このページの要点
- どの操作を申込み・承諾とするかを決め、規約・契約書・メール・決済画面で同じ時点を書く。
- 電子契約サービスを乗り換えたら、署名の順番と成立・締結日の条文を見直す。
- 契約書面の電子交付は、施行規則50条の説明・確認・承諾に加え、承諾を証する紙の書面が必要。
- 郵送なら追跡できる方法で送り、配達完了日を受領日として記録する。
結論:成立の時点を一つに決めてから、書面の渡し方を組み立てる
オンライン講座の契約は、申込フォームの送信、決済、電子署名、LINEでの「同意しました」の返信など、いくつもの操作を経て結ばれます。契約は申込みと承諾が合致すれば成立し、書面の作成などの方式は原則として要りません(民法522条)。そのため、どの操作を「申込み」とし、どの操作で「成立」とするかは、事業者が書類で決めることになります。ここが決まっていないと、規約・契約書・自動返信メール・決済画面がそれぞれ違う成立時期を書いてしまい、クーリング・オフの起算、入金後の通知、返金の計算の起点がすべて揺らぎます。
アトラス行政書士法人が受講規約・受講契約書をレビューした案件で、最も多かった指摘の一つが、この成立時期の食い違いでした。電話勧誘販売に当たる講座では、さらに、成立の後に法定の契約書面をどうやって渡すか(電子か郵送か)が問題になります。このページでは、成立の決め方、電子契約サービスの署名の順番、申込みと決済の順番、電子交付と郵送の手順、支払受領の通知を、事務所の書類から説明します。書面の中身は契約書面とクーリング・オフの赤枠をご覧ください。
成立時期の食い違い:最も多い指摘
事務所の改訂例 成立時期を一本にした例
規約と運用のずれ
運用に合わせて規約を直しました。
三重の定義
三つの時点が並ぶと、どれが起点か受講者にも事業者にも分かりません。
LINEでの同意と決済
申込みの手段と成立の時点を同じ流れの上にそろえました。
締結日のずれ
締結日は契約書面の記載事項でもあります。
子どもとの関係や自己理解をテーマにした講座では、「承諾時に成立」とする条と「申込み完了で効力発生」とする附則の矛盾を指摘し、受講案内か入金案内を送った時に成立する形に一本化しました。同じ講座では、申込み前に全文を表示する、同意欄を最初からチェック済みにしない、申込み日時と同意した版を保存する、といった手当ても加えています。海外の法人が販売する講座では、カード決済と海外送金で入金の時点が違うため、支払方法ごとに号を分けて成立時期を書きました。成立した後で事業者が受講を断る場合は、成立前の拒否とは扱いが違い、解除の手続と精算の条に接続させる必要があります。
電子契約サービスと署名の順番
電子契約サービスは、サービスによって「誰が先に署名するか」の仕組みが違います。美容系の講座で電子契約サービスを乗り換えた案件では、乗換え先のサービスが「送付した時点で送付者の署名が完了し、受信者が同意した時点で受信者の署名が完了する」仕組みで、それまでの契約書の「受講者が先に署名し、事業者が確認して署名する」という順番と逆になっていました。そこで、契約の成立と締結日の定義(受講者の電子署名の完了日時をサービスの記録で特定する)、定員に達したかを判定する時点(送付の前に判定する)、同日中の署名の主体、紙で契約する場合の読み替え、末尾の締結日の欄、運用マニュアルの手順と図を全面的に改めました。送付した時点で事業者の署名とみなされ取り消せないため、送付の前に定員・同意欄の設定・記載内容・日程の一致の4点を確認する手順も入れています。乗換え先の運営会社の所在国も確認し、国内の事業者であることから外国にある第三者への提供の手続は不要と整理しました。
| 方式 | 契約の成立 | 書面の交付として |
|---|---|---|
| 電子契約サービス(事業者が先に署名) | 受講者の署名で成立。通話中に両者の署名を終えれば申込みと成立が一体になる | サービスが自動で送るPDFは、それだけでは法定の書面の交付にならない |
| PDFをLINEで送り、受講者が「同意しました」と返信 | 事業者のPDF送付を申込み、受講者の返信を承諾とする設計が可能 | 契約書面は別に紙で郵送する |
| フォームに契約書を掲載し、署名入力欄と同意チェック | フォームの送信で成立させる設計が可能 | 交付用の契約書(docx・PDF)を別に用意する |
| 共同編集の文書に名前を入力 | 成立はし得るが、本人による署名の証拠としては弱い | 立会人型の電子契約サービスを勧めた |
電子契約サービスを選ぶ条件として、事業者が先に署名する順番にできる、締結日が自動で入る、保存日時のログが残る、などを手順書に挙げています。
個別コーチングの案件では、当初、事業者が先に署名し受講者の署名で成立する方式とし、署名の期限を送付日から3日以内かつ提供開始日の前日までとしていました。その後、電子契約サービスの利用をやめ、事業者が契約書のPDFをLINEで送ることを「申込み」、受講者の「同意しました」という返信を「承諾」とし、その時点を契約の締結日とする方式に変えました。通話中に受講者が「申し込みます」と言っても申込みとしては受け付けず、「ご意向の確認」と言い換え、契約書の送付で手続を進めます。こうすると申込みと成立の間に時間差が生じず、申込書面が要らなくなります。氏名と住所は決済のリンクを送る前に取得し、契約書面は紙で郵送します。
申込フォーム・LINE・決済の順番
順番を誤ると、証拠としての価値が失われたり、成立前に代金を受け取ったりします。事務所の運用マニュアルで「最初に覚える三つのこと」の一つ目に置いているのが、「契約が成立する前に決済へ案内しない」です。
LINEやDMで申込みを受ける場合の順番(マネー講座の運用手順から)
- 受講の意思表示受講者から受講したい旨の連絡
- 確認メッセージ講座の内容と分量・受講料・支払・提供時期・解約返金などを送る
- 「同意します」の返信返信を受けるまで入金の案内をしない
- 契約書・振込先の送付同意の後に送る
- 記録の保存スクリーンショットとトーク履歴の書き出し。契約終了後5年保存
LINEには送信を取り消す機能があるため、確認メッセージの全文と同意の返信を、日付と相手の表示名が写る形で保存します。
SNS運用講座のフォームは、冒頭に「この入力は申込み・承諾ではありません」と書き、送信ボタンを「契約書の送付を希望する」とし、受講者が自分で入れるチェックは1項目だけにしました。事業者が署名した契約書を送ることを「申込み」、受講者の電子署名による承諾が事業者に届いた時を成立とする設計です。受講者が自分から「申し込みます」と書いてきたときだけ申込書面を使い、「契約書を送ってください」という連絡は送付の依頼として扱って「契約書をお送りします」と返信する、という判断の基準も手順書に入れています。インスタ運用講座では、Zoomの無料セミナーの後の自社フォームを「契約書の送付依頼」と位置づけ、電子契約の後に決済、入金期限は一律、受講案内を送った日を利用開始日とし、その翌月1日から6か月、という順番に整理しました。
引き寄せ系の講座では、Googleフォームに契約書の全文を掲載し、末尾に署名の入力欄と「同意しました」のチェックを置く方式にしたため、フォームに貼り付けられるテキスト版で契約書を納め、交付用のWord・PDFは別に用意しました。フォームの自動返信の控えは法定の書面にならないためです。期ごとに募集する講座では、承諾メールに契約書と募集要項のPDFを添付して、定型約款の内容を示す義務(民法548条の3第1項)を電磁的記録の提供で満たし、5年保存する運用にしています。
電子交付には承諾の手順と、紙の書面が要る
電話勧誘販売の契約書面は、受講者の承諾を得れば、紙の代わりに電磁的方法で提供できます(特定商取引法19条3項・18条2項)。ただし、その承諾の取り方は施行規則で細かく決まっています。事業者は、承諾しなければ紙の書面が交付されること、提供される事項が重要なものであること、ファイルに記録された時に到達したものとみなされ、その日から8日を経過するとクーリング・オフができなくなること、画面の大きさなど必要な機器を日常的に使い自ら操作できる人に限られること、などを平易な表現で説明し(施行規則50条1項・2項、55条で準用)、受講者が自ら操作するウェブページ等で、機器を使えることなどを確認しなければなりません(同条3項・4項)。承諾は、受講者が書面等に氏名と「説明の内容を理解した」旨を記入する方法で得るもので、チェックボックスだけのような認識が明らかにならない方法は使えません(同条5項)。
そして、承諾を得たときは、電磁的方法で提供するまでに、承諾を得たことを証する書面を受講者に交付しなければなりません(同条7項)。この書面には電磁的方法による代替の定めがないため、事務所では「電子交付を選んでも、紙を1枚も送らない設計は現行法ではできない」と整理しています。Zoomの面談中に口頭で承諾をもらえば足りるか、という質問には、口頭だけでは足りないと回答しました。オンライン幼児教室では、メールの一文で承諾を得ていた運用について、施行規則の方式を満たしていない以上、書面の交付が完了していないと主張される余地があるとして、紙の契約書面を郵送し直し、受け取った日から8日間を案内し直すよう助言しました。
電子交付を選ぶ場合の手順(SNS運用講座の手順書から)
- 電子交付は受講者が希望した場合だけの例外とし、事業者からは勧めない。
- 承諾のフォームは申込みのフォームと別に作り、説明8項目と、自分で操作しているか・画面の大きさ・PDFを保存できるかなどの確認8問を置く。
- 承諾は氏名と「理解しました」の入力で取り、承諾ありと扱えない場合の判定基準を決めておく。
- 承諾を得たことを証する書面を紙で郵送し、配達完了を確認してから契約書を送信する。
- 提供するファイルには、改変されていないかを確認できる措置を講じる(施行規則48条2項2号)。
- 受講者から指定事項の返信がなければ郵送に切り替える。起算日は、メールが受講者側に記録された日などの早い方。
LINEには送信の取消しや閲覧期限の機能があり、受講者の端末のファイルに記録する方法として扱いにくいため、事務所では「書面はメール添付か郵送、LINEは連絡用」と案内しています。電子交付では、紙を希望した人に電子の手続を進める、紙の交付に費用を取る、値引きなどの利益で電子を選ばせる、受講者のスマートフォンを預かって操作する、といった行為も避けます。SNS運用講座では、開講日までの日程を試算した結果、電子交付にしても承諾を証する紙の書面が先に必要になり、かえって起算日が後ろにずれるとして、郵送を標準にしました。
郵送で渡す運用
多くの講座で採っているのは、契約は電子署名で当日に成立させ、法定の契約書面は署名済みの契約書を印刷して郵送する方式です。パートナーシップ講座の運用メモでは、電子署名済みの契約書を、別紙(請求書や講座資料)を含めた一式のままカラーで印刷し、契約成立後すみやかに紙で郵送する、受講者の署名や返送は求めない、記載事項は署名の前にすべて埋めておく、と定めました。電子署名済みの契約書をそのまま契約書面として使えるのは、記載事項がすべて入っていて、別紙が同じPDFに綴じられ、空欄がない場合に限られます。送付状には、電子署名で成立した契約の内容を記載した書面であり、赤枠を確認してほしい、という一文を添えるよう勧めました。
郵送の方法と記録
方法
追跡と受領の記録が残る簡易書留、対面で受け取るレターパックプラス
避けたい・注意が要るポスト投函で受領印が残らない方法、普通郵便
受領日の扱い
追跡と受領の記録が残る配達完了日を受領日として記録。返送されたら再発送後の配達日
避けたい・注意が要る発送日を受領日として記録する
受け取り方の希望
追跡と受領の記録が残る別の住所、郵便局留め(窓口で交付された日が到達日)、差出人を氏名だけにした無地の封筒
避けたい・注意が要る家族に知られたくない受講者への配慮を欠くと、受取拒否や不在が増える
郵送の3つの選択肢(別住所・局留め・無地封筒)は、明文の根拠条文があるわけではなく、法律が記載事項と様式だけを定めていることからの推論として示したものです。
美容系の講座の運用マニュアルでは、発送先を本人の住所と別にする場合も、契約書の受講者の欄は本人の住所のままにして発送先は台帳で別に管理する、郵便局留めは1週間たっても受け取られていなければ確認する、同居の家族が受け取った場合は原則として配達日を受領日とするが本人宛てに発送を知らせるメールを送る、到達した後は到達日とクーリング・オフの満了日を受講者にメールで知らせる、と細かく決めました。紙を一切受け取りたくないという人には、その人についてだけZoomで講座を案内せず、販売ページから直接申し込む通信販売として受け付け、その場合も特約で8日間のクーリング・オフを約束する、という選択肢も示しています。
郵送しなければならない範囲を聞かれることもあります。契約書・規約・プライバシーポリシー・表記・署名の記録をすべて郵送するのか、という質問には、郵送が必要なのは署名済みの契約書(別表を含む)と支払受領の通知だけで、プライバシーポリシーと表記は公表するもの、と回答しました。両面印刷も可能です(法令が定めているのは赤枠・赤字と8ポイント以上の文字です)。どの方式でも、開講日の初回はオリエンテーションなど軽い内容にし、全員の8日間が満了してから本格的な提供を始める運用にすると、クーリング・オフの際の無償分を小さくできます。
支払を受けたときの通知(20条)
電話勧誘販売で、講座の提供より前に受講料の全部又は一部を受け取ったときは、遅滞なく、申込みを承諾する旨又は承諾しない旨、事業者の氏名・住所・電話番号、受領額と受領日、役務の種類、提供時期などを書面で通知しなければなりません(20条1項、施行規則56条)。受領後遅滞なく提供を始める場合は不要です。電磁的方法で通知するには、あらかじめ電磁的方法の種類と内容を示したうえで、受講者の承諾を書面等で得る必要があります(20条2項、施行令10条1項)。引き寄せ系の講座では、この通知をLINEやメールで送る運用を、手続を経ていないとして紙の書面に変え、契約書と同じ封筒で送る形にしました。美容系の講座では、契約書面の発送と支払受領の通知を同時に行うと定めていた条を、硬直的すぎるとして分け、契約書面は成立後に、通知は入金後に別に、又は同時に送れる形にしています。契約書面に通知を兼ねさせる方式も可能ですが、その場合は決済から間を置かずに交付します。
SNS運用講座の通知書は、契約が成立済みである旨と締結日、役務、受領日、今回の受領額・それまでの累計・合計、支払方法、動画の公開日、サポートの期間、事業者の情報を記載する書式にし、動画の公開日は配達完了日が決まってから記入する手順にしました。なお、自社分割などの割賦販売等に当たる場合は、この20条の通知の規定は適用されません(特定商取引法26条10項)。分割払いの書面は講座代金の分割払いと割賦販売法で説明しています。未成年者からの申込みの扱いは受講規約・受講契約書の条項Q&Aに記載しました。
ヒヤリングの問いと理由 成立と書面の渡し方を決めるとき
申込みから決済までに、受講者が操作する画面とメッセージを順番に教えてください。
どの操作を申込み・承諾とするかを決め、すべての書類で同じ時点を書くためです。
使っている電子契約サービスは、事業者と受講者のどちらが先に署名する仕組みですか。
署名の順番で、申込書面が必要か、締結日をいつにするかが変わります。
通話中に署名まで終える人と、通話の後で署名する人の両方がいますか。
後で署名する人には申込書面が必要になり、起算日も変わります。
契約書面を受け取る住所を、いつ・どの画面で取得していますか。
成立後すぐに郵送できるよう、決済の前に取得する流れにします。
開講日は契約日から何日後ですか。初回の内容は何ですか。
8日間の満了と本格的な提供の開始の関係を見て、無償分を小さくする設計にします。
起きがちなこと
よくあるご質問
オンライン講座の契約は、申込み・決済・署名のどの時点で成立しますか。
法律上は申込みと承諾が合致した時点で成立し、どの操作をその時点とするかは事業者が書類で決めます。大切なのは一つに決めることで、規約・契約書・自動返信メール・決済画面の成立時期をそろえます。
電子契約サービスを変えるとき、契約書のどこを見直せばよいですか。
誰が先に署名するか、送付した時点で署名とみなされるかを確認し、契約の成立と締結日の定義、定員の判定時点、同日中の署名の扱い、末尾の締結日欄、運用マニュアルの手順を見直します。運営会社の所在国も確認しておきます。
契約書面をPDFでメール送信するだけで足りますか。
足りません。電磁的方法で提供するには、施行規則で定められた説明・確認をしたうえで、氏名と理解した旨の記入による承諾を得て、承諾を得たことを証する書面を紙で交付する必要があります。手順を踏めない場合は、印刷して郵送します。
電子契約で締結した契約書を、印刷して郵送すればよいのですか。
記載事項がすべて入っていて、別紙も一体になり、空欄がなければ、署名済みの契約書をカラーで印刷して郵送する方法で契約書面を交付できます。配達の記録が残る方法で送り、配達完了日を受領日として記録します。
LINEで「申し込みます」と送ってもらう方式でも契約は成立しますか。
成立し得ますが、確認メッセージ(講座の内容・受講料・解約条件など)を先に送り、「同意します」の返信を受けてから契約書や振込先を送る順番にしておくと、後の紛争に備えられます。送信取消しに備えて、スクリーンショットとトーク履歴を保存しておきます。
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本ページは一般的な情報提供です。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきたオンライン講座の受講規約・受講契約書、電話勧誘販売の契約書面・申込書面、特定商取引法に基づく表記、プライバシーポリシー、分割払いの合意書、講師・運営スタッフの業務委託契約書、講座の構築・運用の受託契約などを、個別の事業者や講座が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月16日)。裁判例は、事務所の報告書・回答書で検討したものを、判決日と要旨とともに紹介しています。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 個人情報保護委員会 / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)