講座のローンチ・販売導線の構築代行の業務委託契約の書き方

構築は完成させる仕事、運用は続ける仕事です。報酬、責任、アカウント、成果の条件を、二つに書き分けます。

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ローンチのない月も月額は払うのか。価格の表示を間違えたら誰の責任か。契約が終わるとき、アカウントと顧客のリストは誰のものか。構築代行の契約が争いになるのは、たいていこの三つです。

このページの要点

  • 構築は請負に近く、運用は準委任に近い。基本契約・運用の明細・個別発注の三層に分け、月額はローンチ1件を基準に、超える分は個別の依頼にする。
  • 価格・特商法の表示・効果の表現と法令適合は販売する講座主催者の責任。受注者の責任は、承認された内容どおりに設定すること。
  • アカウントは発注者名義、受注者には最小限の権限。終了時は設定の一覧を引き渡し、個人データや管理権限は未払いでも留保しない設計にする。
  • 成果連動の報酬、完成保証、無償延長は、対象・確認の基準・失権の手続を書く。顧客データを生成AIに入力してよいかも契約で決める。

結論:構築は「完成させる仕事」、運用は「続ける仕事」。契約も二つに書き分ける

講座の販売では、クラウド型の販売・配信ツールに、申込みフォーム、メールやメッセージアプリの配信、決済ページ、会員サイトをつなげて、販売の導線を作ります。この導線の構築と日々の運用を、外部の事業者や個人に任せる講座主催者が増えています。任されるほうも、特定のツールの設定を専門にして、講座のローンチ(一定の期間に集中して告知し、販売する販促の企画)を何本も支える仕事をしています。ただ、このタイプの外注には、契約の落とし穴が集中します。構築は一度作れば終わりですが、運用は毎月続きます。報酬が完成に対して払われるのか、作業の期間に対して払われるのか。ローンチを行わない月も払うのか。アカウントは誰の名義か。配信や決済を間違えたとき、誰が受講者に説明し、誰が返金を判断するのか。成約が出なければ無償で延長するのか。

構築と運用の外注契約では、争いになる箇所は共通しています。このページは、その共通の箇所を、発注する講座主催者の側からも、受注する構築者の側からも読めるように説明します。講師や運営スタッフとの契約の全体像は講師・運営スタッフの業務委託で説明しているため、ここでは「ローンチを単位にした構築と運用の契約」に絞ります。

  • 構築は請負に近く、運用は準委任に近い。報酬・検収・解約の考え方が違うので、一つの契約の中で書き分ける。
  • 月額の運用は、ローンチ1件を基準にした業務量で定め、超える分は個別の依頼にする。
  • 表示の内容(価格、特商法の表示、効果の表現)と、法令への適合は、販売する講座主催者の責任。設定が指示どおりに行われているかは、受注者の責任。
  • ツールのアカウントは講座主催者の名義。受注者には最小限の権限だけを渡し、契約が終わるときは設定の一覧を引き渡す。
  • 成果連動の報酬、完成保証、無償延長は、条件と失権の手続を書かないと、争いの種になる。
  • 顧客のリストは個人データ。生成AIに入力してよいかを、契約で決めておく。

構築と運用の書き分け:民法の違いと、三層の契約構成

民法では、請負と準委任(法律行為でない事務の委託。民法656条)で、約束の中身が違います。請負は、当事者の一方が仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約する契約です(632条)。準委任は、事務の処理を委託する契約で、委任の規定が準用されます(643条、656条)。ツールの設定は、「申込みフォームと決済ページ一式を、決めた仕様で完成させる」という形にすれば請負に近く、「毎月のメール配信の予約、問合せへの返信、リストの管理を行う」という形にすれば準委任に近くなります。

構築と運用の違い

構築(請負に近い)運用(準委任に近い)

約束の中身

構築(請負に近い)決めた仕様の成果物(ページ、フォーム、配信シナリオなど)を完成させて引き渡す

運用(準委任に近い)決めた範囲の事務を、善良な管理者の注意をもって行う。結果の保証はしない

報酬の考え方

構築(請負に近い)成果物の完成・引渡しに対して払う。完成前に終わったときは、可分な部分が発注者の利益になるなら、その割合で請求できる(民法634条)

運用(準委任に近い)事務を履行した後に払うのが原則(648条2項)。期間で定めた報酬は期間の経過後。途中で終わったときは、履行の割合に応じて請求できる(648条3項)。成果に対して払う約束で、その成果が引渡しを要するものなら、成果の引渡しと同時(648条の2)

検収

構築(請負に近い)納品後の検査期間を定め、期間内に通知がなければ合格とみなす形がよく使われる

運用(準委任に近い)検収ではなく、報告と確認で進める。月次の報告の内容と頻度を決める

契約の途中終了

構築(請負に近い)注文者は、完成前ならいつでも損害を賠償して解除できる(641条)

運用(準委任に近い)各当事者がいつでも解除できるのが出発点で、相手に不利な時期の解除は損害賠償を伴う(651条)。実務では予告期間を定める

不具合への対応

構築(請負に近い)引き渡した成果物が契約の内容に適合しないときの修正の義務、通知の期間

運用(準委任に近い)月額の範囲内で行う軽微な修正と、個別の依頼にする大きな変更を分ける

現実には、一つの業務が両方の要素を含みます。契約書では、各業務を「構築」と「運用」のどちらの扱いにするかを、別紙の業務の一覧に書いて明示します。

この書き分けは、三層で整理できます。まず、全体に共通するルール(報酬の支払い、秘密保持、権利、個人データ、解約など)を定める基本契約を置きます。次に、毎月続く業務の内容と報酬を定める運用の明細(別紙)を置きます。そして、基本契約や運用の明細に含まれない業務、たとえば新しい販売ページの構築や追加の講座動画の設定を、依頼のたびに内容と報酬、納期を示して成立させる個別発注の書式を置きます。基本契約が個別契約に適用されることを定め、個別契約で特定の条項を変更するときは、その旨を明示した場合に限り優先する、としておくと、個別の依頼のたびに契約の全体を読み直さずに済みます。

三層の契約構成と、依頼が入ったときの流れ

  1. 基本契約報酬の支払、権利、秘密保持、個人データ、解約など全体のルール
  2. 運用の明細毎月行う業務の範囲と、月額の報酬。ローンチ1件の規模を基準にする
  3. 個別発注範囲外の依頼を、内容・報酬・納期を示して受け、承諾した時に成立
  4. 成果物の確認納品後に確認の期間を置き、通知がなければ合格とみなす

個別発注では、受注者が依頼を承諾するかどうかを自由に決められ、条件の協議が整うまで着手する義務を負わないことを、基本契約に書いておきます。

月額の運用で最も揉めるのは、「月額の中でどこまでやるのか」です。運用の明細では、ローンチ1件を基準にして、月額の範囲を決めます。標準的なローンチを、告知用のバナー、ステップ配信の通数、メッセージアプリの配信、セミナーの回数、決済ページと会員サイトの設定の数で定義し、これを「標準ローンチ」とします。月額報酬は、1か月に標準ローンチ1件に相当する範囲の業務を行う前提で、平均的な業務量により定めるものとし、ローンチを行わない月でも減額しないと書きます。1か月に複数のローンチが重なるときは、基準を超える部分を月額の範囲外にして、規模や業務量を考慮して協議のうえ報酬を決める個別の依頼にします。さらに、業務量が継続して基準を上回るようになったときは、受注者が報酬または範囲の見直しを求められ、発注者は誠実に協議に応じる、という規定を置きます。

条文例月額業務の範囲と基準件数(金額を除いた骨子)

  1. 月額業務は、別紙に定める業務とし、民法第656条に定める準委任として行います。別紙に定めのない業務は、月額業務に含まれません。
  2. 月額報酬は、1暦月につき標準ローンチ1件に相当する範囲の月額業務を行うことを前提として、平均的な業務量により定めた額であり、ローンチを実施しない暦月においても減額されません。
  3. 同一の暦月に実施するローンチのうち基準件数を超える部分は、月額業務に含まれず、個別業務として、規模、内容及び業務量を考慮して協議のうえ報酬を定めます。
  4. 月額業務の業務量が前項の前提とした業務量を継続的に上回るに至ったときは、受注者は、報酬の額又は月額業務の範囲の見直しを求めることができ、発注者は、誠実に協議に応じます。

「ローンチを行わない月でも減額しない」と「基準を超える分は別料金」はセットで書きます。片方だけを置くと、閑散期か繁忙期のどちらかで不公平が生じます。

表示の責任は発注者、設定の正確さは受注者:責任分担の線引き

構築代行の契約で、いちばん大きな事故につながるのは、販売ページや配信メールの表示の問題です。特定商取引法の通信販売の表示(法11条)、申込み直前の確認画面の表示(法12条の6)、誇大広告等の禁止(法12条)は、いずれも販売業者・役務提供事業者である講座主催者に課される義務です。景品表示法5条も、「自己の供給する商品又は役務の取引について」の表示を規制しており、表示をする主体は講座を販売する事業者です。そのため、契約には、価格や特商法の表示、効果や実績の表現の内容を決めるのは発注者であり、それらが法令に適合することについて責任を負うのも発注者である、と書きます。受注者は、表示の内容が法令に適合するかどうかを判断する義務を負わない、とします。表示事項と確認画面の具体的な書き方は特商法表記・最終確認画面・入金後の通知で説明しています。

ただし、受注者が責任を負わないのは、発注者が決めた内容どおりに設定したときです。ツールの設定は受注者が行うので、設定が指示と違えば受注者の責任になります。そこで、配信と決済(金額その他の条件を含む)の設定を本番の環境に反映する前に、テスト送信などで発注者の承認を得る手続を契約に組み込みます。承認を得た内容、または発注者が指定した内容のとおりに設定したときは、その内容について受注者は責任を負わない。承認が得られないまま予定の日時を迎えたときは、受注者は反映を保留でき、遅延の責任を負わない。この二つを書くことで、「誰が確認したのか」を後から争う余地を減らせます。

書き方の例(一般的な例) 責任の分担と承認の効力

表示の責任

出発点(よくある書き方)受注者は、法令に適合したLP・メール・決済ページを構築する
整えた書き方価格・特商法の表示・効果の表現の内容と、その法令適合は発注者の責任。受注者は、表示の内容が関係法令に適合するかを判断する義務を負わない

表示義務の主体は販売業者である発注者。受注者に法令適合の判断まで負わせると、責任の範囲が際限なく広がる

みなし承認

出発点発注者から返答がなければ、承認があったものとみなして公開・配信する
整えた書き方返答がない場合のみなし承認は、成果物の検収、修正回数の計算、進行の管理に限って効力を持つ。公開や予約投稿の根拠にはならない。価格、実績、効果、顧客の声を含む投稿は、投稿ごとに明示の承認を要する

沈黙を根拠に価格や効果の表現を公開すると、表示の責任が曖昧になる。公開の承認は積極的な意思表示に限る

配信や決済の誤りが判明したときの対応も、先に決めておきます。顧客への説明、返金、その他の対応の要否と内容は発注者が決定し、発注者の名義で行います。受注者は、発注者の指示に従って連絡の事務を行い、設定の修正を無償で行います(誤りが受注者の責めに帰すべき事由によるとき)。顧客からの問合せへの返信は、月額業務として受注者が発注者の名義で行えるようにする場合でも、購入の勧誘までは行わない、と区切ります。受注者が個別の相談で購入を勧めると、その通話が電話勧誘販売に当たり得るためです(Zoom個別相談・無料セミナーと電話勧誘販売)。返金や解約、苦情への対応の基準は、発注者があらかじめ方針として示し、方針にない事項は受注者が発注者に報告して判断を仰ぎます。返金の精算の組み立ては返金規定・中途解約の精算で説明しています。

アカウントの名義・権限・終了時の引継ぎ:留保できるものと、できないもの

ツールのアカウントや連携する外部のサービス(メッセージアプリの公式アカウント、決済サービスなど)は、講座主催者の名義で契約するのが原則です。受注者の名義で契約すると、契約が終わった後にアカウントごと持っていかれる、顧客のリストが受注者の手元にしかない、という事態が生じます。契約には次の四点を書きます。

  • 契約と費用は発注者の名義と負担で行う。受注者には、業務に必要な最小限の作業用の権限だけを付与する。
  • 受注者は、有料オプションの契約、料金プランの切替え、入金口座・管理者・ドメインの設定変更、返金や決済取消しの操作を、発注者の事前の承諾なく行わない。
  • データのバックアップは発注者が自ら行う。サービスの障害などによるデータの消失について、受注者は責任を負わない。
  • 契約が終了したときは、設定した主な構成(ページ、フォーム、配信、決済など)の一覧を作成して引き渡す。付与した権限は、一覧の引渡しから一定期間後に発注者が削除する。

契約終了時の引継ぎで揉めるのは、報酬が未払いのときに何を止めてよいかです。契約の組み方は二つに分かれます。受注者の側に立つ契約では、設定一覧の作成と引渡しは月額業務の範囲として行い、発注者が報酬の支払を遅延しているときは、支払われるまで引渡しを留保できるとする方法があります。一方、発注者の側に立つ契約では、未払いがあっても留保できない事項を明記し、留保できる対象を絞る方法があります。

報酬が未払いのときの引継ぎの扱い(契約の組み方の例)
区分内容未払いのとき
留保できる受注者が新たに作成して未納の成果物の提出。報酬の完済を条件にしている利用の許諾完済まで留保できる(催告と猶予を置くのが安全)
留保できない発注者が提供した資料・素材の返還または消去未払いでも留保しない
留保できない発注者または発注者の顧客の個人データの返還または消去未払いでも留保しない
留保できない発注者名義のアカウントとその管理権限の返還、受注者のアクセス権限の削除未払いでも留保しない
留保できないID、パスワード、その他の認証情報の返還または削除未払いでも留保しない

個人データやアカウントの管理権限を人質にする設計は、個人情報の安全管理(個人情報保護法23条)の観点からも避けます。報酬の確保は、前払いや支払の遅延時の業務の停止など、別の手段で担保します。

引継ぎの形式も書いておきます。引き継ぐ資料は、発注者が継続して利用でき、編集できる一般的な形式で渡し、特定のサービス上でしか見られない形式に限定しない、という書き方にします。また、設定一覧を超える引継ぎ(操作手順書の作成、後任者への説明)は、契約が終わった後でも、時間単位などの単価で別途の業務として行うことにします。一覧の作成までが月額の範囲、そこから先は有償、と線を引いておくためです。

成果物の権利も、同じ観点で整理します。構築した成果物の著作権を発注者に移転する場合は、翻案権(著作権法27条)と二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(28条)を移転の対象として特掲しないと、これらの権利は譲渡した側に留保されたものと推定されます(61条2項)。他方、受注者が以前から持っているテンプレートや手順書、汎用の資産は受注者に留保し、発注者には自己の事業のために利用できる範囲で許諾する形にすると、受注者が他の案件で同じ資産を使えます。報酬の完済を条件に利用を許諾する形にするか、納品時に権利を移転するかは、発注者と受注者のどちらの立場を重くみるかで選びます。権利の取扱いの一般論は教材の保護で説明しています。

成果連動の報酬・完成保証・無償延長:条件と手続を書く

構築代行では、着手金とレベニューシェア(成果報酬)、期間内の完成保証、初めての成約が出るまでの無償の延長といった、成果に結びついた条件が付くことがあります。成果連動の条件は、書き方によって、発注者に有利にも受注者に有利にもなります。どちらの立場でも、条件が不明確な部分が争いになります。

着手金とレベニューシェア。販売の導線の設計と構築を着手金で受け、構築した導線を経由した売上に対して一定の割合で成果報酬を受ける契約では、次の点を書きます。対象になる売上は、受注者が設計・構築した導線を経由した売上に限ること。売上の額は、決済の完了額から決済手数料を除いた純売上とすること。売上の確認は、決済の管理画面のデータを基準に、双方が確認すること。返金やチャージバックなどで売上が取り消されたときは、次回以降の成果報酬の計算で調整すること。契約が終わった後に発生した売上も、一定の期間(たとえば6か月)は成果報酬の対象に含めるか。連続して売上が発生しない期間が続いたときは、原因を分析し、業務や報酬の体系を協議すること。広告費が一定額を超えて増えたときは、料率や算出方法の協議に入ること。着手金は初期設計・構築の対価であるとして返金しない扱いとするなら、構築が着手後に未完のまま終わるとき、完成前の途中終了における報酬の考え方(民法634条)との関係を決めておきます。

期間内の完成保証。「契約から一定の日数以内に構築を完成させる」といった保証をする場合、まず「完成」とは何かを定めます。完成の要件を、成果物の項目ごとに一対一で対応する形で列挙し、全部が提出され、発注者が閲覧・利用できる状態になったときに完成する、とする方法があります。次に、完成の報告があったとき、発注者が一定の営業日以内に確認し、不足があれば通知する、通知がなければ完成とみなす、という手続を置きます。さらに、期間の起算日を、契約締結日ではなく、発注者が必要な資料とアカウントの権限をすべて提供し、受注者がその受領を確認した日の翌日にします。発注者の資料の提供が遅れても、期間だけが進んでしまう事態を避けられます。

初成約までの無償延長。期間内に最初の成約が出なければ、無償で支援を延長する、という保証には、延長の条件と、条件を満たさなかったときの失権の手続が必要です。「発注者が条件を満たさなければ直ちに権利を失う」とする形は、軽微な遅れで直ちに保証が消えてしまうので、二段構えにする方法があります。受注者が、満たされなかった条件を具体的に特定して履行を求める通知をし、発注者が一定の日数内に是正しなかったときに限り、そのサービス期間について条件が満たされなかったものとして扱う。そのように扱われる期間が二つ以上になったときに、無償の延長が生じなくなる。あわせて、発注者が明示的な承認を行わないために公開が遅れた場合は、公開の本数の不足を「発注者が条件を満たさなかった」ものとして扱い、承認が行われないまま無償の延長だけが発生する経路を塞ぎます。無償の延長の期間と、有償の自動更新が同じ期間に重ならない規定も置きます。

書き方の例(一般的な例) 無償延長の条件と失権

失権の手続

出発点発注者が条件を満たさなかったときは、直ちに無償の延長を受ける権利を失う
整えた書き方受注者が不充足を具体的に特定して履行を求める通知を行い、発注者が一定の日数内に是正しなかった場合に限り、当該期間について条件が満たされなかったものとして扱う

軽微な遅れで保証が消えないようにし、通知の記録が残る手続にする

失権の回数

出発点条件が満たされなかった期間が「二を超える」(三以上)ときに、無償の延長が生じない
整えた書き方条件が満たされなかった期間が「一を超える」(二以上)ときに、無償の延長が生じない

一回の軽微な遅れでは保証を失わないが、遅れが重なったときは対象外とする、という趣旨を、数で一義的に読めるようにする

顧客データと生成AI:任せる範囲と、入れてはいけないもの

講座の販売では、申込者の氏名、メールアドレス、メッセージアプリのアカウント、購入履歴といった顧客のリストが、ツールの中に蓄積されます。これを受注者が扱うとき、発注者から見れば、個人データの取扱いの委託です。個人データの取扱いを利用目的の達成に必要な範囲で委託する場合、受託者は第三者提供の同意を要する「第三者」には当たりません(個人情報保護法27条5項1号)。ただし、委託する側には、委託先に対する必要かつ適切な監督の義務があります(25条)。契約には、次の事項を書きます。

個人データを任せるときに契約へ書くこと

  • 個人データは、業務の遂行に必要な範囲でのみ取り扱い、目的外の利用や第三者への提供をしない
  • 保存の場所を、受注者が業務に使う端末や、受注者だけがアクセスできる設定のクラウドストレージに限り、必要がなくなったら遅滞なく消去する
  • 漏えい、滅失、毀損、またはそのおそれがあることを知ったら、直ちに発注者に報告する(原則24時間以内の相互の通知とする例もある)
  • 個人情報保護委員会への報告と本人への通知は、発注者が行い、受注者は協力する(個人情報保護法26条は、委託を受けた者が規則に従って委託元に通知したときは、委託を受けた者自身の報告・本人通知を要しないとしている)
  • 契約が終了したら、返還または消去を行い、求めがあれば完了を報告する。法令上の保存や紛争対応の記録は、秘密として保存できる範囲を限る
  • 顧客の個人情報の取得のときの利用目的の通知・公表や、配信の同意の取得は、発注者の責任とする

生成AIの扱いは、近年の契約で最も追加される条項です。受注者がメール文面の手直しや設定の補助にAIサービスを使うことは珍しくありません。そこで、契約では、AIの利用そのものは認めつつ、入力してよい情報を限定します。顧客の個人情報は、サービスの名称と提供者の所在国を示して発注者の事前の承諾を得た場合を除き、入力しない。発注者の秘密情報は、入力された情報を提供者が機械学習に利用する設定のサービスに入力しない。ID、パスワード、APIの鍵、決済に関する情報などの認証情報は、AIには入力しない。この書き方で、AIを使うことを隠さずに済み、入力の線引きが明確になります。提供者が外国の事業者のときは、外国にある第三者への提供(個人情報保護法28条)の規律もかかります。

契約期間・更新・解約・支払期日:フリーランス法との関係

受注者が個人で従業員を使用していない場合、または法人で代表者以外に役員がなく従業員を使用していない場合は、特定受託事業者に当たり(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律2条1項。以下「フリーランス法」)、発注者には義務が生じます。業務委託をしたときに給付の内容、報酬の額、支払期日などを書面または電磁的方法で直ちに明示する義務(3条)は、従業員の有無にかかわらず課されます。発注者が従業員を使用している場合は、報酬の支払期日を給付を受領した日から60日以内にすること(4条1項)、1か月以上の業務委託で、報酬の減額や買いたたきなどをしないこと(5条、施行令1条。受領拒否と返品の禁止は、役務提供委託には及びません)、6か月以上の継続的な業務委託で、契約の解除や更新しないことを30日前までに予告すること(16条、13条1項、施行令3条)などが加わります。

この規制は、構築代行の契約の書き方に直接響きます。月額の運用を一定の期間ごとに自動更新する契約は、更新によって通算6か月以上続く見込みの契約は継続的業務委託に当たり得るため、更新しない場合の予告が必要になります。期間満了日の30日前までに更新しない旨の申出がなければ同一の条件で更新する、と書き、さらに更新の拒絶や解約の予告は30日前までに行う形にそろえます。報酬の支払期日は、給付を受領した日(役務の提供では、提供を受けた日)から60日以内で、できる限り短く定めます(4条1項)。公正取引委員会の「フリーランス法Q&A」(Q48)は、月単位の締切制度(毎月末日締め・翌月末日払い)を、受領から2か月以内として運用し、問題としないとしています。一方、月末締め・翌々月払いのように、月初の給付について60日を超える定めは避けます。あわせて、契約の中途の解約については、準委任の解除(民法651条)を出発点にしつつ、予告の期間と、期間中の業務と報酬の続け方、個別契約の解約の場合の報酬の精算(履行した割合に応じた報酬と、既に支出した費用の支払)を書いておくと、中途で終わるときの争いを減らせます。受注者側が妊娠、出産、育児、介護などで業務を続けることが難しくなったときの停止や解約の手続も、発注者の配慮義務(13条)と合わせて契約に書けます。

ヒヤリングの問いと理由 ローンチ・構築代行の契約を作る前に確かめること

  1. 任せる業務は、構築(作って引き渡す)ですか、運用(毎月続ける)ですか、両方ですか。

    請負に近い扱いと準委任に近い扱いを、業務ごとに振り分けるためです。

  2. ローンチは、月に何件ありますか。標準的なローンチは、どんな構成ですか。

    月額の範囲、基準件数、超過分の扱いを決めるためです。

  3. ツールとアカウントの名義は、誰になっていますか。受注者に付与する権限はどこまでですか。

    最小限の権限、禁止する操作、終了時の引渡しを決めるためです。

  4. 価格、特商法の表示、効果の表現は、誰が作りますか。受注者が提案する場合、誰が最終承認しますか。

    表示の責任の線引きと、公開前の承認の手続を決めるためです。

  5. 成果に連動する報酬、完成の保証、無償の延長はありますか。条件を満たしたかどうかを、何で確認しますか。

    対象の売上の定義、確認の基準、失権の手続を決めるためです。

  6. 顧客のリストを、受注者は見られますか。生成AIを使いますか。

    個人データの取扱いと、AIへの入力の線引きを決めるためです。

  7. 受注者は、従業員を使っていますか。契約は何か月続けますか。

    フリーランス法の適用と、更新・解約の予告の書き方を決めるためです。

起きがちなこと

よくあるご質問

販売導線の構築を外注するとき、契約書は請負と準委任のどちらにすべきですか。

業務の中身で分けるのが基本です。決めた仕様の成果物を完成させて引き渡す構築は請負に近く(民法632条)、毎月のメール配信の予約、問合せへの返信、リストの管理のように作業を続ける運用は準委任に近くなります(643条、656条)。一つの契約の中で、基本契約、運用の明細、個別発注の三層に分け、各業務をどちらの扱いにするかを別紙に書いておくと、報酬・検収・解約の考え方を混同せずに済みます。

ローンチを行わない月も、月額の報酬を払う必要がありますか。

契約でどう定めたかによります。月額報酬を、標準的なローンチ1件に相当する業務量を前提にした平均的な額として定め、ローンチを行わない月でも減額しないと書くことができます。その代わり、基準を超えるローンチは月額の範囲外として、別途協議のうえ報酬を定める、という組み合わせにしておくと、閑散期と繁忙期の双方で公平になります。

価格や特商法の表記に誤りがあった場合、構築した側も責任を負いますか。

特定商取引法や景品表示法の表示の義務は、講座を販売する事業者にあります。契約で、表示の内容とその法令適合は発注者の責任、受注者は表示が関係法令に適合するかを判断する義務を負わないと定めるのが通常です。ただし、設定が発注者の指示や承認と違っていれば、受注者の責任になります。本番に反映する前に発注者の承認を得る手続を、契約に組み込んでおきます。

契約が終わるとき、報酬が未払いなら、アカウントや顧客データの引渡しを止められますか。

止められるものと止められないものを分けて書きます。受注者が新たに作成した未納の成果物の提出や、完済を条件にした利用の許諾は留保できる設計にできます。一方、発注者の提供物、顧客の個人データ、発注者名義のアカウントの管理権限、認証情報の返還は、未払いを理由に留保しない設計にします。報酬の確保は前払いや、支払の遅延時の業務の停止で担保します。

受注者が生成AIを使うことは、契約で禁止すべきですか。

全面的に禁止するより、入力する情報を限定する書き方が一般的です。顧客の個人情報は、サービス名と提供者の所在国を示して発注者の承諾を得た場合を除いて入力しない、発注者の秘密情報は機械学習に利用される設定のサービスに入力しない、認証情報は入力しない、と書きます。AIの提供者が外国の事業者であれば、個人情報保護法28条の外国にある第三者への提供の規律も考えます。

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本ページは一般的な情報提供です。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。裁判例は、判決日と要旨とともに紹介しています。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 個人情報保護委員会 / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)

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