このページの要点
- 割賦販売は、指定役務の対価を2か月以上・3回以上に分けて受け取ること(割賦販売法2条1項1号、施行令別表第一の三第11号)。
- 決済サービスで毎月決済・毎月入金する形は、事業者自身の割賦販売に当たる可能性が高い。
- 解除や一括請求の前に、20日以上の期間を定めた書面での催告が必要(5条)。メールやLINEでは足りない。
- 解除時の上限(6条1項)に解約手数料の上乗せ枠はなく、遅延損害金は法定利率が上限(6条2項)。
結論:自社で「2か月以上・3回以上」に分けて受け取ると、多くの講座が割賦販売法の対象になり得る
高額のオンライン講座では、「一括では払えないので分割にしてほしい」という希望が必ず出ます。カード会社の分割払いで払ってもらうなら、事業者は代金を一括で受け取るので大きな問題はありません。問題になるのは、事業者が自分で代金を分けて受け取る場合です。割賦販売法は、指定された役務の対価を「2月以上の期間にわたり、かつ、3回以上に分割して受領すること」を条件として提供することを「割賦販売」と定めています(割賦販売法2条1項1号)。割賦販売に当たると、取引条件の表示(3条)、契約の内容を明らかにする書面の交付(4条)、解除や一括請求の前の書面での催告(5条)、解除されたときの請求額の上限(6条)といった規律がかかります。
見落とされやすいのは、「特定継続的役務提供に当たらない講座だから、分割にしても関係ない」という考え方です。特定商取引法の特定継続的役務の7業種と、割賦販売法の指定役務は、別のリストです。アトラス行政書士法人では、幼児教室の主催者への返信で、ここが「落とし穴」だと説明しました。講座の売り方全体の判定はオンライン講座の始め方と取引類型で、返金の設計は返金規定・中途解約の精算で説明しています。
指定役務「技芸又は知識の教授」は広い
割賦販売法の指定役務は、施行令の別表第一の三に列挙されています(割賦販売法施行令1条3項)。そこには、語学の教授(5号)、入学試験や学校教育の補習のための学力の教授(6号・7号)、パソコンやワープロの操作に関する知識又は技術の教授(8号)と並んで、第11号に「技芸又は知識の教授(第五号から第八号までに掲げるものを除く。)」という包括的な項目があります。特定継続的役務の7業種には、このような包括的な項目はありません。そのため、音楽、料理、スポーツの実技、ビジネススキル、SNS運用、マネー、コーチングの知識など、特定継続的役務に当たらない一般的な講座も、自社で2か月以上・3回以上に分けて受け取れば、割賦販売に当たり得ます。
音楽理論の講座の依頼者からは、「技芸とは伝統的なお稽古事に限られるのではないか」という反論を受けました。事務所の回答書では、その限定的な読み方を採らない理由を三つ挙げています。①「技芸」と「知識」が並べて書かれており、「知識の教授」は知的な活動一般を指す普通の言葉であること。②5号から8号だけを除く書き方は、広く網をかける規定の作り方であること。③業種で線を引く公式の通達やQ&Aが見当たらないこと。「同業他社も書面を出していない」という反論には、単純に違反しているか、回数や期間の要件を満たさない、決済の仕組みが違うなど別の事情があるかのどちらかで、自社が適法である根拠にはならない、と回答しました。4条の書面を交付しないことは、50万円以下の罰金の対象です(53条3号)。
支払方法ごとの整理
同じ「分割払い」でも、誰が代金を立て替えるかで扱いが変わります。事務所の資料での整理は次のとおりです。
| 支払方法 | 事務所の整理 | 事業者が気をつけること |
|---|---|---|
| カード会社の分割払い・リボ払い(事業者には一括で入金) | 包括信用購入あっせん。割賦販売法の義務の中心はカード会社の側 | 受講者はカード会社に対して事業者への抗弁を主張し得る(支払総額4万円以上、リボは3万8千円以上。法30条の4・30条の5、施行令21条)。カード会社から問合せを受けることがある |
| 決済サービスでの毎月の分割決済(事業者に毎月入金) | 立て替える会社がいないので、事業者自身の割賦販売に当たる可能性が高い | 2か月以上・3回以上なら4条の書面などが必要 |
| 自社での2回払い | 3回以上ではないので割賦販売に当たらない | 遅延損害金や催告は、他の法律の上限に従う |
| 自社での3回払いを2か月未満で完了 | 2回目を初回から30日以内、3回目を55日以内とし、期間の要件を外す設計 | 期日を延ばすと2か月以上と評価されるおそれ。「毎月1回の3回払い」は当たり得る |
| 自社での2〜6回払い | 割賦販売に当たる前提で、分割の条件を書いた合意書を別に作成 | 住所の取得、書面での催告、上限の計算まで設計する |
決済サービスを通じたカード分割で手数料を受講者に上乗せする方式は、自社の割賦販売の懸念は小さくなりますが、カード手数料の受講者への転嫁が決済サービスの規約に反するおそれがあります。
個別コーチングの案件では、事業者に直接払う分割は2回までとし、3回以上はカード会社の分割を使ってもらう設計にしました。期ごとに募集するSNS集客講座でも、自社の分割は2回まで、又は2か月未満にとどめ、それ以上はカード分割にするよう勧めています。幼児教室では、決済サービスの毎月決済をカード会社の分割に一本化するか、2回払いまでに限るかを提案しました。いずれも、割賦販売法の手続を負わないで済む範囲に支払方法を収める考え方です。
割賦販売に当たる場合に必要な書面と表示
それでも自社で3回以上の分割を受けたいという依頼者もいます。インスタ運用講座では、カードの限度額などで一括払いが難しく、事業者が認めた人だけが使える「当社分割」(決済サービス経由で2〜6回)として、受講契約書とは別に分割の合意書を作りました。割賦販売法4条1項の書面には、役務の割賦提供価格、各回の支払額(賦払金の額)、支払の時期と方法、役務の提供時期、契約の解除に関する事項、所有権の移転に関する定め(講座では該当なし)、その他の省令事項を書きます。
条文例当社分割の利用に関する合意書の構成(要旨)
- 第1条(定義と位置づけ)当社分割は、決済サービスを通じて受講料を2回から6回に分けて支払う方法をいい、本合意書は受講契約書の付属書面とする。書類の優先順位は、受講契約書、本合意書、規約・受講案内の順とする。
- 第2条(支払回数と支払日)受講者は別表から回数を選ぶ。2回目以降の支払日は初回の応当日(応当日がない月は末日)とする。一括で支払う場合の価格(現金提供価格)と分割の手数料との関係を示す。
- 第3条(記載事項)事業者の名称・住所・電話番号、契約年月日、役務の種類と期間、支払総額・初回と各回の額・回数・時期・方法、相談窓口、期限の利益の喪失と解除の要件、解除時の請求の上限、遅延損害金(法定利率)を定める。
- 第4条(催告の宛先)催告は本合意書に記載した住所に宛てて行う。住所の変更はメール又はLINEで届け出る。
別表には回数ごとの支払総額・各回の額・支払期間・実質年率と選択欄を置き、署名欄では住所を必須にしました。
この案件では、受講契約書、合意書、受講案内の三つを合わせて4条の書面とし、受講案内に、承諾と受領の旨、事業者の名称・住所・電話番号、受領額と受領日、コースと期間、支払方法と各回の支払日、契約日と合意書の締結日、これらが一体の書面である旨を書く運用にしました。住所は分割を希望する人からだけ取得し、合意書の署名が済むまで分割の決済を始めません。
書面を電子メールなどで交付するには、あらかじめ電磁的方法の種類と内容を示して、書面又は電磁的方法で承諾を得なければなりません(割賦販売法4条の2、同法施行令2条1項)。事務所では、交付する契約書の中で承諾を取るのではなく、申込みのフォームなど契約書を送る前の段階で取る形にしています。承諾が撤回されたら紙で交付します(同条2項)。受講案内の送付をメールに限ったのは、LINEの保存期限の仕組みでは、受講者のファイルに記録して出力できる状態を保てず、交付していないと扱われるおそれがあるためです。
取引条件の表示にも注意が要ります。割賦販売の方法で役務を提供しようとするときは、現金提供価格(契約の締結と同時に対価の全額を受け取る場合の価格)、割賦提供価格、支払の期間と回数、手数料の料率を相手方に示さなければなりません(3条1項)。インスタ運用講座では、依頼者がカード払いの価格を一括の価格とし、銀行振込を値引きにしたいと希望しました。事務所は「一定の合理性がある」と評価するにとどめ、振込の価格が一括の価格と判断されると、表示している実質年率が実際より大幅に低いことになり、3条の表示の問題を問われるリスクがあると説明し、最も確実なのは価格を同じにすることだと伝えています。
解除・一括請求の前には、20日以上の書面での催告
割賦販売の受講者が支払を遅らせても、事業者は、20日以上の相当な期間を定めて支払を「書面で」催告し、その期間内に支払がないときでなければ、支払の遅れを理由に契約を解除したり、まだ期日の来ていない分割金を一括で請求したりできません(割賦販売法5条1項)。これに反する特約は無効です(同条2項)。「1回でも遅れたら催告なしに残額を一括請求する」「1週間の遅れで強制退会」といった条項は、割賦販売に当たる場合、この規定に反します。
事務所の改訂例 分割払いの条項を直した例
催告の方法
4条の書面には電磁的方法で代える定め(4条の2)がありますが、5条の書面による催告にはその定めがありません。
期限の利益の喪失
12回の分割の講座で、割賦販売法5条に抵触すると指摘しました。
遅延損害金
割賦販売に当たる契約では遅延損害金の上限が法定利率であり(6条2項)、数字を固定すると法定利率の変動の際に食い違うためです。
郵送の範囲
期日が来た分の督促、サービスの停止、遅延損害金の請求は書面の催告を要しません。
インスタ運用講座では、メールやLINE、チャットツールでの催告は5条の催告として効力がなく、「メールで催告できる」と定めても無効になると説明しました。そのうえで、催告は内容証明郵便(配達証明付き)で行い、住所を必須の項目にし、「届かなくても届いたものとみなす」という定めは同条2項で無効になるおそれがあるとして置きませんでした。当社分割は最長でも数か月で全回の期日が来るため、実際に郵送の催告が必要になる場面は多くありません。依頼者が「郵送での催告は難しい」と回答した場合の選択肢として、3回以上の分割を受けるのをやめ2回払いまでにする案も示しています。
解除されたときの上限と、遅延損害金
割賦販売の契約が解除された場合、事業者が請求できる額にも上限があります。役務の提供開始前の解除なら契約の締結と履行のために通常要する費用の額(6条1項3号)、提供開始後の解除なら、提供された役務の対価に相当する額に、割賦提供価格と現金提供価格の差額を加えた額(同項5号)に、それぞれ法定利率による遅延損害金を加えた額までです。解約手数料を上乗せする枠はありません。上乗せの枠があるのは特定継続的役務に当たる場合(同項6号ロ)に限られるため、当社分割で払う個人からは、原則として解約手数料を取れないことになります。
事務所の記載例では、自社割賦の場合に、割賦提供価格と現金提供価格の差額を、提供済みの割合に応じて按分して加える形にしました。差額の全額を加える法律上の上限より、受講者に有利な定めです。また、当社分割は講座の提供期間より早く払い終わる設計が多く、解約の時点で既払額が上限を上回っていることがよくあります。その場合、残りの分割金は受け取れないので、決済サービスの残りの決済を止めるよう助言しました。なお、電話勧誘販売に当たる契約で割賦販売に当たるものには、特定商取引法25条ではなく割賦販売法6条がかかります(特定商取引法26条8項)。
遅延損害金の上限は、契約の性質によって違います。割賦販売では、分割金の支払が遅れた場合に請求できるのは、残額に法定利率による遅延損害金を加えた額までです(割賦販売法6条2項)。電話勧誘販売の契約では、割賦販売に当たらない2回払いなどでも、未払いの対価に法定利率による遅延損害金を加えた額が上限です(特定商取引法25条2項)。これらに当たらない消費者契約の一般的な上限が、年14.6パーセントです(消費者契約法9条1項2号)。個別コーチングの案件でも、「電話勧誘販売の分割の遅延損害金は、消費者契約法の年14.6パーセントではなく、特定商取引法25条の上限(法定利率)が優先する」と整理して契約書に反映しています。法定利率は変動する制度なので(民法404条)、契約書には具体的な数字ではなく「法定利率」と書いておくのが安全です。
事業者向けの例外・カード分割で残ること・コースの切替え
割賦販売法の割賦販売の規定は、申込者や受講者が営業のために又は営業として契約する場合には適用されません(割賦販売法8条1号)。ただし、法人の名義で申し込んだというだけで外れるわけではなく、実態で判断されます。さらに、業務提供誘引販売取引の契約のうち、提供・あっせんされる業務を事業所などによらないで行う個人との契約は、この例外から除かれています(同号ロ)。受講後に仕事を紹介する型の講座では、自宅で働く個人が事業のつもりで契約しても、割賦販売法の規定が及ぶことになります。
カード会社の分割だけを受け付ける場合でも、事業者の仕事がなくなるわけではありません。受講者は、講座が提供されないなど事業者に対して主張できる事情を、カード会社からの請求に対しても主張できる場合があり(抗弁の接続。割賦販売法30条の4)、カード会社から事業者に問合せや代金の返還の求めが来ることがあります。自社で分割を受ける場合も、受講者から同じ主張を直接受ける点は変わりません。結局のところ、講座の内容と返金のルールを契約書で明確にしておくことが、どの支払方法でも土台になります。
短いコースから長いコースへ切り替える設計にも注意が要ります。インスタ運用講座では、2か月のコースから6か月のコースへ切り替えた場合の料金の合計が、最初から6か月のコースに申し込む場合より一定割合高くなっていたため、その設計でよいかをヒヤリングで確かめました。切替えは新しい契約の申込みとして扱い、切替えの申込みには任意の8日キャンセルを適用しないこと、途中解約の精算は合計額と通算の期間で行うこと、切替え用の別表を付けた合意書が別に必要になることを整理しています。タロット系の講座の3回払いでは、販売サイトで回ごとに商品ページを分け、初回のページに合計額と規約へのリンクを表示し、支払が遅れたら短い期間の催告をする、という運用にしました。
ヒヤリングの問いと理由 分割払いを受け付ける前に確かめること
分割は、カード会社の分割ですか、決済サービスでの毎月決済ですか、銀行振込での分割ですか。
誰が立て替えるかで、割賦販売に当たるかが決まります。
分割の回数と、最終回の支払日は契約日から何か月後ですか。
2か月以上・3回以上に当たるかを確かめるためです。
一括払いと分割払いで総額は違いますか。カード払いと振込で価格は違いますか。
現金提供価格と手数料の料率の表示、上限の計算に関わります。
支払が遅れたときに、郵送で書面の催告をする体制はありますか。
体制がなければ、3回以上の自社分割はやめる方が現実的です。
個別相談を経て申し込む人はいますか。
電話勧誘販売なら、遅延損害金の上限が特定商取引法25条で決まります。
起きがちなこと
分割払いを含む書類の組合せはオンライン講座に必要な書類一式で、電話勧誘販売の契約書面の記載事項は契約書面とクーリング・オフの赤枠で説明しています。
よくあるご質問
講座代金の分割払いを受け付けると、割賦販売法がかかりますか。
事業者が自分で代金を2か月以上の期間にわたり3回以上に分けて受け取る場合は、割賦販売法の割賦販売に当たり得ます。指定役務には「技芸又は知識の教授」という包括的な項目があるため、特定継続的役務に当たらない一般的な講座も対象になり得ます。
カード会社の分割払いや決済サービスの分割は、事業者に何か義務がありますか。
カード会社の分割では、義務の中心はカード会社にありますが、受講者がカード会社に事業者への抗弁を主張することがあります。決済サービスで毎月決済して毎月入金を受ける形は、立て替える会社がいないため、事業者自身の割賦販売に当たる可能性が高くなります。
2回払いなら割賦販売法の対象外ですか。
割賦販売は3回以上の分割が要件なので、2回払いは当たりません。3回払いでも、全体を2か月未満で完了させる設計なら当たりません。ただし、電話勧誘販売の契約なら、遅延損害金や解除時の請求額に特定商取引法25条の上限がかかります。
分割払いが遅れた受講者に、一括請求や契約解除をするには何が必要ですか。
割賦販売に当たる場合は、20日以上の相当な期間を定めて書面で支払を催告し、その期間内に支払がないときでなければ、解除や一括請求はできません(割賦販売法5条)。メールやLINEでの催告では足りないため、内容証明郵便などで送ります。
遅延損害金は年14.6%と書いてよいですか。
割賦販売や電話勧誘販売の契約では、遅延損害金の上限は法定利率です(割賦販売法6条2項、特定商取引法25条2項)。年14.6%は、それらに当たらない消費者契約の一般的な上限です。契約書には数字を固定せず「法定利率」と書いておくのが安全です。
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本ページは一般的な情報提供です。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきたオンライン講座の受講規約・受講契約書、電話勧誘販売の契約書面・申込書面、特定商取引法に基づく表記、プライバシーポリシー、分割払いの合意書、講師・運営スタッフの業務委託契約書、講座の構築・運用の受託契約などを、個別の事業者や講座が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月16日)。裁判例は、事務所の報告書・回答書で検討したものを、判決日と要旨とともに紹介しています。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 個人情報保護委員会 / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)