海外から日本向けに講座を売るときの表記・準拠法・個人情報

海外にいても、日本の受講者に売れば日本の規律は外れません。変わるのは、表記と規約の書き方と、運用の決め方です。

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電話番号は外国のものが1本だけ、価格は外貨建てのみ、規約は「当社所在地の裁判所が専属管轄」。国外から売る講座の書類で多いのは、この三つの書き方です。

このページの要点

  • 日本の受講者向けに売れば、事業者の所在地にかかわらず特定商取引法の通信販売の表示が必要になる(11条、消費者庁の海外通販Q&A)。
  • 氏名・住所・電話番号は請求開示の方式が使える。ただし電話は確実に連絡が取れる番号で、受付時間は日本時間で書き、時間外は留守番電話で受ける。
  • 準拠法は日本法が読みやすい。外国法を選んでも消費者の強行規定が重なり得る(通則法11条)。消費者契約の管轄合意には制限がある(民事訴訟法3条の7第5項)。
  • 個人情報は、国外での取扱いにも法が適用され(171条)、委託先が外国にあれば委託でも28条の規律がかかる。

結論:海外にいることは、規律を外す理由にならない。変わるのは「書き方」と「運用」

海外に住む個人や外国の法人が、日本語のサイトで日本の受講者に向けてオンライン講座を売る。このとき、事業者が国外にいることを理由に日本の規律が外れることはありません。消費者庁の「海外からのインターネット通信販売Q&A」は、海外の事業者が日本国内の消費者向けにウェブサイトで販売し、国内に住む人が購入する場合は、特定商取引法の適用除外に当たらず、適用対象になると説明しています。特定商取引法26条1項2号が適用を外しているのは、反対向きの取引、つまり「本邦外に在る者」に対する販売や役務の提供のほうです。

国外の事業者が日本の受講者向けに講座を売る場合は、外国の法人が音楽の講座を売るときも、海外に住む個人がオンラインで相談の役務を提供するときも、結論は同じです。日本の規律は外れない。そのうえで、国外にいるがゆえに実務で詰まる点が、表記の電話番号、価格の表示、準拠法と裁判所、個人情報の扱い、時差、販売の仕組みの六か所に集まります。このページは、その六か所を順に説明します。国内の事業者が書く表記の基本は特商法表記・最終確認画面・入金後の通知、取引類型の判定の全体像はオンライン講座の始め方と取引類型で説明していますので、ここでは「国外にいるから増える作業」に絞ります。

国外から日本向けに売るとき、どこが「同じ」でどこが「増える」か
論点条文・根拠国外から売るときの要点
表示義務特定商取引法11条・12条の6・13条事業者の所在地では免除されない。電話番号・住所・価格の書き方に工夫が要る
準拠法法の適用に関する通則法7条・11条契約で定めなければ消費者の常居所地の法律が基本になる。外国法を選んでも日本の強行規定が重なり得る
裁判所民事訴訟法3条の4・3条の7消費者との間では、事業者側の裁判所だけを定める合意は効力が限られる
個人情報個人情報保護法171条・28条国外で取り扱う場合にも適用される。委託先が外国にあれば、委託でも外国提供の手続が要る
運用消費者契約法9条ほか時差・言語・通貨・成年年齢を、キャンセル料や申込みの条件に落とし込む

「常居所地」は、その人が通常住んでいる地のことです。消費者の常居所地が日本にあるかどうかが、準拠法の考え方の出発点になります。

特商法表記:電話番号・住所・氏名・価格の四つでつまずく

通信販売の表示事項は、販売業者・役務提供事業者の氏名または名称、住所、電話番号に加え、価格、支払の時期と方法、提供時期、申込みの撤回・解除に関する事項などです(特定商取引法11条、同法施行規則23条)。国外の事業者でこれが問題になる箇所は、次の四つです。

一つ目は、国内に事務所等を置くときの追加表示です。施行規則23条3号は、外国法人または外国に住所を有する個人が国内に事務所や事業所に準ずるものを置いている場合に、その所在場所と電話番号の表示を求めています。裏返すと、国内に拠点がない事業者には、この号による追加の表示義務は生じません。国内に事務所等がない場合は3号の追加表示は生じないと整理したうえで、1号の電話番号の実効性を別の論点として考えます。

二つ目は、氏名・住所・電話番号を常時掲載せず、請求があったときに遅滞なく開示する方式です。法11条ただし書と施行規則25条が認める方式で、消費者庁の通信販売広告Q&Aは、個人事業者の氏名(Q15)、住所・電話番号(Q17)について、請求に応じて提供する旨を表示し、実際に提供できる措置を講じている場合は表示を省略できるとしています。国外に住む個人が、自宅の住所を公開したくない場合に使われる方式です。ただし、この方式には条件があります。表記の中に「請求があれば遅滞なく開示する」旨と窓口を書くこと、そして書いた応答期限を守ることです。表記には余裕のある日数を書き、運用ではそれより早く返す形が勧められます。書いた日数を超えて応答すると、省略の前提を自分で崩すことになるからです。氏名は、屋号や通称、サイト名だけの表示は認められず、個人は戸籍上の氏名を示す必要があります(Q16)。旧姓やビジネスネームで活動している場合は、ページ上の表示名は任意の表示にとどめ、請求があったときに戸籍上の氏名を開示する運用にそろえ、決済事業者に登録した名称との対応を説明できるようにしておきます。

三つ目は、電話番号の実効性です。Q17は、電話番号は確実に連絡が取れる番号であることを求めています。外国の番号だけを載せると、日本の消費者にとっては国際通話料、時差、対応言語の三つの壁があります。ただ、Q20は、夜間など営業していない時間帯は留守番電話などを利用してよく、電話番号を載せても常時対応する義務はないとしています。そこで、受付時間を日本時間で書き、時間外は留守番電話で受けて翌営業日以内に折り返すこと、メールでの問合せ窓口と応答の目安、対応言語を併記する方法があります。夏時間のある国では、現地時間を併記すると年に二回の書換えが必要になり、書換え漏れがそのまま表示の不備になるので、日本時間だけを書きます。

四つ目は、価格です。表示は円建てで、消費者が実際にいくら支払うのかが読み取れることが基本です。外貨建ての価格も併記する場合は、どの時点のどのレートで円に換算するのか、換算や送金の手数料は誰が負担するのかを書きます。「為替相場の変動により予告なく改定する」とだけ書かれた外貨建ての価格は、算定の方法が書かれていない点が問題になります。銀行送金や海外決済の手数料のように、代金以外に消費者が負担する金銭があるときは、その内容と額を示す必要があります(施行規則23条4号)。消費者向けの価格は、消費税を含む総額で示します(消費税法63条。免税事業者を除く)。税抜価格を併記する場合も総額が明瞭に分かるようにし、手数料などがあればその旨を価格の近くに書きます。

書き方の例(一般的な例) 特商法表記の電話番号と価格

電話番号

出発点海外の電話番号を1本だけ掲載。受付時間や対応言語の記載なし
整えた書き方氏名・住所・電話番号は請求があれば2営業日以内などの期限を示して開示する方式に。電話は日本時間の受付時間を決め、時間外は留守番電話で受けて翌営業日以内に折り返す。問合せはメールを主とし、応答の目安を書く

確実に連絡が取れる番号であること(Q17)と、夜間は留守番電話でよいこと(Q20)の両方に乗せるため。日本時間のみの記載にしておくと、夏時間の切替えで表記が古くならない

価格

出発点外貨建ての価格を掲げ、「為替相場により予告なく改定する」
整えた書き方円建ての価格を表示し、外貨は参考表示と位置づける。外貨を併記するときは、換算の基準日・参照するレート・手数料の負担者を書く

法11条1号は役務の対価を表示事項としている。消費者が支払う額が読み取れない表示は、その点で不備になるおそれがある

動作環境の欄は、請求開示の方式を使っても省略できません。施行規則25条は、請求により書面等を提供する旨を表示して省略できる事項から、23条6号から10号までの事項を除いています。つまり、これらは省略できません。23条6号は、電子計算機を使って映画や音楽などを鑑賞させる役務や、プログラムを電子計算機のファイルに記録させる役務について、利用に必要な電子計算機の仕様・性能その他の必要な条件を表示事項としています。録画の動画を視聴させる講座がこの号に当たるかは教材の内容によりますが、当たり得る講座では動作環境を省略できません。個別セッションを中心とする講座でも、推奨する通信環境や利用するビデオ通話の種類を書いておくと、申込み後の「つながらない」という行き違いを防げます。

準拠法と裁判所:外国法を選んでも、日本の強行規定は重なり得る

規約や契約書に、準拠法(契約にどの国の法律を適用するか)の定めがない場合、消費者契約の成立と効力は、消費者の常居所地の法律によります(法の適用に関する通則法11条2項。事業者が消費者の常居所を知らず、知らなかったことに相当の理由があるときなど、同条6項に例外があります)。日本に住む受講者との契約であれば、日本法が基本です。では、事業者の国の法律を準拠法に選べばよいかというと、そうはなりません。当事者は準拠法を選べますが(同法7条)、消費者がその常居所地の法律の特定の強行規定を適用すべき旨を事業者に表示したときは、その強行規定が重ねて適用されます(同法11条1項)。外国法を選ぶと、外国法と日本の強行規定が部分的に重なる二重構造になり、規約の読み方がかえって複雑になります。

準拠法の選び方

日本法を選ぶ外国法を選ぶ

適用される法

日本法を選ぶ日本法。受講者が日本の強行規定を持ち出す余地は、もともと日本法の中にある

外国法を選ぶ選んだ外国法。ただし受講者の表示があれば、日本の特定の強行規定が重ねて適用される

規約の読み方

日本法を選ぶ一つの法体系で足りる。特商法・消費者契約法に合わせた書き方がそのまま使える

外国法を選ぶどの事項が外国法で、どの事項が日本の強行規定かを区別して読む必要が生じる

事業者の負担

日本法を選ぶ日本法に沿った書類の整備が必要(これは準拠法の選択にかかわらず必要)

外国法を選ぶ外国法に基づく運用と日本の規制の両方を意識することになる

実務上の整理

日本法を選ぶ日本法準拠とする書き方を基本にする

外国法を選ぶ選ぶ場合は、日本の強行規定が重なり得ることを前提に、受講者への説明と規約の書き分けを考える

「強行規定」は、当事者の合意で排除できない規定のことです。消費者契約法の無効規定などが典型です。

裁判所(国際裁判管轄)の定めも、同じ方向で考えます。日本に住む消費者が事業者に訴えを起こすときは、訴え提起時または契約締結時の消費者の住所が日本国内にあれば、日本の裁判所に提起できます(民事訴訟法3条の4第1項)。反対に、事業者から消費者への訴えには、契約上の債務の履行地などによる管轄(同法3条の3)は適用されず(同法3条の4第3項)、被告である消費者の住所地を基本に考えることになります。

管轄の合意も、消費者契約では制限があります。将来生じる消費者契約の紛争を対象とする合意が効力を持つのは、契約締結時に消費者が住所を有していた国の裁判所に訴えを提起できる旨の合意であるとき、または、消費者がその合意に基づいて合意された国の裁判所に訴えを提起したとき、事業者が提起した訴えで消費者がその合意を援用したときに限られます。さらに、消費者の住所地の国の裁判所だけを指定する合意は、他国の裁判所への提起を妨げない付加的な合意とみなされます(同法3条の7第5項1号のかっこ書)。反対に、事業者の所在地(国外)の裁判所だけを指定する合意は、第5項のどちらにも当たらなければ、効力を有しません。つまり「当社所在地の裁判所を専属的合意管轄とします」と書いても、日本の受講者に対しては、そのとおりには働かず、受講者は日本の裁判所に訴えを提起できます。「専属的」とはせず、付加的合意管轄の形にし、法律上、受講者が他の裁判所に訴えを提起できる場合があることを条文に書き添える方法があります。

条文例準拠法と裁判所の条(国外の事業者が日本の受講者に使う例)

  1. 本規約の成立、効力、解釈及び履行は、日本法に準拠するものとします。
  2. 本サービスに関して当方と受講者との間に生じた紛争については、受講者の住所地を管轄する裁判所を含め、日本の裁判所に訴えを提起することができます。
  3. 前項の定めは、法令により受講者が他の裁判所に訴えを提起することができる場合を妨げません。
  4. 当方と受講者は、紛争が生じたときは、訴訟の前に、誠実に協議します。

第2項は「専属的」と書かず、日本の裁判所に提起できることを明記する定め。他の裁判所に提起できる場合を第3項で書き添え、後から「聞いていない」と言われる余地をなくします。国外の事業者の所在地の裁判所を加えるかどうかは、民事訴訟法3条の7第5項との関係を確かめて決めます。

もう一つ、条項が有効に成立することと、判決を現実の回収に結びつけられることは別の問題です。日本の裁判所の判決を外国で実現するには、その国で改めて手続が必要になるのが通常です(逆に、外国の判決を日本で執行するときは、日本の裁判所の執行判決が必要です。民事執行法22条6号・24条)。受講者から見ると、事業者の財産が国外にある場合、少額の返金請求で判決を取っても実現が難しいことがあります。事業者から見ると、受講料が事前決済なら、代金回収のために訴える場面は想定しにくいといえます。したがって、国外の事業者の規約で実質的に意味を持つのは、訴訟になったときの戦い方より、訴訟になる前の設計です。具体的には、受講料を事前に決済してもらうこと、キャンセル料の算定の根拠を規約に書くこと、協議条項を置くこと、決済代行事業者の異議申立て(チャージバック)の手続で規約とキャンセルポリシー、承諾通知の記録を提出できる状態にしておくこと、の四つです。

個人情報保護法:国外から取り扱う層、クラウドを使う層、委託先が外国にある層

個人情報保護法171条は、国内にある者に対する物品または役務の提供に関連して、国内にある者を本人とする個人情報を外国において取り扱う場合にも、この法律を適用すると定めています。国外に住む事業者が日本の受講者から申込みの情報を集め、国外で保管する場合も、日本の個人情報保護法の義務の対象です。海外に住む個人事業者のプライバシーポリシーでは、取扱いを次の三つの層に分けて整理すると見落としが減ります。

国外の事業者の個人情報の取扱い:三つの層

  1. 1 事業者自身が国外で取り扱う層受講者から自分で取得し、国外で保管する。第三者への提供ではないが、171条、安全管理措置(23条)、保有個人データに関する事項の公表(32条1項)の対象
  2. 2 外部のクラウドを使う層ビデオ通話、予約、決済、メールなどのサービス。利用目的の達成に必要な範囲の委託として、委託先の監督が必要(25条、27条5項1号)
  3. 3 その委託先が外国にある層委託でも、委託先が外国にあれば、外国にある第三者への提供の規律がかかる(28条)

三つの層は別の論点です。2と3を混同して「委託だから同意は要らない」と整理すると、3が抜け落ちます。

第1の層では、事業者自身が外国で個人データを取り扱うため、個人情報保護委員会のガイドラインに沿ってその国の個人情報の保護に関する制度を把握したうえで安全管理措置を講じ(法23条)、講じた措置を本人の知り得る状態に置くことが求められます(法32条1項4号、施行令10条1号)。外国で取り扱う場合は、国の名称も示して公表します。あわせて、事業者の氏名・住所のような公表事項は、本人の求めに応じて遅滞なく回答する場合を含めて「知り得る状態」に置けばよいと法32条1項が定めているため、特商法表記と同様に、請求開示の方式をプライバシーポリシーでもそろえられます。

第3の層が、実務でいちばん見落とされます。法28条1項は、外国にある第三者に個人データを提供するには、原則として、あらかじめ外国にある第三者への提供を認める旨の本人の同意が必要であると定めています。例外は二つあり、提供先が個人情報保護委員会規則で定める基準に適合する体制を整備している場合と、個人の権利利益を保護する上で我が国と同等の水準にあると認められる制度を有する外国として委員会が定める国にある場合です。同等水準国に当たるかどうかは、委員会の公表で確認する必要があります。無償のクラウドサービスを使う個人事業では、提供先の体制を継続的に確認し記録することが現実的ではないことが多く、同意を得る方式を基本に整理するのが現実的です。

同意を得るときは、あらかじめ、外国の名称、その外国における個人情報の保護に関する制度に関する情報、提供先が講ずる個人情報の保護のための措置に関する情報の三つを本人に提供しなければなりません(法28条2項、施行規則17条2項)。プライバシーポリシーにこの三点を、サービスごとの国名とともに書き、予約や申込みのフォームでポリシーへの同意を取る流れにすれば、規約への同意と外国提供への同意(取得する情報に要配慮個人情報が含まれる講座では、その取得への同意も)を一か所で整えられます。講座の運営に使うビデオ通話や予約などの外国のサービスの記載の仕方は録画・コミュニティ・個人情報で、個人情報を扱う外部サービスを委託先として監督する考え方は講師・運営スタッフの業務委託で説明しています。

時差・言語・成年年齢・通貨:講座の運用に落とす四つの定め

時差は、キャンセル料の根拠になります。個別セッションを提供する講座では、「24時間前まで無料、以降は全額」といったキャンセルの定めがよく置かれます。国外の事業者の場合、24時間前の起算点が日本時間か現地時間かで結論が変わるので、規約に表示する日時はすべて日本標準時である旨を書きます。そのうえで、全額のキャンセル料は消費者契約法9条1項1号(解除に伴う損害賠償の額の予定や違約金が、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分は無効)を意識して設計します。海外に住む事業者の規約では、1対1で時間帯を専有していること、時差のために直前に空いた枠を他の人に提供することが事実上困難であること、セッションごとの事前準備がキャンセル時点で終わっていること、その時間帯に待機する必要があることの四つを、キャンセル料の算定根拠の概要として条文に書き込む方法があります。消費者から求められたときに算定の根拠の概要を説明するよう努める義務(同条2項)にも、この記載がそのまま使えます。時差だけを理由にするのではなく、他の要素と合わせて説明するのがこの設計の要点です。

言語は、正本を決めます。日本語と英語の二言語で規約を出すときは、日本語版を正本とし、他の言語は参考訳とする旨を書きます。ただ、これだけでは足りません。日本語版を改訂したのに英語版を古いまま放置すると、英語版を信じた利用者との関係で事業者に不利に解釈されるおそれがあります。日本語版を改訂したら英語版も同時に改める運用が必要です。

成年かどうかは、原則として本国法で判断されます。人の行為能力は本国法で定めるとされているため(通則法4条1項。同条2項に取引保護の例外があります)、海外に住む外国籍の人が受講者になるときは、日本の法令で成年(18歳以上)であることに加えて、本国の法令でも成年であることを受講資格にする書き方があります。成年でない人の申込みは契約が成立しないものとして、受け取った金額を全額返金する、と定めておきます。未成年の扱いの一般論は規約の条項Q&Aに譲ります。

通貨と決済手段は、申込みの成立と結びつきます。決済手段が海外の決済サービスだけで、銀行振込がない場合は、振込手数料の記載を削り、決済の手続の中で規約への同意が取れているかを確認します。民法548条の2第1項は、定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき、または、その旨をあらかじめ相手方に表示していたときに、個別の条項への合意があったものとみなすと定めています。決済ボタンの手前に、規約へのリンクと同意のチェック欄を置く設計が有力です。成立の時点と書面の渡し方は成立と書面の渡し方で説明しています。

販売者が別に立つ仕組みで教材を売るとき:自社の規約との切り分け

国外の講師には、教材を自社サイトではなく、販売プラットフォームを通じて売る人もいます。プラットフォームによっては、購入者との関係でプラットフォーム自身が販売者(いわゆる Merchant of Record、決済と販売の当事者)になる仕組みがあります。この仕組みで、日本の受講者に単品の教材(ダウンロード型)を売る場合は、次のように整理できます。

教材の売主が誰か

自社が売主の場合プラットフォームが売主の場合

代金・返金

自社が売主の場合自社の表記・規約で定める

プラットフォームが売主の場合プラットフォームの手続による。自社の表記には、そのプラットフォームで売る単品教材の価格を載せない

価格などの表示

自社が売主の場合自社のページで表示する

プラットフォームが売主の場合価格等の表示はプラットフォームの販売ページで行われる

自社の規約に書くこと

自社が売主の場合売買・提供の条件のすべて

プラットフォームが売主の場合教材の利用許諾の範囲(購入者本人と、本人が直接指導する学習者のための利用に限る、など)と、欠陥があった場合の対応

書き分けの方法

自社が売主の場合不要

プラットフォームが売主の場合表記に「どの商品は自社が販売し、どの商品はプラットフォームが販売するか」を明示する

この整理は、一般的な設計の考え方と、特定商取引法11条が「販売業者又は役務提供事業者」を表示義務者としていることを組み合わせた一般的な整理です。プラットフォームごとの規約は異なるため、利用する仕組みの規約で売主の位置づけを確認することが前提です。

書き分けが曖昧だと、二つの問題が起きます。一つは、返金の窓口が受講者に分からなくなることです。自社の表記に「返金はできません」とあるのに、プラットフォーム側の手続では返金できる、あるいはその逆、ということが起こり得ます。もう一つは、個人データの流れです。購入者の情報はプラットフォームが取得するため、自社のプライバシーポリシーには、自社が取得する情報とプラットフォームが取得する情報を分けて書く必要があります。教材の権利と利用の禁止の書き方は教材の保護で説明しています。

書類づくりでの扱い:最初に確かめる問い

国外から日本向けに売る講座の書類づくりでは、最初に事業者の所在地を確認するのではなく、受講者と取引の形を確認します。ヒヤリングでは、次の問いを置くとよいでしょう。

ヒヤリングの問いと理由 国外から日本向けに売る講座で、書類を作る前に確かめること

  1. 受講者の居住地はどこですか。日本に住む人だけですか、海外に住む人も受け入れますか。

    日本の受講者だけなら日本法準拠・日本の裁判所を前提に書けます。海外の受講者も受け入れるなら、その国の消費者保護の法律が及ぶ場合があり、受け入れる国を決めた段階で確認が必要になるためです。

  2. 事業者は個人ですか、法人ですか。日本国内に事務所や代理人はありますか。

    施行規則23条3号の追加表示の要否と、請求開示の方式を使えるかどうかを決めるためです。

  3. 電話番号は、日本の番号を用意できますか。海外の番号しかない場合、受付時間と折返しの体制は組めますか。

    電話番号の実効性(Q17・Q20)をどの形で満たすかを決めるためです。

  4. 決済は円建てですか、外貨建てですか。換算と送金の手数料は誰が負担しますか。

    価格の表示と、代金以外の負担の表示を決めるためです。

  5. 個別セッションは予約制ですか。キャンセルの期限は日本時間で書けますか。

    キャンセル料の算定根拠と、日時の起算点を決めるためです。

  6. ビデオ通話、予約、決済、メールにどのサービスを使い、各社はどこの国の事業者ですか。

    プライバシーポリシーに書く国名と、外国にある第三者への提供の同意の範囲を決めるためです。

  7. 教材を、他の事業者が売主となる仕組みで売りますか。

    表記と規約で、売主の書き分けが要るかを決めるためです。

起きがちなこと

よくあるご質問

海外に住んでいて、日本に事務所もない場合でも、特商法表記は必要ですか。

必要です。消費者庁の海外からのインターネット通信販売Q&Aは、海外の事業者が日本国内の消費者向けにウェブサイトで販売し、国内に住む人が購入する場合は、特定商取引法の適用除外に当たらないと説明しています。国内に事務所等がない場合、施行規則23条3号の追加表示(国内の事務所等の所在場所と電話番号)は生じませんが、23条1号の氏名・住所・電話番号は表示する必要があります。住所や電話番号は、請求があれば遅滞なく開示する方式でも構いません。

住所や氏名を公開したくありません。載せなくてもよいですか。

請求があったときに遅滞なく提供する旨を表記に明記し、実際に提供できる体制を整えていれば、氏名・住所・電話番号の常時掲載を省略できます(法11条ただし書、施行規則25条)。ただし、屋号や通称、サイト名だけの表示は氏名の表示とは認められません。個人事業者は戸籍上の氏名を請求に応じて開示できる状態にしておきます。

日本の受講者向けでも、規約の準拠法を事業者の国の法律にできますか。

選ぶことはできますが、おすすめしにくい形です。消費者が日本の特定の強行規定を適用すべき旨を事業者に表示したときは、その規定が重ねて適用されるため(通則法11条1項)、外国法と日本の強行規定の二重構造になります。日本の受講者との契約では、日本法準拠とするほうが読みやすい規約になります。

「当社所在地の裁判所だけを専属的合意管轄とする」という条項は、日本の受講者に対して有効ですか。

そのとおりには働きません。消費者契約に関する将来の紛争を対象とする管轄合意は、民事訴訟法3条の7第5項が効力を認める場合に限られます。国外にある事業者の所在地の裁判所だけを指定する合意は、消費者がその合意に基づいて提訴した場合などを除き、効力を有しません。消費者の住所地の国の裁判所だけを指定する合意は、付加的な合意とみなされます。条項の効果を正確に書くため、日本の裁判所に提起できることを明記した付加的合意管轄の形にしておくのが無難です。

受講者の個人情報を、ビデオ通話や決済の外国のサービスに預けるとき、同意は必要ですか。

委託であっても、委託先が外国にある場合は、個人情報保護法28条の外国にある第三者への提供の規律がかかります。同意を得る方式を取るなら、あらかじめ外国の名称、その国の個人情報保護の制度に関する情報、提供先が講ずる措置に関する情報の三つを本人に提供する必要があります(同条2項、施行規則17条2項)。プライバシーポリシーに国名とあわせて書き、申込みの手続で同意を取る流れが一般的です。

あわせて読みたいページ

本ページは一般的な情報提供です。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。裁判例は、判決日と要旨とともに紹介しています。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 個人情報保護委員会 / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)

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