務の対価と、その支払の時期及び方法を表示する必要があり(特定商取引法11条1号・2号)、申込みの画面でも同じ事項を表示しなければなりません(同法12条の6第1項2号)。画面の表示が事実と異なれば、申込みをした者は、誤認を理由に申込みの意思表示を取り消せます(同法15条の4第1項)。
書き方の例(一般的な例) 支払方法による価格の書き方の整え方の例
価格の表示
どちらが定価で、差が何によるのかを、受講者が一目で分かる形にします。
決済サービスの設定
書面の金額と実際の請求額がずれると、書面の記載が事実と異なります。
確認
法律の問題とは別に、契約している決済サービスのルールを確かめる手順を置きます。
なお、カード払いのうち分割払いを選べる設計にするときは、「どれを一括払いの価格とみるか」が割賦販売法の表示に影響します。この点は分割払いと割賦販売法に書いたとおり、価格を同じにするのが有力な方法です。
手数料は誰が負担するか:振込手数料、決済手数料の上乗せ、返金のときの手数料
手数料の話は三つに分かれます。受講者が代金を払うときの振込手数料、カード会社や決済サービスに事業者が払う決済手数料、そして返金するときの振込手数料や決済手数料です。
まず振込手数料です。代金を払う側の受講者が負担すると定めるのは、民法の原則に沿っています。民法485条は、弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は債務者の負担とすると定めています。受講料を払う受講者が債務者ですから、受講者の負担と書けば、原則どおりの確認になります。この定めは、契約書だけでなく、特商法に基づく表記の「商品代金以外の必要料金」にも書きます。表記には、販売価格以外に購入者が負担する金銭があるときは、その内容と額を表示する必要があるためです(特定商取引法施行規則23条4号)。
これに対し、返金のときは、返金する側の事業者が債務者になります。返金のための振込手数料を受講者の負担にするのは原則と逆の定めですから、返金の原因が受講者の側にあるときに限り、受講者の負担にとどめ、事業者の側にあるとき(講座の開始前の解約、事業者の都合による終了など)は事業者の負担にします。考え方の詳細は返金規定・中途解約の精算のページに書きました。
次に、決済手数料の上乗せです。カード払いの決済手数料として一定の割合を受講者に加算して請求したい、という希望はよくあります。この点は、「カード払いの決済手数料を受講者に上乗せして請求することは、カード会社や決済サービスの加盟店規約で禁止されていることが多い行為で、規約違反になると決済サービスを使えなくなるおそれがあるので、利用する決済サービスの規約で認められているかを確認する。一方、銀行振込の振込手数料を受講者の負担にするのは問題ない」と整理できます。手数料を価格に織り込んでしまい、価格を一つにするほうが、書類は単純になります。
最後に、返金のときの決済手数料です。カード決済では、返金しても、事業者が払った決済手数料が戻らない場合があります。受講契約書に、すでに発生した決済手数料を返金額から控除できる旨を置くときは、実際に生じた費用に限り、説明できる金額でなければなりません。消費者契約法9条1項1号は、解除に伴う損害賠償の額の予定や違約金が、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるときは、その超える部分を無効としており、実費ではない名目の手数料が控除の項目に混ざっていると、控除全体の信頼を損ないます。
条文例支払方法と手数料の条(書き方の一例)
- 受講料は、申込みの画面及び特定商取引法に基づく表記に示す額(以下「受講料」という。)とし、受講者は、次の各号の方法のいずれかにより支払う。(1)決済サービスを通じたクレジットカード払い (2)銀行振込
- 銀行振込により支払う場合の振込手数料は、受講者の負担とする。受講者が選択したカード払いの決済手数料は、当方が負担し、受講料に加算しない。
- 銀行振込により支払う受講者に対しては、前項の受講料から、申込みの画面に示す額を値引きする。
- 当方が受講者に金銭を返還する場合の振込手数料は、返還の原因が受講者の責めに帰すべき事由による場合を除き、当方の負担とする。
- 当方が決済サービスを通じて受領した受講料を返還する場合において、決済サービスの仕組み上、決済手数料が当方に返還されないときは、当方が現に負担した金額に限り、返還額から控除することができる。この場合、当方は、受講者の求めに応じて、控除する金額とその根拠を説明する。
第2項の「加算しない」と、第3項の「値引き」は、価格を一つにして差を付けない、あるいは値引きの形にする設計の確認です。第5項は、控除できる金額を「現に負担した金額」に限っています。
ヒヤリングの問いと理由 手数料に関する確認
決済手数料の上乗せや、カードと振込の価格差を考えていますか。考えているなら、利用する決済サービスの規約で認められていますか。
規約で認められていない場合、書類を整えても、決済サービスが使えなくなるおそれがあります。
返金のときに、決済手数料は戻ってきますか。戻らない場合、いくらですか。
控除を契約書に書く場合、実際に生じる費用に限る必要があります。
返金の原因ごとに、振込手数料の負担者を分けますか。
原因が事業者にある返金で、受講者に手数料を負担させる条項は避けます。
特商法に基づく表記の「商品代金以外の必要料金」の欄に、手数料の定めを書いていますか。
表記と契約書の書き方が食い違うと、どちらを信頼してよいか分からなくなります。
決済代行会社の審査と、受講契約の三層構造
決済サービスを使うと、契約は一層ではなく、三層になります。受講者と事業者の間の受講契約、事業者と決済サービス(決済代行会社)の間の加盟店の契約、受講者とカード会社の間のカード会員の契約です。法律が表示や書面、返金の規律をかけるのは、一番上の受講契約に対してです。ところが、日々の運用で事業者の行動を直接縛るのは、二番めの加盟店の契約の側であることが多く、ここに食い違いが生じます。
| 契約の当事者 | 何を決めているか | 書類で気をつけること |
|---|---|---|
| 受講者と事業者(受講契約) | 講座の内容、価格、支払方法、解約と返金 | 特商法の表示と書面、消費者契約法。販売ページ、表記、契約書の内容を一致させる |
| 事業者と決済サービス(加盟店の契約) | 取り扱える商品・役務の範囲、価格の設定、手数料、禁止事項、審査 | 審査に出した資料と、実際の講座の内容や価格が食い違わないようにする。規約の改定を確認する |
| 受講者とカード会社(会員の契約) | カードの利用、分割などの条件、支払の請求 | 契約から2か月を超えて支払う方式のカード払い(包括信用購入あっせん)では、受講者が事業者に主張できる事由をカード会社の請求に対しても主張できる場合がある(割賦販売法30条の4。支払総額が政令の定める金額に満たないものは対象外で、金額は4万円、リボルビング方式は3万8千円。同法施行令21条) |
決済代行会社の審査は、役務の期間や内容に一定の基準を置いていることがあります。決済代行会社が無期限のサポートを受け付けない場合があります。その場合は、卒業後の継続コミュニティのような無期限の要素を、請求権のない任意の特典と位置づけて、役務の本体とは分けて書く整理があります。価格についても、審査に提出する価格と実際の請求額に差があるときは、実際の運用を示したうえで決済代行会社に書面で確認することが望ましい、と整理できます。そして重要なのは、審査のために必要だという事情は、消費者に対する表示や契約書面の規律を免れる理由にはならない、という点です。
この整理から、決済サービスとの関係で確認しておく事項は、次の三つです。第一に、審査に提出した資料(役務の内容、期間、価格、返金の定め)を手元に残し、契約書・表記・販売ページと同じ内容であることを確かめる。第二に、取り扱える役務の範囲や期間の上限に収めるために役務を切り分けたときは、切り分けた内容を、規約でも表記でも同じ言葉で書く。第三に、決済サービスの規約は改定されるため、改定の通知を受けたときに、契約書や表記の記載が影響を受けないかを確かめる。いずれも、法律の条文ではなく、事業者が結んだ契約を守るための運用です。
外部の決済サービス経由で申し込むとき:規約への同意、成立、支払期限の徒過
サイトの申込みボタンを押すと、外部の決済サービスの画面に移り、そこで支払いを完了して申込みが終わる。あるいは、公式LINEで確認メッセージを送り、受講者が「申し込みます」と返信したあとに、決済のリンクを送る。こうした流れの講座は多くあります。決済サービスだけで申込みを受ける講座では、次の三つが論点になります。
一つめは、サイトの決済ボタンからだけ申し込む人にも、規約への同意を取れるかです。取れます。民法548条の2第1項は、定型取引を行うことの合意をした者は、定型約款を準備した者があらかじめその約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたときは、個別の条項についても合意をしたものとみなす、と定めています(同項2号)。申込みの直前に、規約を契約の内容とすることを表示しておけば、受講者が条項を一つずつ読んでいなくても、規約は契約の内容になります。これに加えて、確認欄の「利用規約」「特定商取引法に基づく表記」の文字から、それぞれのページへリンクを貼り、決済ボタンの上に「同意します」のチェック欄を設ける形が勧められます。同意したことがより明確になるためです。
二つめは、申込みの直前の画面に何を表示するかです。決済ボタンのある画面は、特定申込みを受ける画面に当たりえます。特定商取引法12条の6は、その画面に、役務の分量と、対価、支払の時期及び方法、提供時期、申込みの期間、申込みの撤回又は解除に関する事項を表示することを求めています。決済サービスの画面は、事業者が自由に作り込めないことがあるため、決済サービスに移る前の確認欄に、これらを載せる設計にします。月額で自動更新する講座では、契約期間、更新の方法、解約の方法と期限も、この確認欄に載せます。
外部の決済サービスで完結する申込みの流れ(契約は決済の完了で成立)
- 確認欄プランごとの分量、料金、支払時期、提供時期、解約と返金、規約へのリンクを表示する
- 同意「利用規約に同意します」のチェック。申込み内容を確認したことを示す
- 決済決済ボタンから決済サービスの画面へ進み、支払いを完了する
- 成立と連絡決済の完了で成立。完了の日から数えて、一定の営業日以内に連絡する
公式LINEから入る流れでは、確認メッセージ、受講者の返信(「申し込みます」)、決済リンクの送付、決済の完了、の順に進み、成立の時点はサイトからの流れと同じ、決済の完了にそろえます。
三つめは、契約が決済の完了で成立する設計にした場合の、決済の後の扱いです。前払いで代金を受け取る通信販売では、申込みを受けて代金を受領したあと、遅滞なく役務を提供するのでなければ、申込みを承諾する旨などを書面で通知する必要があります(特定商取引法13条1項)。決済の完了後、遅滞なく役務の提供を始める運用にそろえ、それが難しい場合に備えて、通知の項目(承諾の旨、事業者の氏名・住所・電話番号、受け取った金額と日付、申込みの内容、役務の提供時期。特定商取引法施行規則37条)を用意しておきます。
支払いがされなかった場合や、期限を過ぎた場合の定めも必要です。契約が成立したあとに支払いがされないときは、相当の期間を定めて催告し、それでも履行がなければ解除できます(民法541条)。月額の決済ができなかったときは、7日以上の期間を定めて支払いを求め、その間はサービスを続け、支払いがないまま解除した場合は、その月の料金は請求しない、と定める例があります。停止している間に次の更新日が来たときは、更新せずに終了します。遅延損害金を定めるなら、年14.6%を超える部分は無効になります(消費者契約法9条1項2号)。
最後に、課金が止まるタイミングと規約の扱いをそろえることです。月額で自動更新する講座では、受講者が解約を申し出る締切(たとえば次回の決済日の前日の23時59分)と、決済サービス側で定期支払いを止めることが可能な時点とが食い違うと、争いになります。締切を過ぎていても次回の決済の前に受講者が決済サービス上で定期支払いを止めた場合は更新しない扱いとし、事業者が停止の手続を遅らせて決済されてしまったときは全額を返金する形にする方法があります。契約が終了した後に決済されてしまった場合や、同じ期間の料金が二重に決済された場合も、返金する旨を、規約に書きます。
決済方法ごとの返金:手段・期限・計算
返金の条項は、「いくら返すか」の計算と、「どうやって、いつまでに返すか」の手順の、二層で組みます。計算の考え方は返金のページに譲り、ここでは決済方法ごとの手順を整理します。カード会社から売上の取消しや照会が来たときの備えは、チャージバック・不正利用の対応と規約の記事で詳しく説明しています。
| 決済方法 | 返金の手段 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 銀行振込 | 受講者が指定する口座への振込 | 口座の指定方法、振込の期限(解約日から何営業日以内か)、振込手数料の負担者を決める |
| カード払い(一括) | 決済サービスの取消しや返金の機能。手段と期間はサービスによって異なる | 元の決済手段で返せるか、返せない場合は振込で返すのかを決める。決済手数料が戻るかを確かめる |
| カード払い(分割など) | 決済サービス側のキャンセル処理。すでにカード会社から受講者に請求された分は、受講者とカード会社の契約による | 解約の連絡を受けたら、以後の決済を止める処理を速やかに行う。解約後もカード会社への支払義務が残る場合があることを、説明に書く |
| 外部の決済サービスの定期課金 | 定期支払いの停止と、必要な分の返金 | 課金の停止を確認できる記録を残す。停止が遅れて決済されてしまった場合は全額を返金する |
決済サービスごとに返金の可否や期間は違います。ここに挙げたのは、書類で決めておくべき観点であり、各サービスの仕様を説明したものではありません。
運用の手順書には、クーリング・オフの場合は理由を聞かずに受け取ったお金の全額を速やかに返金し、8日を経過したあとの解約は、受講料に実施済みのセッション回数を掛けて全体の回数で割る形で提供済みの分を差し引き、一定の期間内に返金する、と手順に落とす方法があります。分割払いの講座では、解約の通知が届いた日を解約日として記録し、決済サービスの管理画面で以後の決済を止めたことを確認し、返還額を計算して、受講者が指定する口座へ振り込み、期限内(たとえば解約日から10営業日以内)に完了して記録する、という手順を書面にしておく例があります。手順を書いておくと、返金の遅れや、止めたつもりの決済が続いてしまう事故を防げます。
条文例返金の方法の条(書き方の一例)
- 当方は、本契約に基づき受講者に金銭を返還する場合には、受講者が指定する日本国内の金融機関の口座への振込により返還する。ただし、当方が決済サービスを通じて受講料を受領した場合で、当該決済サービスの仕組みにより元の決済手段で返還できるときは、元の決済手段で返還することができる。
- 前項の返還は、解約又は解除の通知が当方に到達した日から、10営業日以内に行う。クーリング・オフによる場合は、通知を受けた後、遅滞なく返還する。
- 受講者が分割払いを選択している場合には、当方は、解約の通知を受けたとき、速やかに以後の決済を停止する手続を行う。すでに決済サービス又はカード会社から受講者に請求された分の支払については、受講者とカード会社との契約による。
- 契約が終了した後に決済がされたとき、又は同一の期間の料金が重複して決済されたときは、当方は、その全額を返還する。
第2項は、返金の期限の数え始めを、受講者の通知が事業者に届いた日にそろえる書き方です。第4項は、運用の事故で生じた決済を受講者の負担にしない確認です。
価格・手数料・期限を、書類の間でそろえる
決済まわりの不具合の多くは、条文の書き方ではなく、書類の間の食い違いから生じます。販売ページの価格と契約書の金額が違う、確認画面に手数料の表示がない、表記の支払期限と規約の支払期限が違う、決済サービスに登録した金額と別表の金額が違う。どれも、一つひとつは小さな食い違いですが、紛争になれば、どの記載が契約の内容なのかが争点になり、事業者に不利な方が採られやすくなります。納品前に、次の項目を一つずつ照合します。
決済まわりの照合リスト
- 支払方法の種類が、販売ページ、特商法に基づく表記、確認画面、受講契約書、決済サービスの設定で一致している
- 支払方法ごとの価格が一致している。差があるときは、値引きの形で書かれ、金額が同じ書き方で示されている
- 振込手数料、決済手数料、返金のときの手数料の負担者が、表記と契約書で食い違っていない
- 支払の時期(申込み後何日以内か、毎月の何日か)が、表記と規約で一致している
- 契約が成立する時点が、規約、確認メッセージ、自動返信メール、決済完了の画面で同じに書かれている
- 決済サービスの審査に提出した役務の内容、期間、価格が、実際の講座と書類に一致している
- 解約の締切と、決済を止められる時点とがそろっている
- 契約終了後の決済、二重決済、決済の失敗があったときの扱いが書かれている
最後の二つの項目は、見落としがちです。解約の方法と期限は、申込みの撤回又は解除に関する事項(特定商取引法11条5号)として、申込み直前の確認欄にも載せる必要があります。契約期間、自動更新の有無、年間に支払う総額の目安を、あわせて載せておくと、受講者の誤解を防げます。
起きがちなこと
よくあるご質問
カード払いと銀行振込で、受講料に差を付けてもよいですか。
法律上の可否とは別に、利用する決済サービスの加盟店規約を確認します。カード払いの客にだけ追加の料金を求める形は、一般に制限されていることが多い一方、講座の価格を一つにして銀行振込の場合に値引きする形は、抵触しにくい設計です。どちらの形でも、販売ページ、表記、確認画面、契約書、決済サービスの設定で、価格と書き方をそろえます(特定商取引法11条1号・2号、12条の6)。
カード払いの決済手数料を、受講者に上乗せして請求できますか。
カード会社や決済サービスの加盟店規約で禁止されていることが多いため、利用する決済サービスの規約で認められているかを先に確認します。認められている場合でも、販売価格以外に受講者が負担する金銭があるときは、その内容と額を表記に載せます(特定商取引法施行規則23条4号)。書類を単純にするには、手数料を価格に織り込み、価格を一つにする方法があります。
返金のときの振込手数料は、受講者に負担してもらえますか。
返金の原因が受講者の側にあるときは、受講者の負担にする定めも考えられます。返金は事業者が債務者であり、費用は債務者の負担が原則です(民法485条)。事業者の事情による終了や、講座の開始前の解約まで受講者に負担させる条項は、消費者契約法10条の検討対象になるため、原因ごとに書き分けます。
サイトの決済ボタンだけで申し込む人にも、規約への同意は取れますか。
取れます。申込みの直前に、規約を契約の内容とすることを表示しておけば、個々の条項を読んでいなくても、規約は契約の内容になります(民法548条の2第1項2号)。確認欄から規約と表記にリンクを貼り、決済ボタンの上に同意のチェック欄を置くと、同意の証拠が明確になります。申込み直前の画面には、分量、対価、支払の時期と方法、提供時期、解約に関する事項も表示します(特定商取引法12条の6)。
解約したあとに決済が実行されてしまったら、どうなりますか。
契約が終了した後に決済された金額は、全額を返金する扱いを、規約にあらかじめ書いておきます。あわせて、解約の締切と決済を止められる時点をそろえ、解約の通知を受けた日を記録し、決済サービス上で以後の決済を止めた確認も記録に残します。事業者の手続が遅れたことで決済された場合は、受講者に負担させない形にするのが安全です。
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本ページは一般的な情報提供です。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。裁判例は、判決日と要旨とともに紹介しています。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 個人情報保護委員会 / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)