このページの要点
- 表示事項は特定商取引法11条と施行規則23条。提供時期は「入金確認後にご案内」ではなく期間か期限で書く。
- 住所・電話番号は、金額を全部表示し、請求があれば遅滞なく開示する旨を書けば表記から省略できる(11条ただし書、施行規則25条2項)。
- 申込み直前の画面に分量・価格・支払・提供時期・申込期間・解約条件を本文で表示する(12条の6)。
- 前払いなら入金後に承諾通知(13条、施行規則37条)。電子メールで送るには事前の承諾が要る。
結論:表記・最終確認画面・入金後の通知の三つで、通信販売の表示は完成する
販売ページから受講者が自分で申し込む講座は、特定商取引法の「通信販売」です。通信販売には法定のクーリング・オフがない代わりに、条件をはっきり見せる義務が三段階でかかります。広告に条件を表示する義務(特定商取引法11条。いわゆる特商法表記)、申込みを確定する直前の画面に条件を表示する義務(12条の6)、そして代金を前払いで受け取る場合に入金後に承諾などを通知する義務(13条)です。このうち、多くの講座で整っているのは一つ目の表記だけで、二つ目と三つ目が抜けている例が目立ちます。
また、講座は「役務」なので、物を売る通販の表記をそのまま流用すると、提供の時期や分量、解約の条件といった講座に固有の項目が欠けます。アトラス行政書士法人が講座の表記をレビューした案件では、価格が旧価格のまま残っていた、提供時期が「入金確認後にご案内」になっていた、返金の欄が規約と食い違っていた、といった指摘が繰り返し出ています。Zoomの個別相談を経る売り方の場合は、この表示に加えて契約書面が必要になる点にも注意してください(Zoom個別相談・無料セミナーと電話勧誘販売)。
表記に書く事項:講座で迷いやすい項目
表記に書く事項は、法律の11条1号から5号(価格、支払の時期と方法、提供時期、申込みの期間の定め、申込みの撤回・解除)と、施行規則23条の各号(事業者の氏名・住所・電話番号、価格以外の負担、特別の提供条件など)です。かつての施行規則8条を根拠に挙げている表記を見かけますが、現在の8条は訪問販売の書面の電子交付に関する規定で、通信販売の表示事項は23条です。講座で迷いやすい項目を並べると次のとおりです。
| 項目 | 根拠 | 事務所の書き方 |
|---|---|---|
| 受講料 | 11条1号 | 税込の総額を主として表示。一括と分割で額が違えば両方。旧価格を残さない |
| 受講料以外の負担 | 規則23条4号 | 費目だけでなく額の定め方まで書く(例:振込手数料は振込先金融機関所定の額)。カード手数料を受講者に転嫁しない旨も |
| 提供時期 | 11条3号、規則24条2号 | 期間又は期限で書く。「入金確認後にご案内」は案内の時期であって提供の時期ではない |
| 申込みの期間 | 11条4号 | 定めがあればその内容。値上げ予定や定員は、それだけでは申込み期間の定めに当たらない |
| 申込みの撤回・解除 | 11条5号、規則24条3号 | 規約・契約書の条と同じ文言で、見やすい箇所に。「返金不可」とだけ書かない |
| 特別の提供条件 | 規則23条8号 | 定員、18歳以上、本人限定、先着順、失効の条件など |
| 継続して契約が必要な場合 | 規則23条7号 | 月額制などで2回以上の契約が前提なら、その旨と金額・期間 |
電話番号は「確実に連絡が取れる番号」であることが求められます。これは条文の文言ではなく消費者庁の解釈として示されているもので、事務所の報告書では出典を区別して書いています。
海外の事業者の表記では、ドル建ての価格を「予告なく改定」とだけ書いて算定方法を示していない例や、海外の電話番号だけで国内の受講者が連絡しにくい例がありました。外国法人や外国に住所を持つ個人が国内に事務所等を持つ場合は、その所在場所と電話番号も表示します(規則23条3号)。法人の事業者がウェブで広告する場合は、代表者又は通信販売の業務の責任者の氏名も必要です(同条2号)。表記の名称欄が屋号だけになっていた案件では、事業者の正式な名称を示すよう改めました。
美容系の講座の表記のレビューでは、免税事業者には総額の表示の義務はないものの、それでも税込の額を主として表示するよう勧めました。マネー講座の表記では、一括払いの値引きの額をはっきり示し、「適用される価格は申込み時点の案内価格」と注記し、受講者が負担する範囲(合宿の交通費など)と取消料を知らせる時期を「特別の条件」の欄に書いています。個別コーチングでは、修了後のコミュニティを「受講料の対価に含まれない無料の特典」と、表記・販売ページ・決済代行への提出資料で同じ文言にし、表記へのリンクを販売ページと決済のページの両方に置きました。表記は単独の書類ではなく、他の表示と同じ内容であって初めて役目を果たします。
住所・電話番号を載せたくないとき:請求があれば遅滞なく開示する方式
自宅で講座を運営している方から最も多い質問が、「自宅の住所や個人の電話番号を表記に載せたくない」というものです。特定商取引法11条ただし書は、広告に「請求があれば遅滞なく書面又は電磁的記録で提供する」旨を表示する場合に、表示事項の一部を省略できるとしています。どの事項を省略できるかは施行規則25条が定めており、受講料以外の負担を含めて金額を全部表示している場合には、事業者の氏名・住所・電話番号(規則23条1号)を含む事項の一部を省略できます(規則25条2項)。事務所の現在の整理は、この請求開示の方式で住所・電話番号を表記から外すことができる、というものです。
請求開示の方式を使うときの確認事項
- 金額は一部だけでなく全部を表示していること(一部だけ表示する状態は、規則25条の省略の前提を欠きます)。
- 表記に「請求があれば遅滞なく開示します」と書き、請求を受け付けるメールアドレスなどを示していること。
- 前払いの講座では、支払の時期は省略できないこと(規則25条2項ただし書)。申込みを受けた後遅滞なく提供を始めない講座では、提供時期も省略できないこと(同ただし書)。申込みの期間の定めも省略の対象外であること。
- 請求を受けたら、受講者が保存・印刷できる方法(メール本文やPDFの添付)で、実際に遅滞なく開示する体制があること。
- 開示の応答の目安(たとえば2営業日以内)を書き、運用はそれより早くすること。
- 利用する決済代行会社が、氏名の掲載などを独自に必須としていないかを確認したこと。
省略できるのは表記の上だけだ、という点が重要です。前払いの講座で入金後に送る承諾通知には、事業者の氏名・住所・電話番号を書かなければなりません(施行規則37条2号)。電話勧誘販売に当たる講座の契約書面にも、住所と電話番号が必要です(施行規則45条1号)。電話番号を載せたくないという相談を受けた案件では、①表記は請求開示、②入金確認の通知に電話番号を記載、③通知を電子メールで行うことの承諾を申込みの同意欄と規約に入れる、の三点を一組で整えました。氏名についても、旧姓だけの表示は避けて「現在の姓(旧姓:…)」とする、屋号だけの表示は避ける、といった注意が消費者庁のQ&Aに沿って必要です。海外在住の個人が講座を売る案件では、開示請求の電話の受付時間を日本時間で書き、現地時間を併記しない(夏時間の書換え漏れがそのまま表示の不備になるため)よう助言しました。
この整理は、施行規則25条2項の文言と、消費者庁の通信販売広告に関するQ&Aが、氏名・住所・電話番号について請求があれば遅滞なく開示する方式による省略を認めていることに基づいています。事業者の住所を受講者が知る手段は、プライバシーポリシーでも「求めに応じて遅滞なく回答する」形で用意できます(個人情報保護法32条1項かっこ書)。
申込み直前の最終確認画面(12条の6)
事業者が定めた様式の書面や、ウェブの手続で受講者が申し込む場合(法律は「特定申込み」と呼びます)、申込みを確定する画面に、役務の分量と、11条1号から5号の事項(価格、支払の時期と方法、提供時期、申込み期間の定め、撤回・解除)を表示しなければなりません(12条の6第1項)。これを表示しなかったり、事実と違う表示をしたりすると、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金の対象となるほか(70条2号)、受講者は誤認による申込みを取り消せます(15条の4)。講座の「分量」は、受講期間、講義の回数、個別セッションの回数と時間などで示します。
事務所の改訂例 申込みの画面と書類の名前を直した例
電子署名する書面の名前
電子署名する書面が「申込書」を名乗ると、それ自体が12条の6の特定申込みの書面になり、表示義務の管理が二重になります。
申込フォームの位置づけ
申込みの手続を一本にし、表示の場所を特定するためです。
確認画面の表示
リンク先にしか書いていない状態では、表示したとは言いにくくなります。
購入ボタン
申込みになることを誤認させる表示は禁止されています(12条の6第2項1号)。
決済代行の購入画面も、それ自体が特定申込みの画面に当たるおそれがあります。個別コーチングの案件では、決済は契約成立後に個別に送るリンクだけで行い、決済ページを誰でも買える状態に公開しない運用にしました。この運用なら、リンクの操作は支払の手続であって新しい申込みではないと整理できます。公開するなら、事前にその画面に表示を整えます。LINEやDMの自由な文面で申込みを受ける運用は、事業者が定めた様式でも画面の手続でもないため、特定申込みに当たらない可能性が高いと整理した案件もありますが、その場合も同じ6項目を載せた確認メッセージを送り、「同意します」の返信を受けてから契約書を送る運用を勧めました。
申込み期間の表示にも注意が要ります。「先行価格は○日まで」「定員になり次第終了」は、それだけでは11条4号の申込み期間の定めには当たらないと、消費者庁の申込み段階の表示に関するガイドラインに沿って整理しています。ただし、価格を期間限定にするなら、その表示は次に述べる価格表示の問題になります。
入金後の承諾通知(13条)
受講の開始より前に受講料の全部又は一部を受け取る通信販売では、入金を受けたら遅滞なく、申込みを承諾する旨又は承諾しない旨などを書面で通知しなければなりません(13条1項)。受領後遅滞なく講座の提供を始める場合は不要ですが、開講日が先に決まっている講座の多くはこの通知が必要です。記載事項は、承諾する旨又は承諾しない旨(入金前に通知済みならその旨)、事業者の氏名又は名称・住所・電話番号、受領した金額(それ以前の受領があれば合計額)、受領の年月日、役務の種類、承諾するときは提供時期です(施行規則37条)。提供時期は期間又は期限で書き、承諾しないときは受け取った金銭を直ちに返す旨と方法を書きます(施行規則38条1項)。
通知を電子メールで行うには、あらかじめ方法の種類と内容を示して、受講者の承諾を得る必要があります(13条2項、施行令8条1項)。事務所の案件では、申込みの同意欄にこの承諾の項目を一つ足す形が多くなっています。美容系の講座では、電子契約サービスの署名完了の通知は、承諾の意思表示にはなっても受領額と受領日が書けないので13条の通知にはならないとして、入金確認のメールに通知事項を一本化しました。支払期日を過ぎて申込みが失効した後に入金があった場合に、承諾に充てずに全額を返す通知の文例も用意しています。予約制の単発セッションでも、予約日が数日先なら前払いの役務として通知が要るため、予約システムの自動確認メールに通知事項を載せるよう助言しました。電話勧誘販売の講座で同じ役割を果たすのは20条の通知で、こちらは契約の成立と書面の渡し方で扱います。
価格と成果の表示:二重価格・期間限定・実績・体験談
表記の項目を満たしていても、価格や成果の見せ方で問題になることがあります。景品表示法は、実際より著しく優良と誤認させる表示(優良誤認)と、実際より著しく有利と誤認させる表示(有利誤認)を禁じています(景品表示法5条1号・2号)。通信販売の広告では、特定商取引法も、役務の内容や解除の条件などについて著しく事実に相違する表示や誤認させる表示を禁じています(特定商取引法12条)。
ご相談と回答 価格の表示について受けた相談
決済代行の審査用のサイトには「標準価格」を載せ、実際はその一部の額で募集してもよいですか。
審査用サイトの受講料が、契約書・規約・表記の金額とちょうど桁が違う形で一貫していた案件です。実際に請求しない金額を現在の受講料であるかのように表示するのは正確な表示とはいえず、二重価格の問題にもつながりかねないと回答し、サイトの額が正しいなら書類を、そうでないなら表示を直すよう求めました。審査用サイトは検索よけだけでは非公開にならないので、閲覧の制限も必要です。
「通常価格」と「モニター価格」を並べて表示したいのですが。
通常価格での販売実績がなければ、比較の対象になる価格がない二重価格表示のおそれがあります。そのため、二つの価格を並べたいという希望があっても、書類にする前に景品表示法との関係を確かめ、単一の価格で表示する形を基本にしています。説明も「一部の方に限定した価格」ではなく「立ち上げ期間中、全員に同じ価格」とします。
「超先行価格」「今だけ」と募集し、次の期も同じ表示を続けてよいですか。
期間限定の訴求をするなら、実際にその時期に価格を改定する必要があります。改定しないまま同じ訴求を続けると有利誤認のおそれがあります。次の価格と切替えの時期を併せて示し、改定前に申し込んだ人には申込み時点の案内価格を適用する、と契約書に書いておきます。
成果の表示では、販売ページや個別相談の資料と、規約の「成果を保証しない」条項が食い違う例が多く見られます。セミナー資料に「1年で一定のフォロワー数に届かなければ達成までサポートを続ける」と書いていた講座では、保証の内容を「無償でのサポートの継続(金銭の返金ではない)」に限定し、受講生の行動条件(投稿の回数、質問の頻度、参加の要件)を号で明記して契約書に取り込みました。訴求と契約を一致させることで、成果を約束したと受け取られる余地を減らしています。実績に触れる発言には「私自身の実績であり、受講によって同様の結果が得られることを示すものではありません」と必ず添える、という発言ガイドラインを作った例もあります。
受講生の声や体験談を載せるときは、掲載に同意を得た記録を残し、個人の感想で効果を保証しないことを示し、特典や報酬と引き換えの声なら広告であることを分かるように表示します(令和5年10月施行のいわゆるステルスマーケティングの告示)。受講生の売上を載せるなら算定期間と自己申告かどうかを示す、実名や顔の掲載は都度同意を取る、といった運用は、受講規約の広告利用の条と合わせて設計します(教材・ノウハウの保護と受講生の作品の扱い)。
LINE配信・メール広告・期ごとに変わる条件
承諾を得ていない相手への電子メール広告は禁止されており(12条の3)、その対象となる送信の方法は、施行規則27条で電子メールとSMS(電話番号を使った送信)と定められています。事務所の付属資料では、公式LINEの配信と、メール・SMSでの広告を書き分け、メール・SMSで送るなら、チェック済みにしない同意欄でのオプトイン、承諾の記録の保存、配信停止の連絡先の表示を整えるよう案内しました。LINEの配信であっても、価格や申込条件に触れるものは11条の広告に当たるため、表記のURLと開催概要のページのURLを併記させています。
開催期ごとに日程や価格が変わる講座では、規約・表記・プライバシーポリシーには期ごとの日付を書かず、日付は販売ページ・申込ページ・最終確認画面の「開催概要」と契約書の記入欄だけで管理する設計にしました。表記には「各開催期の販売ページ及び申込ページに表示」と書くので、販売ページの側に具体的な日付の表示が欠かせません。受付を終えた期の日付を、申し込めるかのように表示し続けないことも運用の注意に入れています。価格を随時変えたい引き寄せ系の講座では、受講料を「申込み時点のフォームの受講料欄に表示された額」と定め、表記も同じ方式にし、価格を変えたときは画面のスクリーンショットを保存する運用にしました。書類全体のそろえ方はオンライン講座に必要な書類一式をご覧ください。
起きがちなこと
よくあるご質問
自宅の住所や電話番号を特商法表記に載せたくないのですが、方法はありますか。
表記に「請求があれば遅滞なく開示する」旨を書き、金額を全部表示している場合には、住所・電話番号を表記から省略できます(特定商取引法11条ただし書、施行規則25条2項)。ただし、前払いの講座の承諾通知や、電話勧誘販売の契約書面には住所・電話番号を書く必要があります。
申込み直前の確認画面には何を表示すればよいですか。
役務の分量(受講期間、講義・セッションの回数など)、受講料、支払の時期と方法、提供時期、申込み期間の定めの有無、申込みの撤回・解除に関する事項です(特定商取引法12条の6)。リンク先に任せず、画面の本文で示すのが基本です。
LINEやDMで申込みを受ける場合も、最終確認画面の表示が必要ですか。
自由な文面のメッセージで申込みを受ける運用は、法律の「特定申込み」に当たらない可能性が高いと考えられます。それでも、後から「聞いていない」と言われないよう、同じ項目を載せた確認メッセージを送り、「同意します」の返信を受けてから契約書や振込先を送る運用をおすすめします。
入金を確認したあと、受講者に送るメールに書くべきことはありますか。
前払いの通信販売では、承諾する旨、事業者の氏名・住所・電話番号、受領した金額と受領日、役務の種類、提供時期を記載した通知が必要です(特定商取引法13条、施行規則37条)。メールで送るには、事前に受講者の承諾を得ておきます。
「今だけ価格」「モニター価格」はどう表示すればよいですか。
期間限定をうたうなら、実際にその時期に価格を改定します。通常価格での販売実績がないのに通常価格と並べて表示すると、二重価格表示として有利誤認のおそれがあります。単一の受講料で表示し、改定の予定は確実なものだけを時期と条件付きで示すのが安全です。
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本ページは一般的な情報提供です。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきたオンライン講座の受講規約・受講契約書、電話勧誘販売の契約書面・申込書面、特定商取引法に基づく表記、プライバシーポリシー、分割払いの合意書、講師・運営スタッフの業務委託契約書、講座の構築・運用の受託契約などを、個別の事業者や講座が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月16日)。裁判例は、事務所の報告書・回答書で検討したものを、判決日と要旨とともに紹介しています。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 個人情報保護委員会 / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)